「私達は二人で一輪の花だから」双子として生まれた蒼と朱莉の姉妹。幼い頃は以心伝心、一心同体のように感じていた。しかし才能を求める母親と周囲の目が、ふたりの絆を壊していき……。朱莉と常に比べられ、認められないことに傷ついた蒼。そして家のために生きることを強いられる朱莉もまた、誰にも言えない悩みを抱えて苦しんでいた――。これは、愛を知らない者たちが、惹かれ合う物語。
望まない受験を親に強制され続けた辻埼奏斗は、ひとりの少女と出会い、壊れかけた心を救われた。それから数年後――教師になった奏斗の前に、あの時の少女によく似た生徒が現れる…。いちばん愛されたかった人に、愛されなかった。いちばん愛されたかった人を、憎むしかなかった。これは、愛を知らない先生(ぼく)と生徒(きみ)が、惹かれ合う物語。
「『親は子供が大切』なんて、映画とかドラマの中だけだよね…」親に愛されなかった記憶。親にかけられた「呪い」のような言葉。親に抱いた、憎しみの感情。同じ心の痛みを抱えていた先生と生徒は、少しずつ、心の距離を縮めていく。しかしその関係は、周囲にあらぬ誤解を生んでしまい――これは、愛を知らない者たちが、惹かれ合う物語。
「先生ぶらないで。辻崎先生だけなんだよ?」生徒を噂に巻き込みたくなかった。距離を置けばそれですむと思った。これ以上近づかないほうがいいとわかっていた。それなのに僕は――きみと過ごす時間を失うことを割り切れない。眩しい姿と生き方に、憧れを抱かずにはいられない。これは、愛を知らない者たちが、惹かれ合う物語。
「浮気してるでしょ?」自分を愛してくれなかった母親の呪縛から解き放たれ、前を向いて歩きはじめた先生。しかし付き合っていた彼女とは、すでに埋められないほどの溝ができていた。一方、表向きは明るくふるまっている生徒の中には、いまだ暗い闇が渦巻いていて…。自分ひとり取り残されたような寂しさを感じた生徒は、先生にとある提案をする――。これは、愛を知らない者たちが、惹かれ合う物語。
「辻崎先生 ついて来てほしい所があるんだ」蒼に請われ、奏斗が向かった先は病院。そのベッドの上には、永い時間眠り続けている「彼女」の姿があった――。目覚めるかどうかわからない。それどころかいつ死ぬかわからない…。蒼がずっと守ろうとしてきたこと、そして深山月家に隠されてきた秘密が、今明らかになろうとしていた。これは、愛を知らない者たちが、大切なものを守ろうとする物語。
「だったら母親だって思えることをしてよ…」母の口から語られた真実、母の口から零れた本当の気持ち。それを知った蒼もまた、ただひとつの願いを口にする。愛されたかった。見てほしかった。母親でいてほしかった、と――。その時を待っていたように植物状態だった朱莉の容態に変化が訪れる。永い夢は終わり、新たな世界が幕を開ける。これは愛する者たちが、寄り添い生きていく物語。