全身小説家

全身小説家
156分 / 1994
あらすじ
主宰する<文学伝習所>の生徒が書いた小説を、舌鋒鋭く批判する。その生徒たちや親友の埴谷雄高らと自宅の応接間で酒席を催す。旅回りの芸人に扮し、<津軽海峡冬景色>に乗って舞台でストリップを披露する。文壇バーでピアノの鍵盤を叩き躍る――作家・井上光晴のそんな姿を、映画は点描してゆく。そして伝習所に通う女生徒たちは、頬を紅潮させながら、「先生」とのアバンチュールを仄めかす……。かかりつけ医から勧められ井上は、東大病院外科の門を叩く。診察室でレントゲン写真を指し示しながら医師は、井上がS字結腸ガンであると告知する。それでも井上は文学伝習所の講義や講演で全国各地を回り、野間宏と「部落解放文学賞」の選考に当たる。そして幼少時を過ごしたという佐世保の元炭鉱町・崎戸を訪れるなど忙しい日々を送っている。ふたたび井上は、東大病院で検査を受ける。ガンはさらに進行していた。1/4だけ肝臓を残し、患部を摘出する手術を提案する担当医師。井上は手術を受けることを決める。手術当日、開口された井上の腹からガン細胞に冒された肝臓が、手際よく摘出されてゆく。病後の経過を確認するため、井上光晴の病室を訊ねる医師。井上の腹部を縦に貫く縫合の跡が痛ましい。親友・埴谷雄高、元恋人の瀬戸内寂聴が、病床の井上の見舞いに訪れる。 生前に井上が墨書した島の地図を手に原は、井上の故郷・崎戸に向かう。炭鉱夫に給料が支払われる「受け銭」の日。色鮮やかなチョゴリで身を飾り、鉦や太鼓で踊りながら海辺を練り歩く、韓国人の娼婦たち。その一人が初恋の相手である。あるいは早くに父親を亡くし、極貧の少年時代を過ごした。井上の親戚縁者に取材し、戸籍謄本にまであたる。調査が進むに従ってこれらの井上のことばの真偽、さらに“嘘から出たまこと”の在り処が明らかになってゆく。
解説
原一男と小林佐智子の二人は、神軍平等兵・奥崎謙三に次ぐ強烈な“スーパーヒーロー”を、探し求めていた。そんな時に小林は、作家・井上光晴が開講している伝習所生の鈴木郁子と出逢う。『書かれざる一章』『ガダルカナル戦詩集』『虚構のクレーン』などの作品で知られる井上は埴谷雄高、野間宏らと共に、戦後派の旗手として活躍した作家の一人だ。鈴木からその井上の講演に誘われた原と小林は、新宿紀伊國屋ホールに出かける。よく通る声と話術で、聴衆を捉えて離さない。原と小林は天性のアジテーター・井上光晴に、強く惹かれる。「井上光晴を撮りたい」そんな気持ちが二人の中に芽生える。原は、井上原作の『地の群れ』(70)を映画化していた監督・熊井啓の仲介で、井上を『ゆきゆきて、神軍』の試写に招く。一方、紀伊國屋での講演会以来文学伝習所に通うようになった小林は、井上がガンに冒されている事を知る。原と小林は、井上の自宅を訪ねる。「考えながら撮り、撮りながら考えたい」そう懸命に想いを告げる原に、井上は答える。「(僕の)ストリップくらいなら、撮っていいですよ」
スタッフ
監督:原一男
撮影:原一男
撮影:大津幸四郎(イメージ篇)
製作:小林佐智子
編集:鍋島惇
整音:栗林豊彦
現場録音:栗林豊彦
音楽:関口孝
デザイン:木村威夫(イメージ篇)
キャスト
井上光晴
埴谷雄高
瀬戸内寂聴
野間宏
金久美子(イメージ篇)
配信期間
2021/01/29 ~
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