ある夏の日。九十九里の砂浜に佇む主人公の和彦。置き忘れた想いを還しに…「夏になるとたまんないよ。そこら中に思い出がいっぱいでやんなっちゃうぜ」遠いあの日に想いを馳せる。若き日の和彦がビートルにサーフィンボードを乗せて海岸線を走る。「ひとつっきりしかないような大切なモノってさ、ぜったいに見逃したりしないんだ」助手席には恋人の智子。ふざけ合う二人。カセットデッキから流れるビーチボーイズの《サーファーガール》それは眩しい日々。別れの日に智子から云われた言葉…十数年後、その意味をようやく噛みしめる和彦。「自分自身に嘘ついてるんじないかって、俺ってこんな風に生きるつもりだったっけ」これは、ノスタルジーを纏った真夏の寓話。
「とうとうスーパースターになっちゃった、、」その日から数年さかのぼる1980年。女子高生のヨーコとヒロコは親友だった。二人はダンスパーティで演奏するバンドChubbysのファンで、ヨーコはボーカルのタツヤに夢中だ。高校を卒業してすぐ、ヒロコは遠くの町に就職した。地元で働くヨーコとは離れ離れになる。二人は約束をした。タツヤがスターになって、この町のホールでコンサートする日が来たら、同じホテルに泊まって、こっそりあの子たちの部屋の前まで行って、、、やがて、約束の日。ヒロコはホテルの一室でヨーコに語りかける。「あの曲って、あんたのこと歌ってるんじゃないかって、、」 暗がりにひとつだけ 空のシート光る お前が愛した場所さ 星空で手をたたく お前の拍手だけ聴こえない 想い出は夏のまま時をとめたね 星屑のStage 涙をしきつめて 約束だね この歌 俺 cry cry crying 歌うよ タツヤの歌が哀しい。彼女が追いかけたのか、、歌詞が彼女を追いかけたのか、、少し遅めの夏休み。それは青春の終わり。
海辺の別荘に佇む老人・有重。時は20年遡る…“「少女A」それは、街角で聖地を探す少女の物語だ。”と、新聞の文化欄に書いた新進気鋭のノンフィクション作家・有重。それをきっかけに、アイドル中森明菜が歌い、ヒットした楽曲「少女A」の作詞家・売野雅勇と海辺の別荘で会うことになった。待ち合わせに現れたのは、18歳の女の子。そして、「売野雅勇です」と名乗った。有重は、その少女にインタビューを試み、“街角で聖地を探す少女の物語だ”と評した「少女A」を紐解きながら、自分自身の感情の機微とも向かい合い、答え合わせをする…やがて、過去に想いを馳せていた有重が現実に引き戻されると、時は西暦2000年を迎えようとしていた。