【あらすじ】梨堂竜二は元流れ板の料理人で、現在は岡山の港町で小さな料理屋を営んでいる。ある日、竜二の元に一通の手紙が舞い込む。かつての師・東京の名料亭「閑日楼」の花板・松木精蔵からの便りだった。過去に苦い思い出にひっかかりながらも、竜二は精蔵に会うことを決心し東京に旅立つ。だが、女主人のきぬから、病に臥せっていた精蔵は既に帰らぬ人となったと聞かされる。早々に辞そうとする竜二を、きぬの娘花絵が料理人としての腕を見せて欲しいと頼む。というのは、閑日楼の板前・明神渡の行く末を案じてのことだった。精造の死と閑日楼が関西の料理人・鉾田の手に渡ってしまったことで、自暴自棄になった渡が料理人としての道を踏み外そうとしていたからだった。竜二は花絵の熱意と精蔵の供養のために包丁を取る。そして、竜二の料理は皆を唸らせるほどの出来映えであり、強い印象を残しながら東京を去っていく。きぬはある決意を胸に秘め、岡山へと向かう。竜二を花板として迎え入れるためだ。竜二を連れ、金沢のまほろ温泉を訪れる。そこには精蔵が愛してやまなかった料理旅館「沢の家」があり、きぬは廃業したこの店を買い取ろうとしていた。そして、きぬは、竜二に1年間の契約を申し出る。迷いを吹っ切れないでいる竜二の肩を押したのは、妻の真澄だった。真澄の深い想いに打たれた竜二は、渡や森川など若い板前たちに自らの全てを注ぎ込もうと決心する。そんな折、きぬはホテル協会会長で大の食通として知られる浦部、そして鉾田と顔を会わせる。浦部は、鉾田と竜二に最高の料理人の名誉をかけて料理対決をしたらどうかと提案する。竜二が負けた場合は、きぬは鉾田の経営する料亭ほこ多の女将になるという条件、一方竜二が勝った場合は、ほこ多の暖簾を閑日楼に戻し、板場の扱いを戻させることを同意させる。果たして、竜二はかつての師精蔵への恩返しのため、そしてきぬを窮地から救うため。そして、それぞれの若き板前たちは、それぞれの思いに向けて立ち上がる。ここに七人は固い絆で結ばれた。そして、いよいよ料理対決の火蓋が切って落とされた!
【解説】流れ板とは、己の料理の腕前に意地と誇りをかけて、日本全国を流れ歩く一匹狼の渡り職人。日本各地の食材とその旬を知り尽くした男が、熱い心を一本の包丁に託し、己の全てを賭けて、関西料理随一の板前との料理勝負に挑む。東京築地にある調理師紹介所「稲宗」は、各地の有名料亭に数多くの料理人を送り込む名門。その表看板である老舗料亭「閑日楼」が関西の料理人。鉾田に買収される。この出来事により閑日楼を取り巻く人たち、そして元流れ板で現在は岡山に小さい店を構える竜二の人生が大きく動き出す。一度は離ればなれになった板前たちが、稲宗の命運をかけ、新天地・金沢に再集結する。迎え撃つは宿敵・鉾田。ある者は、亡き親方の弔いのため、ある者は料理人としての再起をかけ、またある者は男の意気に感じ入り、捨て身の一本勝負を挑む。七人の目標はただ一つ、閑日楼を取り戻すことのみ。



