元世界チャンピオンのトラマノフと組んで、世界選手権に臨んだ雪野。しかし、一度は現役を引退していたトラマノフの身体は、過酷なトレーニングと競技の連続に、限界を超えようとしていた。鎮痛剤を打ってでも出場しようとするトラマノフを見かねて、棄権を勧める雪野だが、長い選手生活の中でもめったにない「最高の滑り」ができる予感を感じていたトラマノフは出場を強行。一方、2人を見守る一己の身体の中でも病気が進行中で、彼にとって残された時間は決して多くはなかった…。
パートナーのトラマノフとのコンビ続行が不可能となり、一度はアイスダンスを辞める決意をした雪野。しかし失意のどん底で、自分の力だけでどこまでできるのか、もう一度がんばってみようと思い直す。新しいパートナーを探す雪野の前に現れたのは、元パートナーで、一方的にコンビ解消を宣言したロマン・ギルベール。今さらコンビ復活はできないと思う雪野だったが、祖国のカナダも、恋人のレティシアも捨てたロマンの決意は固かった。雪野を見守る一己も、2人のコンビ再結成を望んでいた。一己がずっと温めていたプログラムは「トリスタンとイゾルデ」。その音楽を聴き、純粋に滑ってみたいと感じた2人は、新たな気持ちでコンビを組み、新プログラムに取り組むことに。一方、父親と同じ病魔に冒されていた一己には、時間がなかった。「トリスタンとイゾルデ」で、雪野とロマンをオリンピックへ…。
決意を新たに再スタートを切った雪野とロマン。高難度プログラム「トリスタンとイゾルデ」に挑むふたりだが、病魔におかされた一己には時間がなかった…。オリンピックへの切符を懸けた全日本選手権では、あえて「トリスタンとイゾルデ」を封印し、意表を突く「だったん人の踊り」で見事出場権を獲得する。一方、一己の深刻な病状を知った妻の香織は、一己をオリンピックへは行かせまいと、捨て身の行動に出る。それは、ふたりの決別が決定的になった瞬間でもあった。全てはオリンピックの舞台のために。誰も観たことがない究極のアイスダンスのために。永遠に人々の記憶に残る「トリスタンとイゾルデ」のために。そして、全世界が目撃者になった「奇跡の4分間」とは…?さいとうちほがずっと温めていたアイスダンス大河ロマン、圧倒的な読後感に包まれる、堂々の完結巻です!