2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロのひと月後。ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民のクルナス一家の長男ムラートが、旅先のパキスタンで“タリバン”の嫌疑をかけられ、キューバのグアンタナモ湾にある米軍基地の収容所に収監されてしまう。母ラビエは息子を救うため奔走するが、警察も行政も動いてくれない。藁にもすがる思いで、電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルトの元を訪れたラビエは、アドバイスを受けアメリカ合衆国最高裁判所でブッシュ大統領を相手に訴訟を起こすことになる……監督は『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)のベテラン、アンドレアス・ドレーゼン。無実の罪で5年もの間グアンタナモに収監されたムラート・クルナス本人の著作の映画化を計画するも、あまりにも悲惨な内容に二の足を踏んでいた。そんな中で出会ったムラートの母ラビエの天真爛漫なキャラクターに魅せられ、作品の方向性が決定づけられ、シリアスなテーマにもかかわらずコメディタッチで軽妙な快作が誕生することになった。主演のラビエを見事に演じ切ったドイツの人気コメディアン メルテム・カプタンは、「エリン・ブロコビッチ風のずうずうしさを盛り込んだ好感の持てる主役」(DEADLINE)、「絶妙な間合いと温かさを役にもたらした真の秘密兵器メルテム・カプタン」(The Hollywood Reporter)などと評され、ドイツ映画デビュー作にして初主演となった本作で、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)受賞の快挙を成し遂げた。さらにベルリン国際映画祭では銀熊賞(脚本賞)のW受賞も果たし、また、ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞では作品賞<銀賞>、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。