原作は、数々の創作物に影響を与え続けている架空神話「クトゥルー神話」の生みの親として知られるH・P・ラヴクラフトが1927年に雑誌「Amazing Stories(アメージング・ストーリーズ)」にて発表した小説『宇宙の彼方の色(原題:The Color Out of Space)』。ラヴクラフトが遺した神話作品群であると同時に“放射線被曝”の恐怖を描いた先駆的作品と言われている。ドイツで実写映像化された本作は「映画史上、最もラヴクラフト=“原典”の魅力を忠実に描いた作品」という呼び声も高く、クトゥルー神話を愛するベトナム系ドイツ人のフアン・ヴ監督は“原典”を崇拝しつつも、ラヴクラフトが唱えた“宇宙的恐怖”をより拡大すべく、フアン監督の両親が移民を決意したベトナム戦争下の1975年アメリカと第二次世界大戦下のドイツを新たに作品の舞台にするなど、独自の解釈を盛り込んだ野心作である。フィンランドのナイトビジョン映画祭、スウェーデンのルンドファンタスティック映画祭をはじめ、製作から10年経った今なお、ヨーロッパの数多くの映画祭に入選。2022年11月に開催された、28年の歴史を持つフランスの映画祭、レトランジュ・フェスティバル・パリでも上映されるなど、今も世界各地を魅了し続けている本作が、原作小説発表から95周年の現在、ついに日本の劇場へと辿り着いた。