ダルデンヌ兄弟のすべての作品は、世界によって生を否定された人々がそれでもなお自らの生を肯定せんとする闘争の純粋な記録だといえるでしょう。人間社会の薄暗い片隅に追いやられ、およそあらゆる制度に見放されたとしても決して失われることのない生の躍動とその息遣いに寄り添うようなダルデンヌ兄弟独特のキャメラワークは、フィルムからデジタルへ移行した現在もその手捌きを衰えさせるどころか、その的確な強度においてますます進化しているように感じられ、それは本作においても例外ではありません。自らの信念を追求するために、その信念の拠り所から裏切られてもなお信じることを辞めず、家族、学校、少年院といった社会制度に対して次々と反抗の刃を突き付けてゆく少年。そんな彼に憐れみと愛情を示してくれる少女にすら抵抗を示してしまうシーンにおける、二人のまなざしのすれ違いと一瞬の身振りの悲しさは忘れようがありません。闘争と逃走の果てに、遂には自身の身体すら思い通りにならなくなった少年が、残された最後の力をもって打ち鳴らすあの悲痛極まりない金属音は、人間の生を無条件で肯定するための音楽となってあたりに響きわたります。およそあらゆる言語を越えてその音楽が鳴り響くまさにその場所にこそ、神は宿っているのではないでしょうか。(スタッフT.M.)
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