写真と一緒に送られた手紙には編集長と初めて会ったバーに来いと書いてあった。そこで私を待っていたのは見知らぬ男。写真と引き換えに大金を要求され、窮地に立たされた私を救ってくれたのは…。
お義母さんは、私が階段から突き落としたと思っているらしい。自分で突き落としておいて、太一は「自分で落ちたって俺が証言するから安心して」などと言う。実家に逃げられればどんなに良いか。でも実家には帰れない事情があった。
あの騒動からしばらく経つが、太一はもう何も言わない。表面上は自由に動けるけれど、今までの事を考えたら本当の所はわからない。そんな日々が続いていたある夕暮れ時、太一の会社から電話が掛かってきた。
「いってきます」笑顔で手を振り、出勤のふりをして出て行く太一。嘘と知りながら、私もそれを笑顔で見送る。いつから私たちはこんな歪(いびつ)な関係になったのかーー。太一が戻って来る前に、できるだけ遠くへ。私は二度と戻らないつもりでタクシーに乗った。
どうして私の居場所が判ったのか、太一に訊いてもやはり本当の事は言わない。私たちはずっとこうやってお互いにその場を誤魔化しながら夫婦でいた。そんな夫婦関係に意味はない。私はついに「離婚しよう」と太一に告げた。
最初の印象は覚えていない。知り合いに近い友達の友達。大学時代、美南に出会ってからこれまでの事を思い出す。本当に好きだった。本当に本当に大好きだった。
「咲希!どうしてここに…」立ち上がった咲希の手には血塗れのナイフが握られていた。周囲が悲鳴を上げる中、腹痛で太一を助ける事もその場から逃げる事もできない。薄れゆく意識の片隅に、咲希の笑い声と破水した感覚だけが残っていた。
「俺じゃ駄目か」禅はそう言ったけれど、私は太一とも禅ともやり直す気は無かった。禅と私は鏡。私はそれに気付いたの。
産まれた赤ん坊を太一に会わせる事にした。「…男の子だよ。あなたに似てるの」その後、太一から離婚届を受け取った。そして…。傷付け合い、奪い合った泥沼不倫の果てにそれぞれが選んだ道はーー?『あの人は悪魔』完結!!