覚せい剤密売をしながら裏社会で生きる不器用な男二人のざらついた感情をあぶり出す物語。悪友であるケンとカズは、覚醒剤の闇取引で金を稼いでいた。しかし、ケンは彼女の早紀が妊娠した事によりまっとうな人生を願うようになる。一方、カズは認知症の母を施設に入れるために金が必要なことを打ち明けられずにいた。やがてカズは密売ルートを増やすため、敵対グループと手を組む危険な行動に出る。これを最後の仕事にしようと決意したケンだったが、元締めのヤクザに目をつけられ次第に追いつめられていく。
広大な草原を走る貨物列車の鉄道運転士ヌルラン。定年退職を控える彼の列車は、線路上にテーブルを置いてお茶を飲む男性たち、洗濯物を干す女性たちが日常をすごす住宅街も通り抜ける。ついに最後の日。運転を終えると、列車に美しく青いブラジャーが引っかかっていた。「このブラは誰のもの?」 持ち主を探すことを決意したヌルランは、線路沿いの家を次々と訪ね歩く。訪れた先には、様々な事情を抱えた女性たちがいて…。
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々が作る木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
23年前にロシアへ出稼ぎに行ったまま行方がわからなくなっていたザールクが、キルギスの村に帰ってきた。家族や村人たちは記憶と言葉を失った彼の姿に動揺するが、そこにザールクの妻であるウムスナイの姿はなかった。周囲の心配をよそに、ザールクは村にあふれるゴミを黙々と片付ける。そんなザールクに、村の権力者による圧力や、近代化の波にのまれていく故郷の姿が否応なく迫る。
フランス人夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、緑豊かな山岳地帯スペイン・ガリシア地方の小さな村に移住する。しかし、ある出来事をきっかけに地元の村人たちと敵対関係が激化していき……。
同じ美容室で働くむっちゃんとグリコが音楽の趣味をきっかけに意気投合した頃、復縁を迫っているらしいグリコの元彼・モーが美容室に挙動不審さMAXで現れる。後日、グリコはミュージシャン・ナカヤマシューコのライブで窮地のベンジーと再会するが、同行していたむっちゃんがベンジーに一目惚れしてしまい……。
横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。同じ地平で描き出される、家庭環境、性的指向、容姿――様々に異なる背景を持つこの5人。だが、少しずつ、彼らの関係は交差していく。
1968年メキシコオリンピックで銅メダルを獲得したボクサー・森岡栄治(武田真治)。その後プロに転向したが、1975年網膜剥離によって引退を余儀なくされる。妻・和江(紺野まひる)との間に治子(藤本七海)と和則をもうけていたが、仕事も続かず、和江がスナックで働いて生活を支えていた。ダメな父親の姿しか知らないの治子は、バレエのレッスンを心のよりどころにしていた。栄治は用心棒をした縁で、ヤクザの親分が世話してくれたボクシングジムの会長をつとめることになる。しかし栄治の兄・忠利(山崎邦正)が金の無心に来たり、和江が店の客に送ってもらうのを目にした栄治が相手を殴ったりと、生活は良くならない。そんな日々に嫌気がさした和江は、子供たちを置いて家出してしまう。その数日後、治子が拾ってきた猫のハシゾウが死ぬ。そのとき治子は、初めて栄治の涙を見る。それから栄治の愛人になったホステスの裕子(広末涼子)が、一緒に暮らし始める。借金まみれだった忠利から株券を預かった栄治は、偽造有価証券発行、詐欺未遂の容疑者として逮捕される。証拠不十分で釈放されるが、父や裕子と子供たちの間には、微妙な変化が訪れる。昭和天皇の崩御した日に治子の祖父も他界し、時代は昭和から平成へ移り変わる。栄治は和則と共にジムでボクサーを育て、日本チャンピオンを輩出。治子は子供のころからの夢だったバレエ教室の先生になった。そんなある日、治子の元に、栄治がガンであるという知らせが入る……。
メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー、シエロのひとり娘ラウラが犯罪組織に誘拐された。誘拐犯の要求に従い、20万ペソの身代金を支払ってもラウラは帰ってこない。警察に相談しても取り合ってもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出すのだが…。
ケンカに明け暮れる青年アジョ・カウィルは、クールで美しく、男顔負けの強さを持つ女ボディガードのイトゥンとの決闘に身を投じ、情熱的な恋に落ちる。アジョは勃起不全のコンプレックスを抱えていたが、イトゥンの一途な愛に救われ、2人は結ばれる。しかしアジョから勃起不全の原因となった秘密を打ち明けられたイトゥンは、愛する夫のために復讐を企てるが、そのせいで取り返しのつかない悲劇的な事態を招いてしまう。そして暴力と憎しみの連鎖にのみ込まれた彼らの前に、ジェリタという正体不明の“復讐の女神”が舞い降りる…
現人神である「カミサマ」を国家元首にいただき、清く、美しく輝けるとある国のとある街。少子化にあえぐこの街では、45歳以上の未婚者は市民権を失うという条例が制定されており、市民権を剥奪されると、街を出て行かなければならない。あるいは、軍に入隊し、強制的にお国の為に働く道を選ばなければならない。この街で介護施設を営んでいる未婚のよしこは、45歳を目前に控え、この街から排除される不安を抱えながら、日々暮らしていた。市民権を得ることを諦め、街を出るという選択もあるが、彼女は施設に入居している老人たちを見捨てることはできない。そんな中、老後施設に一人の身元不明の中年男性が突如として迷い込んでくるのであった・・・。
月島春は、パートナー宗一朗の連れ子・蘭がカナダに留学し、言い知れぬ寂しさを抱えていた。そんな時、公園で記憶を失くした青年と出会う。過去に流産も経験している春は、その青年を神からの贈り物と信じ、今度こそ彼を自らの傍で育てたいと願う。一方、春の弟・毅は音楽活動を続けている。その妻・美香子は精神の不調を抱え、心療内科医である宗一朗の診察を受けながら、4歳の子を育て、毅の創作を献身的に支えていた。すれ違う優しさとわだかまる不安…。日々の暮らしが軋みはじめ、それぞれの秘めた思いが、神戸の街で交錯する。
不吉な夢を見て目覚めた朝、ジョンホは警察の訪問を受ける。昨夜、別居中の妻が殺されたという。突然のニュースに愕然とする中、前夜どこにいたのかを問われるが、記憶を喪失しており、回答することが出来ない。着衣に血しぶきが飛んでいることを見とがめられ、手錠を掛けられそうになるが、すんでのところで逃げ出す。ジョンホは自らの潔白とアリバイを証明するため、昨日共に酒を飲んでいたはずの親友のジンスを尋ねるが…。驚愕のサスペンス・スリラー!
内モンゴルのフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦。夫のチョクトは都会での生活を望んでいるが、妻のサロールは今の暮らしに満足している。どこまでも続く大地、空を流れる白い雲。羊は群れをなし、馬が草原を駆けぬける。しかし、自由なはずの草原の暮らしにも変化が訪れ、徐々に二人の気持ちがすれ違いはじめる。そして、ある冬の夜、二人は大きな喪失を経験する。その日を境に、サロールと草原で生きる覚悟を決めたチョクトだったが…。
『007』、『ミッション・インポッシブル』、『キングスマン』・・・。映画の歴史でスパイを題材にした名作は数多くあれど、しかし、それとはまったく違うアクションとは無縁の、世界でいちばん“やさしい”スパイ映画が誕生した。主人公は83歳の素人男性セルヒオ。しかし、映画ではこのセルヒオが驚くべき活躍を見せる。携帯電話の扱いひとつさえ不慣れなセルヒオが、眼鏡型の隠しカメラを駆使し、暗号を使って潜入捜査を繰り広げる様子に視聴者はハラハラしっぱなし。老人ホームのある入居者が虐待されているとの疑惑があり、そのターゲットの様子を密かに克明に報告することが彼のミッションだ。妻を亡くした悲しみの中にある彼は、傷ついている人をほおっておけない心優しい性格で、調査を行うかたわら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となってしまう・・・。セルヒオは無事にミッションをやり遂げることが出来るのか!?そして彼が導き出したある真実とは?
時が止まったような父の残した写真館で、レタッチ(写真の加工修正)を行う女性恐怖症の男・械(50)は、ある日、体に傷がある女・今日子と出会う。械は今日子に頼まれ、画像処理によって傷のない美しい姿を生み出す。その姿に魅了される今日子であったが、心の奥底で、自分の存在が揺らぎ始める。理想の自分と現実の自分、二つの自分の溝に落ちた今日子は、精神的混乱に陥ってゆく。やがて、完全に自分を喪失するキョウコ。もはや、自分だけが今日子を救うことができると感じた械は、死を覚悟して、女を愛する決意をする。
悠二は、俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送っている。別れた彼女のユキとの同棲生活も未だに続き、彼女との終わりも受け入れられない。そんなある日、高校の同級生・多田と再会した悠二は、高校時代に絶対的な存在だった“佐々木”との日々を思い起こす。常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが佐々木の身に降りかかる“ある出来事”をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れはじめる。
雑居ビルの4階に位置したデリヘル。バブルを彷彿とさせるような内装の部屋で、さまざまな女性が肩を寄せ合って客待ちをしている。入店したばかりのカノウはそれを見て、小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。みんな可愛らしいウサギにばかり夢中になる。嫌われ者のタヌキになんて目もくれないのに。
男4人が、6畳1間でシェアハウス。呑気な生活。そして、現れる女たち。多分、ファンタジー映画。
中流家庭の住む閑静なマンション。うだつの上がらない大学の非常勤講師ユンジュは、出産間近の妻ウンシルに養われながら教授を目指している。だが最近、飼うことを禁止されているはずの犬の鳴き声がマンション内に響き渡り、なかなか出世できない彼をイラつかせていた。そしてある時、彼はたまたま犬を見つけると地下室に閉じこめてしまう。一方、マンションの管理事務所で働くヒョンナムは、平凡で退屈な毎日を送っていた。そんな時、団地に住む少女の愛犬ピンドリがいなくなったと知り、正義感を燃やしてビラ貼りを手伝い始めるのだった…。
高利貸しの手下で借金の取り立て屋ユンと、ベトナムの伝統歌劇<カイルオン>の花形役者リン・フン。全く接点のないはずの二人があるきっかけで知り合い、友情にも似た感情を互いに抱く。ユンは過去の記憶に囚われながらも新たな道を進もうとするが、その罪は償うにはあまりにも大きく、抗えない運命が迫っていた……。
質素で孤独な生活を送る鉄道保線員ツァンコ・ペトロフは、ある日線路で大金を見つけ警察に届ける。運輸省の広報部長ユリアは客車問題の目くらましに、ツァンコを表彰し英雄と持ち上げる。だが実際は皆ツァンコをぞんざいに扱い、ユリアはツァンコの大事な腕時計を失くしてしまう。静かな憤りを胸に、ツァンコは腕時計と尊厳をかけた戦いに挑む。
1940年代のブラジル。精神病院で働くことになった女性医師のニーゼは、患者に対するショック療法など、暴力的な治療が日常茶飯事になっている現実を目の当たりにし、衝撃を受ける。男性医師ばかりの病院で身の置き場も少ないニーゼだったが、患者を病院の支配から解放するため、患者たちに絵の具と筆を与え、心を自由に表現する場を与えようと試みる…。
24歳のOLヨシカは中学の同級生"イチ"へ10年間片思い中!過去のイチとの思い出を召喚したり、趣味である絶滅した棒物について夜通し調べたり、博物館からアンモナイトを払い下げてもらったりと、1人忙しい毎日。そんなヨシカの前へ会社の同期で熱烈に愛してくれる"リアル恋愛"の彼氏"ニ"が突如現れた!!「人生初告られた!」とテンションがあがるも、いまいちニとの関係に乗り切れないヨシカ。"脳内片思い"と"リアル恋愛"の2人の彼氏、理想と現実、どちらも欲しいし、どっちも欲しくない…恋愛に臆病で、片思い経験しかないヨシカが、もがき、苦しみながら本当の自分を解き放つ!!
二月のある日、シングルファーザーの肇(柳家京太郎)は、広島から上京して、春から東京の大学に通う娘の璃子(石井杏奈)のため、二人で部屋探しに歩く。そこで出会う人々とのふれあいが、二人の心にかけがえのない思い出を刻み付けていく。たった一日のちいさな旅路が終わりに近づくころ、肇は璃子が幼いころ死別した妻との思い出を語りはじめる。璃子にとってそれは、今まで知ることのなかった父と母の秘められた物語であった。
「なにそれ、マジで言ってんの?」自分の父親に思いを寄せる親友マヤの突然の告白に、あきれる妙子。笑い飛ばす母親ミドリとまんざらでもない父親恭介。しかし親友はその日をきっかけに、猛然と父親へのアタックを開始する。人間関係も常識もかえりみず突き進み、見るものを唖然とさせる純愛は、家族、恋人、愛人、先生、同僚を巻き込んでめくるめく恋愛模様へと発展していく―ー
高校生の加藤勝は地下鉄での事件で命を落とした。しかし黒い謎の球体“GANTZ”は、加藤をはじめ死んだはずの人間らを呼び出すと、“星人”と呼ばれる異形の敵との戦いを強いる。戦いの舞台は、大阪・道頓堀。そこは妖怪型の星人軍団であふれかり、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。生きて帰るには、凶悪な星人軍団をすべて倒すしかない。次々と仲間たちが散っていく中、加藤は、たったひとりの家族である弟のもとへ還るため、壮絶な戦いに挑む……!
国境沿いの立入禁止区域に放置された船を根城にし、魚や貝を獲ってひとりたくましく生活する少年。孤独だが静かな船の暮らしに、突然国境の反対側から少年と同じくらいの年の少年兵が乗り込んでくる。「船のこちら側は自分の陣地」とばかりに甲板にロープを張り勝手に船の備品を持ちだしていく侵入者に少年は怒りの声をあげるが、言葉が通じない。ときに銃を持ちだす少年兵には何を言えず、コミュニケーションの取れないまま謎を抱えた少年兵との生活が始まった…。
1969年、ベトナム戦争は韓国にも暗い影を落としていた。全身の麻痺が進む難病を抱えた彫刻家ジュングは湖畔で療養していた。生きる希望も失った夫を見かねた妻は、創作意欲を取り戻させようと、町娘ミンギョンを連れてくる。アトリエでミンギョンをモデルに創作を再開したジュングは活力を取り戻し、ミンギョンもまた家庭生活の辛さから解放され本来の明るさを取り戻しつつあった。ふたりは深い絆で結ばれていくのだが・・・。
19世紀のフランス。若き軍人エルヴェは、美しいエレーヌと恋に落ち結婚する。幸せな新婚生活もつかの間、エルヴェは蚕の調達のため、遥か極東の地・日本へ旅立つことに。見たことも聞いたこともない異国の地へ、遠く険しい道のりを進んだエルヴェだったが、案内された小さな村で、取引相手の妻として仕える絹のような肌を持つ謎めいた少女に魅せられる。彼女を忘れられず、命を賭けて何度も日本へ渡るエルヴェ。そんな夫を静かに見守り、変わらぬ愛で彼の帰りを待ちわびるエレーヌ。ふたりの愛はどこに辿り着くのか・・・?エルヴェが最後の旅を終えたとき、一通の日本語の手紙が彼のもとに届くのだが・・・。
独身男コルベインは子持ちの未亡人ソルヴェーイグに惹かれ、彼女も彼に惹かれている。しかし、村中がこの恋の発展を興味津々で見守るなか、なんと、馬同士の愛が先を越してしまう。果たして、彼らの複雑化してしまった四角関係のゆくえは・・・・!?アイスランドの美しくも過酷な大自然を舞台に繰り広げられる、人間と馬との予測のつかないストーリー。交差する悲劇と喜劇。そしてその結末は・・・・。
自給自足の生活を夢見る青年・工藤は東京から自然豊かな山里の「祖谷」へやってくる。ある日、工藤は山奥でひっそりと暮らすお爺と春菜に出会い、効率とは無縁である2人との生活は工藤の心をゆっくりと浄化していく。しかし、おとぎ話のような山の生活にも変化が起きる。進学に悩む春菜と体調が悪化していくお爺。工藤も、厳しい自然との共存に限界を感じ、所詮文明社会の下でしか生きられないということに絶望を隠せないでいた…
ジョン・シェンク監督作品『南の島の大統領――沈みゆくモルディブ』は、モルディブのモハメド・ナシード元大統領のある一年間を描いた物語である。当時彼は、今まで世界の他のどんなリーダーが経験したよりも大きな問題に直面していた――それは文字通り、モルディブと国民が“生き残る”ことができるのか、という問題である。この問題は、モルディブを民主化し、30年の独裁政権にピリオドを打った彼の目にとってすら、民主化よりもはるかに難しいものとして映っていた。世界でも特に平均海抜が低いモルディブは、海水面が1メートル上昇するだけでも、1200ある島全て海に沈み、人が住めなくなると言われている。ナシード大統領の任期一年目を描いた本作品のクライマックスは、2009年にコペンハーゲンで行われた第15回気候変動枠組条約締約国会議だ。その場面では、このような国際会議では恒例の政治的駆け引きを垣間見ることができる。ただ、ナシードが他の大勢の政治家と違っているのは、自分の手の内を明かすことをためらわない点である。彼が本作品でカメラの前に晒したその“作戦”の中で、ナシードは、ちっぽけな国の弱い立場を逆に利用し、メディアの力を使って他の発展途上国との結束をアピールする、それによって会議の行き詰まりを解消しようとしていた。協定がサインされる望みが消えかけた時、その合意を救ったのはナシードが行った感動的なスピーチだった。あまり大きくない国であるにもかかわらず、気候変動に対して迅速な行動を求めたモハメド・ナシードの声は、世界を導く意見の一つとなったのである。
パン職人を目指していたが、勤め先のパン屋を解雇されたクロ。結婚を意識していた恋人と、喧嘩別れをしたカメラマンの英斗。主演女優が降板し、舞台の上演が危ぶまれる演出家の豪。それぞれ別の人生の目的を持った接点のない3人が、ひょんなことから出会い、東京を飛び出す。行き場をなくした3人は、海辺の閉鎖された旅館での共同生活を通して自分の生き方を再認識する。旅館でのバカンスは3人の心をゆっくりと溶かしていく。ほんの少しだけ生きるヒントをみつけた3人は、それぞれ以前よりも自分の人生に真剣にむきあうようになる…。
世界大戦後の荒廃したニューヨークで戦火を生き抜いた元SWATの敏腕女性隊員デュナンと、その相棒・サイボーグとなったかつての恋人ブリアレオスは未だ戦いの日々を送っていた。終わりの見えない戦いの中、人類が生み出した理想都市オリュンポスでの安息を夢見る二人の前に突如現れた1人の少女。オリュンポスから来たという彼女は謎の追手に追われていた。少女と行動を共にする中で、二人は彼女の身体に秘められた秘密を知ることになる。それは世界を、地球を破壊し尽くすほどの巨大な力の鍵だった──。