“年の差46歳の友情”にレジェンド声優達が呼応!待望の劇場公開 声優・森山周一郎と映画監督・小原正至が手掛けた初作品『THE ANCESTOR』は、米国アカデミー賞公認のショートショートフィルムフェスティバル&アジア 2018にてアニメ作品初のジャパン部門優秀賞と東京都知事賞を受賞。二作目『アイアンプレッジ』は国内外の映画祭で多くの上映を果たした。そして三作目となる本作は、森山の経験した戦後の芸能界や生収録のアテレコの現場、競争率が高く厳しい世界を生き抜いた仕事術など、未来の俳優・声優達への想いを託す作品を目指す事になった。しかし2021年2月8日に森山は永眠。小原は監督として、友として、森山の想いを絶やす事なく作品を作り上げた。本作には、森山の劇団東芸時代の後輩である人気声優・野沢雅子や、先輩である大塚周夫の息子の大塚明夫のほか、森山の初監督作品『幻想のParis』(1992年)に出演した俳優の中尾彬と主題歌を担当したLiLiCo、スタジオジブリ作品『風の谷のナウシカ』(1984年)の主演を務めた声優・島本須美、同スタジオ作品『紅の豚』マダム・ジーナ役にて森山と共演した加藤登紀子など、日本の芸能界が誇る屈指のレジェンド達が出演し、森山と彼らが生きた時代を語っていく。
全裸の臨月の女性が、こちらを真っ直ぐ見ている。今は「元妻」となった武田美由紀を、正面・背中、そして横から捉えた、原一男によるスチール写真だ。原は返還前後の沖縄に降り立ち、武田を訪ねる。彼女は「すが子」と呼ばれる女と暮らしていた。「何も言えんのか」「テメエの事も分からんのか。はっきりしないじゃないか。何で嫌気さしたんか」「うるせえクソガキ」ひたすらすが子を罵倒する、武田の姿がそこにはあった。原の訪問が決定的な亀裂を走らせたのか、二人の生活は終わりを迎える。在沖縄米軍基地から解放された黒人たちが陽気に踊る<バー銀座>。そこに、見事なアフロヘアに長くてカールしたつけまつ毛の14歳の少女・チチがいる。彼女は黒人との子どもを妊娠していた。武田は言う。「解放感より戦慄感の方がずっと強い。私生児に徹しきるよ、野性児にするぞ。そんなガキがいいさ」「これは二年前からの約束だけど、私がひとり出産するところを原くん、フィルム撮っといてね。アンタに出産の場面を見せたいのさ」そう武田は言い放つ。東京に戻った原のもとに、武田からの手紙が届く。沖縄の男との子どもを妊娠しているという。原はふたたび沖縄に飛んだ。武田はすでに沖縄の男と別れ、ポールという黒人GIと同棲していた。男性による女性支配への反発、ポールへの不満を並べ立てる武田を前に、原はいら立ちを隠せない。「じゃあ要するにポールって人間が、好きなんだな?それならなんでそこに、黒人って問題が出てくるんだよ!!」「じゃあポールとの間に、白いガキが生れてくるか!!」武田にマイクを向けながら、原は泣いてしまう。その姿を見た武田は言う。「……なんで泣く?」現在の恋人・小林佐智子と一緒に原は、三度目の沖縄へ向かう。「武田さんとちゃんと対峙できなかったら、私はイヤなわけ」マイクを持ちながら小林はそう、武田に宣言する。「口だけは上手いからね、この男は」「アンタだけじゃないのに、これ(原)が寝た女は」「これと一緒に仕事することは、出来ないね」「まあいま惚れているアンタには、分かんないね」武田は原のダメさを列挙する。白いシーツの上で、武田が喘いでいる。カメラをかついだ原は腰を動かしながら、行為のさ中の彼女の表情を、撮りつづける。ゆっくり上下するカメラ――呆けた表情でカメラを、すなわち原に注がれた眼差しが、美しい。武田は沖縄を去ることを決めた。沖縄への想いを綴ったビラをAサインの女に配りたい。そう考えた武田は幼な子・零の手を引き、夜のコザを歩く。沖縄を離れる日がやってきた。武田は零を抱きフェリーに乗っている。錨が上がる、汽笛が鳴る、島が遠ざかってゆく。甲板で潮風に吹かれる母子。東京の原のアパート。いよいよ自力出産に臨む武田を、陣痛の波が襲う。畳の上にビニールと新聞紙が敷かれている。そして、あらたな命がこの世界にゆっくりと、誕生を告げる――。
世界を舞台に活躍する写真家の大山光(GACKT)は、よく引き締まった身体、優しい面影をもつ美しい男である。東京での華やかな暮らしに不在感を感じていた中、ある日、救いを求めて沖縄を訪れる。そこで、澄み切ったイノー(サンゴ礁の浅瀬)から出現した美しい姿態の美少女、石垣真海と出逢い、すぐにいなくなってしまった彼女を探し歩く。大山は、「カーラヌカン」という不思議な祈りの声に誘われ「ニライカナイ海の火祭り」で、真海を見つける。そして、三日月の夜に”写真を撮らせて欲しい”と説得し、八重山地方を背景に、真海を撮影していた。突然、強い太陽光線が大山を突き刺し、目の前が真っ白になる。気がつくと、真海が忽然と消えてしまっていた。美少女はまるで光に吸い込まれるように消えてしまったのだ。大山は琉球から綿々と続く自然信仰の力に押し流されて、訳のわからないまま、八重山の奥深くで消えた少女を探し続けてしまう…。