【あらすじ】大正の中頃、若松の石炭仲仕の小頭である玉井組の玉井金五郎は、仲仕の親分衆の旅行会に同行するも、そこで共同組の友田喜造の兄弟分にあたる栗田の乾分たちに斬られ、深手を負う。というのも、ゴンゾ衆の生活向上を願う金五郎は、小頭組合を結成しようと動き、それが友田の逆鱗に触れたのだった。そんな金五郎を救ったの、浅草の女刺青師お京だった。栗田一家に草鞋を脱いでいたお京は、瀕死の金五郎を旅館に匿い、必死の看病を続けた。何故なら金五郎に一目惚れしてしまったからだ。そして、金五郎の体に、一世一代の刺青〝昇り龍〟を彫り込む。回復した金五郎は、若松へと戻る。若松では妻のマンが玉井組を率いて頑張っていたが、帰る早々、パナマ丸の荷役を巡り、共同組と激しく斗わねばならなくなっていた。友田は、金五郎に喧嘩状を叩きつけ、単身果たし合いの場へと赴く。その後を追うマン。金五郎を慕って若松へやって来たお京は、マンの存在を知り、ショックを受けるが、二人の命を救うために、島村ギンに金五郎と友田の仲裁を願い出る。果たして、金五郎と友田の手打ち式となるが、その席上で、金五郎が小頭組合の問題を蒸し返したため、険悪な状況となるが、同席した代議士の吉田磯吉が組合問題を了承し、友田を説得するのだった。そっと若松を去るお京。それから数年後、若松では炭積機の新たな導入によって、失業ゴンゾたちが日増しに増えることから、金五郎は、ゴンゾたちの転業資金の援助を荷主組合に交渉したが、ここでもまたもや友田とぶつかることになる。吉田磯吉の跡を狙う友田は、金五郎に圧力をかける。金五郎にすっかり惚れ込んでいたギンは、小倉の元博徒である島崎勇次の力を借りて、市民大会を開くよう勧める。盛況な市民大会は、友田と栗田一味によって襲われる。島崎は栗田を叩き斬るものの、ギンが兇刃に倒れてしまうのだった。友田の圧力は益々激しく、ゴンゾたちも次々と殺されていった。遂に堪忍袋の緒が切れた金五郎は、単身友田の事務所へと殴り込む。金五郎の白刃が友田に迫ったその時、割って入ったのが、吉田磯吉だった。すべての金五郎の申し出をのみ、力になることを約束するのであった。斗いは過ぎたが、新たな悲しみが訪れる。胸を患い余命幾ばくもないお京が、最後に一目金五郎にと会いにやってくる。金五郎の胸の中で慟哭するお京。そして、二度と目を開けることなく、静かに息を引き取るのであった。
【解説】命のどたん場くるまでは、見せちゃいけない任侠紋。男の腕には昇り龍、女の腕には蝶々牡丹。火野葦平の名作『花と龍』をもとに、玉井金五郎と女刺青師蝶々牡丹のお京の波乱に富んだ交流を描き上げる。大正の中期から昭和初期にかけて、二つの組の激突する風雲の洞海湾。ふとしたきっかけで、玉井金五郎の命を助けたお京が、その背に一世一代の刺青〝昇り龍〟を彫り込んだところから物語が始まる。ラストでは、玉井金五郎と元博徒親分の島崎勇次が怒りの炎となって爆発する本格的任侠大作。



