とある小さな港町で生きる、視力を失った男・西村芳則。さびれても美しいこの町で、感性を失わず生きようとする西村の姿が、周囲の人々の心を振るわせていく──。主人公の西村を演じるのは、多くの映画監督に愛され、数々の作品に花を添えてきた木村知貴。西村の知覚と感情を追って、彼の心に映る景色を想起させる独特な観賞体験は、観るものの心を惹きつける。一時帰郷し、西村と再会する同級生を演じるのは高見こころ。かつての同級生や疎遠だった母と再会し、過去と現在を見つめ直す姿を好演している。脇を固めるのは、西村の母の他界後に生活の面倒を見ることになった叔母を演じる内田春菊、認知症の進む祖父を演じる外波山文明など、実力派キャストら。監督は大西諒。長編初監督となる本作は、若手作家の登竜門でもある田辺・弁慶映画祭、TAMA NEW WAVEでグランプリを含む6冠を獲得。障害や介護、地方の疲弊といった厳しい現実。そこにある人々の生活と葛藤がゆったりとしたテンポの中に生々しく炙り出されていく本作は、映画祭で多くの観客を魅了し、SNSでも大きな話題となった。