舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。静かな冬の貴船。ふじやで働く仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを女将に呼ばれ仕事へと戻る。だが2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。ミコトだけではない、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちはみな異変を感じ始めた。ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない風呂場。自分たちが「ループ」しているのだ。しかもちょうど2分間!2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。そのループから抜け出したい人、とどまりたい人、それぞれの感情は乱れ始め、それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。力を合わせ原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは一人複雑な思いを抱えていた―――。
とある雑居ビルの2階。カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。見ると、画面には自分の顔。しかもこちらに向かって話しかけている。「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。“タイムテレビ”の存在を知り、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるカフェの常連たち。さらに隣人の理容師メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は加速度的に事態をややこしくしていく......。襲いかかる未来、抗えない整合性。ドロステのはてで僕らは。
困った!無人島に「週刊大衆」しかないぞ...。茫洋と広がる海辺に取り残された男がひとり。砂浜には、なぜだかキング・オブ・週刊誌の「週刊大衆」が一冊。男は「週刊大衆」と共に助けが来るのを待つことに決めた。「週刊大衆」を手にとり、男は妄想の世界へ。妄想力こそが、男の唯一の特技だった。男は「週刊大衆」を使って様々な妄想を広げる。しかしいくら待っても来ない助け舟。カンカンと照りつける太陽の光。孤独。男の妄想はやがて、常に待ち続けた自分の過去の記憶へと移っていく。男は、正しい人生を歩んできたのか...?極限状態で対峙した「週刊大衆」の表紙の煌びやかな色彩の果てに、男は何をみるのか―――。