周一郎が他界して5年、文緒(喜多嶋舞)は再び西湘に地にやって来た。カルチャーセンターの生花講座の講師として、急遽招かれたのだ。文緒は周一郎(中村方隆)の仏壇に線香をあげるために吉岡邸を訪れると、康隆(芦田昌太郎)は不意の来訪者に動揺を隠せない。かつて淡い想いを寄せたひと、そのひとと仁志(小林宏史)との逢引を目撃した衝撃が蘇ってくる。康隆は大学院に進み、学友のみどり(橘実里)と2人で論文をまとめ上げるため、日夜机を向かい合わせていた。そんな2人の心は既に学友からお互いを異性として知らず知らずのうちに意識していた。それにも関わらず、文緒の存在は康隆の心境に微妙な変化を与える。そんな折、文緒は康隆に周一郎の未発表遺稿「月下美人」を読ませる。そこには周一郎が脳梗塞で倒れる寸前からの、文緒と周一郎の愛の日々が綴られていた。なぜ文緒は康隆にそれを読ませたのか。その真意とは・・・。
30歳の文緒(喜多嶋舞)は65歳になる夫の周一郎(中村方隆)との夫婦生活を西湘の邸宅で過ごしていた。周一郎は数々の名作を生み出してきた文豪で、文緒の耳には「莫大な遺産目当て」と揶揄した言葉も入ってくる。しかし、文緒の心にあるのは周一郎の一途な愛だけ。文緒はまさに現代の日本女性が失っていたゆかしさを備えた女性であった。しかし、周一郎が脳梗塞で倒れて下半身が不随になったときから、周一郎に捧げてきた身も、心も、徐々に微妙な変化を遂げていく。作家志望の青年、仁志(小林宏史)。周一郎の孫、康隆(芦田昌太郎)の存在。そして、30歳の若さで不能の夫を持つことになった文緒を哀れむ周一郎。3人の男性の思惑が、文緒の火照った心を、身体を、更に熱いものへとしていく。やがて、文緒の身体が開かれるときがやってくる・・・、一夜限りの大輪を咲かせる月下美人のように・・・。