本作の撮影を務めたクリストファー・ブローヴェルトは、2012年に55歳の若さで惜しくも亡くなられた天才的な撮影監督ハリス・サヴィデスに彼の死の直前まで師事しました。サヴィデス作品の中でもとりわけ彼の才能が発揮された『ジェリー』『エレファント』『ラストデイズ』『永遠の僕たち』という4本のガス・ヴァン・サント監督作品の美しい傑作は、サヴィデスとブローヴェルトの師弟愛が紡ぎだした映画芸術の頂点の一つともいえるでしょう。サヴィデスの死後ブローヴェルトは助手の仕事から離れ、撮影監督としてこれまでに数多くの傑作を撮り続けてきました(ケリー・ライヒャルト監督作品における撮影が特別に素晴らしい!)が、その中でもこの『mid90s』の画面は16mmフィルムの質感とスタンダードの画角も相まって、彼ら二人の師匠と弟子が過ごした時間が最も色濃く反映されているように感じられてなりません。特に主人公の家の廊下の縦構図は、ほとんどブローヴェルトがサヴィデスの魂に祈りを捧げるようにして撮られたのではないかとすら想像してしまいます。「映画」とは、このように技術者=芸術家たちが脈々と継承してゆく技術=信念の歴史のことなのかもしれません。(スタッフT.M.)【ブログ掲載作品】
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