愛慾と情痴、獵奇と狂氣、享樂と叫喚、そこは地獄と極楽がお互いに愛撫しあう場所。―屋根裏から覗き見たことは、誰にも話してはいけない――編集者の富岡奈緒子(嘉門洋子)は、おどろおどろしい作風でカルト的に人気を得ている今は亡き画家、郷田三郎の特集記事の取材で、彼が生前に身を寄せていた東栄館を訪れる。館はあたり一面の草原と雑木林に囲まれ、人の目を避けるようにひっそりと佇んでいる。郷田のファンである奈緒子は、館内に飾られている作品に興奮を覚え、次々とカメラのシャッターを切っていく。この館に住む住人は、主人の山根、病気療養中の青年・桜井、借金から逃げてきた阿久津夫妻と娘のマドカ、そして家政婦のカオリの6人で、奈緒子は彼らに生前の郷田のことを聞きだそうとする。だが、主人の山根以外の住人たちは、生前の郷田の話をしようとしない。翌日、桜井と散策中に郷田のことを問いただすと「絵のうまいただの精神病患者」と言い放ち、「あまり首を突っ込まない方がいい」とクギを刺し、その場から立ち去ってしまう。そんな時、マドカから郷田は屋根裏が大好きだったことを聞かされる。その夜、屋根裏に上がり“散歩者”となった奈緒子はこの館の秘密を知ることとなる・・・。
誰も知らない、知ることはできない。鋼鉄のベールに包まれた組織がいま、その姿を現そうとしている。各地で続発する爆発事件。日本の中枢にも爆弾テロの影が忍び寄っていた。一体誰の手によって…、何の目的で…。警視庁公安部に異動となった狩場健は欧州での日本人集団拉致疑惑を追う過程で、アフリカのハキラ共和国が捜査線上に浮上する。しかし、拉致されたのではないかと思われた行方不明の日本人の一人が現れて帰国をする。ところが、帰国者の荷物が東京駅で火を噴く。狩場はCIAのナオミと共に行動し、一連のテロで使用された爆弾が中東のものであることを突き止める。一方、公安の嶋村は、中東のテロリストの隠れ蓑となっている劇団に捜査のために潜入していた。その劇団はアフリカと通じたNPO団体とも関係があることを突き止める。爆弾テロ、集団拉致疑惑、中東のテロリスト、劇団、NPO、そしてハキラ共和国が線上に並んだと同時に、更なる巨大な陰謀が炙り出されようとしていた。