5年に1度、市内31輌の山車が勢ぞろいし、全国各地から約55万人が来場する半田市の一大イベント「はんだ山車まつり」。はじめて開催されたのは、1979年5月のことだった。当時、半田市内の政治状況は二分されており、対立や論争が日常的に絶えなかった。それを憂いた半田青年会議所の酒井義弘(38)が、「はんだの心を一つにしたい」と、31輌の山車を勢揃いさせる山車まつりを企画する。しかしそれは前代未聞の企画であり、開催にあたっての費用集めや、山車の通るルートに信号機や鉄橋などの物理的な障害があるなど、実現に至る道のりは困難を極めた。さらには反対派による激しい反発もあり、祭り開催の半年前に企画の実現は暗礁に乗り上げてしまう。そんな中、酒井の強い情熱に絆された仲間たちが集まり始め――
街の片隅にあるスナック。表向きこそスナックだが、実際は別部屋でホステスと遊べる店として営業を続けていた。美咲は一人息子の凌空のため金になるなら何でもやってきた。ある日のこと、店に一人の男がやってくる。男は部屋の窓辺から外を覗き続ける不思議な客だった。
寡黙で不器用な、懐かしい父親。とある山間にある村・花谷村。美しいその村が、ダムに沈もうとしている。避けられない運命に対し、村役場は、村のすべての家族を写真におさめることで、花谷村の美しさを永遠に残すことを考える。依頼を受けたのは、村の写真屋、高橋研一と東京で写真家を目指す息子の孝。なぜ父は決して親密ではない息子を、助手に指名したのか。一軒一軒、険しい山道を歩き、写真を撮り続ける2人。頑ななまでの父の背中に、しだいに息子は何かを感じ始める・・・。
ある日、妻のかおりが死んだ。夫の浩二は葬儀を終え、一人きりになった途端、錯乱したかのように部屋を探し出す。医者から、かおりが妊娠三ヶ月だったことを告げられたからだ。自分の子ではない。いったい誰の子供なんだ?手帳に残された「こんな形で罪深さに怯えるようになるなんて」という走り書き。かおりは、どんな男に抱かれていたんだ?疑念を深めていく浩二。しかしそれは彼女にとっては、大切な人との大切な時間だった…。
浩介は過去に最愛の妻を失い、女性との新たな出会いに踏み込めないでいる。会社での仕事も身が入らなくなっていた。亡き妻と一緒によく見ていたお気に入りの映画「マイエンジェル」のDVDを一人寂しく見ている浩介。何度も観た映画。だが今日は何かが違った。画面の中のヒロインと目が合ったような気がする。気のせいかと思い画面を見つめているとまた目が合った。そしてそのヒロインが自分に向って歩いてきたかと思うと画面から飛び出してきた。あっけにとられる浩介。彼女はいつも一人で寂しそうに映画を観ている浩介のことが気になって映画の中から出て来たと言うが・・・・・・。
なんとなくワケあり気で、なんとなくヤバイ奴らが織り成す!!耽美と官能と衝撃の乱歩ワールド、ストイックでエロティックな愛の世界が花開く。美貌の人気作家今野佳子の担当となった倉田真理の仕事は、佳子に新作を書かせることであった。若くして華々しいデビューした佳子は、ここ数年新作どころかエッセイすらかいていない。真理が勤める出版社の新人賞に応募したことが佳子のデビューのきっかけで、作家志望だった真理はその賞に応募した過去があり、彼女にとって佳子はまさに憧れの存在であった。佳子は大御所作家の大河内俊作の弟子をしていた。弟子といっても実は、大河内の変態プレイの相手をしているだけだったという…。変わり者の大河内に耐えられなくなり、担当編集者まで失踪してしまうくらいであった。そして、出版社の屋台骨であった大河内自身までもが突然失踪してしまい、文芸誌の連載の穴を埋めるべく、美人の佳子を小原が抜擢したのだという。小原の狙いはまんまと当たり、若手の美貌作家として大河内以上の人気を得るようになったのだった。佳子の才能を昔から知るその先輩は、佳子にゴーストライターが付いているのではと疑問を抱いていた…。そして、真理は佳子の家に通うようになり、一人暮しの佳子の家で、佳子と自分以外の人間がいるのではないかと感じ始める…。