男は、いきなり女の唇をこじ開け、舌をさし込んできた。女は思わず上着にしがみつく。そして、無言のうちに昇りつめるー。クラブ歌手のキム(樋口可南子)は黒人のスプーン(マイケル・ライト)と出逢った。翌日、キムは「私、クロと寝たのよ」と告げ、同棲していたバンド仲間の市来(奥田英二)の部屋を出て行った。数日後、スプーンと再会したキムは、再び熱い瞬間を過ごす。だが、二人の乗った自転車が事故を起こし、スプーンの消息はわからなくなった。キムは新しく借りた部屋で、スプーンの猫オズボーンと彼を待った。スプーンは脱走兵となってキムの前に現われた。二人の熱病のような熱い日々が始まった。
亡き妻から届いた手紙。それが、彼を新たな人生へと導いていく──。第二の人生を大自然に包まれた美しい土地で過ごそうと、北海道に移り住むことにした夫婦、篤史と良子は、かつて外国人が住んでいた家で暮らし始める。良子は篤史に家を囲む石塀作りを頼んだが、以前から患っていた心臓の病を悪化させて、この世を去ってしまう。悲しみにくれる篤史のもとに、ある日、良子から手紙が届いた。驚く篤史。そして、次々と見つかる手紙に導かれるように、篤史は周囲の人々の人生に関わっていく。また、長年疎遠になっていた娘、聡子と再会し・・・。はじめて知る、妻の《家族への想い》北海道を舞台にした新たな感動作誕生!
心の病をかかえる美智子は夫、孝夫の故郷、信州に二人で移り住む。山里の美しい村に帰った夫婦は、阿弥陀堂というお堂に暮らす96歳の老婆おうめを訪ねる。おうめのところに通ううちに、孝夫は声の出ない少女小百合に出会う。彼女は村の広報誌に、おうめが日々話したことを書きとめ、まとめた「阿弥陀堂だより」というコラムを連載していた。素朴だが温かい村の人々とのふれあい。美しい季節の移ろいに抱かれて暮らしていくうちに、美智子と孝夫はいつしか生きる喜びを取り戻していく。