さようならCP

さようならCP
82分 / 1972
あらすじ
車椅子から降りたCP者・横田弘が、自室を出て団地の外廊下をイザッて歩き始めた。団地から外に出ると、低い位置で進む横田の目を、まばゆい陽光が射抜く。大通りの横断歩道を四つん這いで渡ってゆく横田。不随意運動する首、四肢を使って、その姿はまるで喘いでいるようだ。信号が赤に変わり、横田の後ろを何台もの車が走りぬけてゆく。「怖かったよ」と告白する横田。その傍らで同じCP者である横塚晃一は、横田の冒険の始まりを撮影していた。カメラを持つその手は不自然に、くねるように曲がっている……。他者の視線のない場所から健全者たちの街頭へ、二人は飛び出した。横田・横塚が所属する「青い芝の会神奈川県連合会」メンバーたちは駅前でマイクを手に、脳性マヒ者の権利を主張する。その活動を支援する募金を投じる主婦・サラリーマン・あどけない子どもたち……。「なぜ募金をしたのですか?」原のインタビューに人々は答える。「私たちは五体満足だから、気の毒だなと思って」「先祖のお墓参りに行ってきた帰りだから」横田の自宅で酒を交わしながら、メンバーたちの赤裸々な性体験が語られる。「一回目は上手くいかなかった」「吉原に行って」「レイプみたいなもんだよね」。横田の乗った電車が駅に到着する。下車しようと戸口に向かい懸命に膝でイザる横田は、ホームへと転落してしまう。横田の自宅。青い芝の会メンバーたちの間で、議論が白熱している。これ以上の撮影は拒否するという横田を、メンバーたちは攻め立てる。そもそもこの映画の撮影自体に反対していた横田の妻の怒りが爆発する。彼女はカメラの向こうの原を罵倒する。新宿西口・地下構内。四肢と首を溺れるように、踊るように揺らしながら、横田はイザってゆく。メガネが落ちる、拾う、イザる。メガネが落ちる、拾う…… 週末で賑わう新宿の歩行者天国。チョークを手にした横田は、健全者の人垣にぐるりを囲まれている。横田は不自由な手でアスファルトに文字を、障害者である自身の“肉体の表現”を、刻み付けるのだった。
解説
「CP(脳性麻痺患者)だけで生きる」そんな理想を掲げ浄土真宗の住職・大仏空(おさらぎあきら)は1964年、<マハラバ村>というコミューンを設立する。「CP者はいかに生きるべきか」自給自足の生活を志しながら同時に村内では、リーダー的存在だった横田弘、横塚晃一たちを中心に激しい議論が交わされていた。横田は妻・淑子との間に子どもが誕生する。健全者として生まれた子どもを閉じた共同体内で育てる。そんな困難にぶつかり、横田一家は村を去ってゆく。横田のいなくなったマハラバ村は、急速に解体・崩壊へと向かっていった。1967年にマハラバ村を訪問していた原は、「青い芝の会神奈川県連合会」で活動していた横田・横塚と再会。「われわれは、本来生まれるべきではない、あってはならない存在なのか?」CP者の横田・横塚らは健全者中心の社会に対し、強く発言・行動する。そのメンバーたちの姿に原、そして自身小児マヒの後遺症で両脚に重度の障害のあるプロデューサーの小林佐智子は、自身の姿を重ねてゆく。彼らの怒りと共に街へと出ることが、私(たち)の表現なのだ!「CP者たちよ。車椅子を棄て、膝でイザって進め!」「健全者中心で作られた街をからだで進み、不自由な肉体で自己を表現せよ!!」
スタッフ
監督:原一男
撮影:原一男
製作:小林佐智子
録音:栗林豊彦
配信期間
2021/01/29 ~
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