最初の印象は覚えていない。知り合いに近い友達の友達。大学時代、美南に出会ってからこれまでの事を思い出す。本当に好きだった。本当に本当に大好きだった。
「私が至らない妻だから、あなたにご迷惑をお掛けしてごめんなさいね」「子供は私たちが大切に育てますから」え…何?何を言っているの?雨の音が五月蝿くて、よく、聞き取れない…。
あなたは知らないでしょうけど、私は高校生の頃からあなたを見てた。あなたの周囲にはたくさんの人がいたけど、私にはあなたしかいなかった。だから私だけを見て欲しかった。
禅とは別れよう。退院したら禅にちゃんとそう伝えよう。そう決意したものの、太一の疑心暗鬼は留まる所を知らず、次第に暴力的になっていく。そんな折、禅が再び病室を訪れた。
「私と別れてください」振り絞るように告げた言葉。しかし答えを聞く前に、禅は太一が連れて来た警備員に連行されてしまった。そして退院し、自宅に戻った私を待ち受けていたのは…。
憂鬱で堪らないお義母さんとの共同生活。だけど蓋を開けてみたら意外と上手くやれそう…?ただ心配なのは太一の酒量が増えている事。それとなくお義母さんに相談してみると…。「…きっとストレスじゃない?」
誰からも理解を得られない孤独な日々。家の中はお義母さんが買ってきたベビーグッズで溢れていく。その中に私が選んだ物はない。
太一はお義母さんの味方。一人で抱えるのも限界で、せめてもの気晴らしに親友とお茶に行こうとすると、お義母さんも着いて来ると言う…!勘弁して…!!
私は家を飛び出した。携帯には鬼のような着信、GPSで追跡されないように電源を切る。行く場所なんか何処にもない。泣きながら街を彷徨っていると……。
「お前のせいで俺たちは…!この変態野郎!!お前が俺たちを壊したんだ!」太一の暴言に、堪り兼ねた禅が何か言い掛けた。「お前が彼女を大切にしないなら、俺は――」だけど私はその言葉を制した。その言葉を聞いてしまったら…。
歩道橋の階段を降りようとしたお義母さんの背中を、太一は押した。どうしてそんな事を…!青褪める私に満面の笑みで太一が言う。「約束守ったよ」と…。