舞台は東京の下町、谷中。主人公は30歳で脱サラして落語家になったものの、気真面目で几帳面な性格のゆえか「小学生が国語の教科書を読んでいるような落語」のままで足踏みしたまま、前座に甘んじている出船亭志ん田(でふねてい・しんでん)。師匠の志ん米(しんこめ)の家に住み込み修行中で、同居する娘の夕美に密かに恋心を抱いている。志ん米の師匠、志ん扇(しんせん)の十三回忌一門会を前にスポンサーのご機嫌をとるために、後援会長のお気に入りで現在は行方不明の志ん魚(しんとと)の居場所を探すことに! 落語家の道をあきらめた気楽な中年男の志ん魚は、再び高座にあがるのか。そして将来への不安を感じながらも精進する志ん田の明日はどっちだ……!?
山吹摩耶が突然、故郷の函館に帰ってきた。東京でどう稼いだのか莫大な財を築いている。高校卒業以来何も変わっていない街で、久々に高校の同級生たちと再会する摩耶。そして彼らの「夢」や「希望」の実現のために、次々に「わたし、出すわ。」と自分のお金を差し出していく。友人たちは戸惑いながらも、ついそのお金を受け取ってしまうのだった。果たして摩耶の資金の出所は? 彼女の目的とは?そして大金を受け取った友人たちの夢の行く末は・・・?「わたし出すわ」のその先に、それぞれの未来が見えてくる。
幕末から明治。激動の時代を知恵と愛で生き抜いたある家族がいた――代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、家業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚付き合い、養育費、冠婚葬祭と、武家の慣習で出世の度に出費が増え、いつしか家計は火の車!一家の窮地に直之は、“家計立て直し計画”を宣言。家財を売り払い、妻のお駒(仲間由紀恵)に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは――。世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山家三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。