オフィスクレッシェンド主催の“まだ存在しない映画の予告編”で審査するユニークな映像コンテスト「未完成映画予告編大賞 MI-CAN3.5復活祭」最優秀作品の映画化。演じることにかける想いは人一倍強いものの、死体役ばかりをあてがわれる男の姿を通して、理想と現実の折り合いをつけることの難しさ、そして何より、“生きることと死ぬこと”という、私たち誰もの前にある深遠なる問題を描き出している。2014年の「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」で制作した『本のゆがみ』をはじめ、2016年公開のオムニバス映画『スクラップスクラッパー』内の一編「To be or...」、ラッセ・ハルストレム監督作『僕のワンダフル・ライフ』(2017年)のソフト化を記念して作られた『ひなたぼっこ』など、草苅監督は独自の視点で人間を見つめてきた。本作では自身の俳優経験をも活かし、ユーモアとペーソスのバランスが絶妙な人間ドラマを生み出している。主人公の〈死体の人〉を演じるのは、『アルキメデスの大戦』(2019)や『プリテンダーズ』(2021)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022)などの奥野瑛太。作品のジャンルを問わず幅広い活動を展開し、ドラマ『最愛』(2021/TBS系)での好演も記憶に新しい演技巧者が、ひとりの人間の“生き様”をスクリーンに刻む。そんな〈死体の人〉が運命の出会いを果たすヒロイン・加奈役に、『寝ても覚めても』(2018)や『の方へ、流れる』(2022)の唐田えりか。奥野を相手にした胆大心小な彼女の演技が観る者を魅了する。また、加奈の恋人役を楽駆が演じるほか、〈死体の人〉の両親役を、きたろう、烏丸せつこ らベテラン俳優が務め、コミカルな作風に深みを与えている。