風間彩人(磯村勇斗)は、亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母、麻美(霧島れいか)の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働いている。彩人の弟・壮平(福山翔大)も同居し、同じく、借金返済と介護を担いながら、父の背を追って始めた総合格闘技の選手として日々練習に明け暮れている。息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人の日向(岸井ゆきの)との小さな幸せを掴みたいと考えている。しかし、彩人の親友の大和(染谷将太)の結婚を祝う、つつましくも幸せな宴会の夜、彼らのささやかな日常は、思いもよらない暴力によって奪われてしまう。
ヴィクトリアは刑事事件専門の30代のバツイチ弁護士で、二人の娘の子育てに奮闘しているシングルマザー。家の中は猥雑で、ベビーシッターが居着かない。彼女は洞察力があり皮肉屋だが現在、感情的に崩壊寸前の状態。精神分析のセラピーを受けたり、占い師に運勢を見てもらっている。ある日友人の結婚式で、ヴィクトリアは古い友人のヴァンサンと以前担当した薬物事件の依頼人サムに出会う。その翌日、ヴァンサンが恋人の殺害未遂容疑で逮捕される。無実を証明できるのは被害者の飼い犬ただ一匹。ヴァンサンに頼まれて仕方なく弁護を引き受けたヴィクトリアだったが、その一方で、元夫のSNS上での迷惑行為に対応したり、なぜかサムを住込みのベビーシッター兼助手として雇うことになったり、彼女の人生に数々の波乱が巻き起こる…!
モデルになるため日本に来たフィリピン人のエミリアは、フォトグラファーの未来(ミキ)と出会う。異国のふたりは互いにないものに惹かれ、求め合う。未来はその瞬間を逃さないように写真を撮り続ける。しかしそれはどこか脆く儚く、季節が流れるように突然の別れが訪れる。そして物語は海を越えフィリピンへ―
匂いに敏感なひのき(17)は、亡くなった父が残した全国のミニシアターで観た映画の感想が書かれたノートを見つける。ある映画館だけ場所がわからず、匂いのメモや、感想だけが書かれていた。コーヒー豆の焙煎店を営んでいた父が残したコーヒー豆を配りながら、父の巡った映画館へと旅にでるひのき。薄れていく父の匂いと、場所のわからない映画館を探しながら、ひのきは少し、大人になっていく。
年老いた父ジェラードと農場を営む息子のドナン。年頃となった彼は性に興味を持つものの、厳しいしつけを強いる父親の目を盗んでは農場の片隅で、一人慰めることで欲求を発散するしかなかった。しかし、父親が急死したことでドナンの鬱屈した日々は終わりを告げる。葬儀が終わり一息ついたドナンは逸る心を抑えきれず、アダルトサイトからコートニーという娼婦にメッセージを送信。地元にコートニーを呼び出したドナンは、女性に慣れていないことを彼女に見抜かれ、流されるままに一夜を過ごす。新しい生活を始めたドナンだったが、コートニーとの情事が頭の中を支配していく。我慢できなくなったドナンはコートニーに電話をかけるが…。
クリスマスの夜、刑事ボブ・ハイタワーの元妻とその夫が惨殺され、愛娘ギャビが忽然と姿を消した。その背後には、悪魔のようなカルト集団「左手の小径」の影が蠢(うごめ)いていた。絶望と怒りに苛まれたボブは、かつてカルトに誘拐され生還を果たした女性、ケース・ハーディンと出会う。深い傷を負った彼女は、ボブの苦悩と覚悟に心を動かされ、再びその悪夢の世界へ戻ることを決意する。
舞台はスイスの山中に建つ古いホテル。ここの持ち主だった祖父母に育てられたヴァランタンが、ホテルが取り壊されると聞いて記憶をたよりにやってくる。今は無人と化したホテルの中を歩きながら、彼は少年時代の懐かしい記憶の数々を思う。あこがれの“世界一の美女”や女性歌手とピアノ弾き、魔術師、思い出話がいつも面白かった祖母。少年ヴァランタンにとって大人たちの世界は素晴らしく魅力的なものだった。過去と現在が交錯するホテルで、シュミットがつむぎ出す夢幻的な舞台がいま始まる。
17世紀のスイス、グリソン州独立の最大の英雄であるイェナチュは、宿敵ポンペウスを殺し、権力を手中に入れた。しかし、数年後には“謎の人物”によってイェナチュもまた殺された──。現代の記者、クリストフはイェナチュの墓の発掘を指揮した人類学者トブラーとのインタビューの仕事を引き受けた。トブラーは一風変わった人物で、イェナチュに取り憑かれている。やがて、ポンペウスの暗殺のあった城に、末裔の老嬢プランタを訪ねた帰路、クリストフは不思議なことにイェナチュに出会う。既視体験(ルビ:デ ジャ ヴュ)に悩まされるクリストフは謎を究明するべくもう一度城に向かうも、何とそこでポンペウス暗殺の現場を目撃。そして、ポンペウスの美しい娘ルクレツィアの姿を発見し…。
コロナ禍で仕事を失った初老の俳優・木村は、一念発起して自作映画を作り始める。ところが、肝心のシーンで主人公に三ヶ月の重症を負わせてしまう。マネージャーからは、損害賠償を匂わされ、最後の頼みの生活補助金も却下の通知が届く。そこに娘のアサミからは厄介な心配事まで持ちかけられる。途方に暮れる木村は、初めて中学の同窓会に出席してみる…そこで再会したかつての学校のマドンナ・雪乃は、木村の映画に出資すると言い出す。東京に戻った木村はスタッフを集め…そしてアサミにも、一つの決意を持ちかけるのだが…。
雪が積もる田舎街に暮らす小学6年生のタクヤ(越山敬達)は、すこし吃音がある。タクヤが通う学校の男子は、夏は野球、冬はアイスホッケーの練習にいそがしい。ある日、苦手なアイスホッケーでケガをしたタクヤは、フィギュアスケートの練習をする少女・さくら(中西希亜良)と出会う。「月の光」に合わせ氷の上を滑るさくらの姿に、心を奪われてしまうタクヤ。一方、コーチ荒川(池松壮亮)のもと、熱心に練習をするさくらは、指導する荒川の目をまっすぐに見ることができない。コーチが元フュギュアスケート男子の選手だったことを友達づてに知る。荒川は、選手の夢を諦め東京から恋人・五十嵐(若葉竜也)の住む街に越してきた。さくらの練習をみていたある日、リンクの端でアイスホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て、何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤのさくらへの想いに気づき、恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習につきあうことに。しばらくして荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることになり……。
バイオ企業の研究室に務めるシングルマザーのアリスは、人を幸せにする、真紅の美しい花の開発に成功する。アリスは、自らの息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付けるが、開発されたばかりのその花は、成長するにつれ人々にある変化をもたらす。アリスはその原因が“リトル・ジョー”の花粉の影響かもしれないと疑い始めるが……。
経済破綻状態にあった1970年代のイギリス。市民が抱く不安と不満は、第二次大戦後に増加した移民たちへ転嫁されていった。街は暴力であふれかえり、黒人やアジア人が襲われた。そんな中、レッド・ソーンダズを中心に数人の仲間たちで発足された“ロック・アゲインスト・レイシズム” 略称RARは、差別の撤廃を主張し、雑誌を自費出版して抗議活動を始め、やがてザ・クラッシュをはじめ、トム・ロビンソン、スティール・パルス等の音楽と結びつき、支持されていく。1978年4月30日にはRARが決行した約10万人による大規模なデモ行進と音楽フェスが開催された。わずかな若者たちから始まり、時代を動かす程の運動へと拡がった若者たちの闘いに、当時の貴重なアーカイブと本人たちへのインタビュー、彼らに賛同したアーティストたちの圧巻のパフォーマンスで迫る。
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。
1951年ベトナム、サイゴン。浪費家の家長の家に雇われ、田舎から奉公にやってきたムイは10歳の少女。家には働き者で優しい母と3人の甘やかされた息子たち、孫娘を亡くしてから引きこもっている祖母がいた。ムイは、年老いた先輩奉公人のそばで働きながら、料理と掃除を習い一家の雑事を懸命にこなしていく。ある晩、家長が一家の蓄えを持って消えてしまい、家族は苦境に陥る。そしてムイは、長男が連れてきた友人クェンに出会い、淡い恋心を抱くようになる・・・。10年後、美しく成長したムイは、音楽家になったクェンの家に奉公に出る。恋人がいながら、クェンはムイの献身的愛情と花に対する嗜好に気付きはじめて・・・。
十日後に結婚式を控えた直子は、故郷の秋田に帰省した昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。新しい生活のため片づけていた荷物の中から直子が取り出した1冊のアルバム。そこには一糸纏わぬふたりの姿が、モノクロームの写真に映し出されていた。蘇ってくるのは、ただ欲望のままに生きていた青春の日々。「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」直子の婚約者が戻るまでの五日間。身体に刻まれた快楽の記憶と葛藤の果てに、ふたりが辿り着いた先は―。
赤い旅団のメンバーであるアドリアーナ・ファランダ(ダニエーラ・マッラ)は、プロレタリア革命は成功すると強く信じ、愛する娘と離れ、運動に身を投じている。1977年に起きた大学の経済学部長襲撃事件にも実行犯として関与し、誘拐前のモーロを尾行するなど積極的に活動するも、モーロ誘拐の肝となる活動には参加させてもらえないことに不安も覚えていた。一方で赤い旅団は、誘拐に成功したことで入団を希望する人間が増え、活動は順調にいっているかのように見えた。しかし、メンバー間で、モーロの処遇をどうするかで意見が激しく紛糾していき、アドリアーナも追い込まれていく。モーロ誘拐の事件現場に急行した、妻エレオノーラ・モーロ(マルゲリータ・ブイ)を待っていたのは、銃弾が多数撃ち込まれた、見るも無残な夫の車と、血を流して倒れている護衛の姿、そしておびただしい数のマスコミだった。家を訪れる議員たちは、彼女にもっともらしく慰めの言葉を掛けていき、形ばかりの抱擁を求めてくる。子供たちと共に家に籠り続けていたある日、モーロからの手紙が届く。しかし、ザッカニーニをはじめ、政府は赤い旅団との交渉に応じず、エレオノーラは憤慨する。4月30日、赤い旅団から電話がかかり、すぐさま大統領に連絡をとるが、またも真剣に取り合ってもらえず、失望し涙するエレオノーラ。そして、あるシスターからモーロを見たという証言を聞き、藁にも縋る思いで現場に向かうのだが…。5月8日、目隠しをされた神父が、赤い旅団のアジトとなっている暗いビルの中へと入っていく。さらに隠し部屋に入っていくと、そこにはアルド・モーロの姿があった。約55日ぶりに赤い旅団以外の人間と会ったモーロは、「ここで初めて人の顔を見ます」と神父に語りかけ、強く手を握り、告解を始めるのだった。そして翌5月9日、モーロは目隠しをされ車のトランクに乗せられる。コッシーガのもとには、カエターニ通りで不審な車両が発見された、と緊急無線が入る。
1978年、イタリア。戦後長らく政権を握っているキリスト教民主党の党首アルド・モーロ(ファブリツィオ・ジフーニ)は、共産党との連立政権を実現させるべく奔走していた。これは冷戦下で西側と共産主義が手を取ることを意味していたために、国内外問わず、激しい反発を受ける。無論、党内のモーロと対立する右派系の派閥からの批判も非常に強く、モーロと旧知の仲であるバチカンの教皇パウロ6世(トニ・セルヴィッロ)にも苦言を呈される。それでもモーロは交渉を続け、連立政権の話はまとまった。そんな最中の3月16日、アンドレオッティ内閣(ファブリツィオ・コントリ)の信任投票のため、議事堂に車で向かうモーロは、道中で、極左テロ組織「赤い旅団」に襲撃され、そのまま誘拐されてしまうのだった。モーロ襲撃・誘拐が判明してすぐに、議会では緊急会議が開かれる。指揮を執るのは、内務大臣フランチェスコ・コッシーガ(ファウスト・ルッソ・アレジ)。彼はモーロを父と慕い、モーロ救出に全力を注ぐことを決意、辞表まで準備する。ほどなくして、赤い旅団からモーロの写真とともに犯行声明が届く。すぐさま、ローマに巨大な包囲網が張られ、徹底捜索が敢行。コッシーガの号令と共に、省内に大規模な通話傍受センターが開設され、日夜、イタリア中の通話が監視されることに。しかし大きな手掛かりは掴めず、コッシーガも精神的に参り、疲弊していく。そして誘拐から14日目の3月29日、旅団に囚われているモーロから手紙が届くのだった。それは事実上の裏取引を持ち掛ける内容で……。バチカンの教皇パウロ6世も、モーロ誘拐に衝撃を受け、救出の策を練っていた。信者に向かって、アルド・モーロのために祈ろうと強く呼びかけ、モーロ解放のために身代金として200億リラを用意する。「アルドは大事な友である」と、司祭を通してアンドレオッティ首相に掛け合うが、首相から話を聞いた将軍たちは「血が流れる」と口々に大反対。一方で各党の党首たちは、概ね、賛成を表明。政府内の足並みは揃わず、また肝心の身代金を渡そうとしていた相手が、どうやら詐欺師であることが判明する。パウロ6世のモーロ救出構想は振り出しに戻り、教皇は、赤い旅団のメンバーに直接語りかけることにする。
人類が死に絶えた町で、自由な人生を楽しんでいた男デル。そんな静かな日常は突然、謎の女子グレースの出現で打ち砕かれる。生存者と出会えて歓喜する彼女はデルの世界に介入しようとし、状況を飲み込めないデルは彼女を拒絶する。グレースはどこから来て、なぜ生きていたのか.....。
過去のある男レッドは、愛する女性マンディと人里離れた場所で静かに暮していた。しかし、マンディに固執する狂気の集団によって、彼女は炎につつまれレッドの目の前で惨殺される。怒り狂ったレッドは、オリジナルの武器を携え復讐に向かう。しかし、彼の前には、得体のしれない姿をしたバイク軍団が立ちはだかった-。
東京、丸子亮平は勤務先の会議室へコーヒーを届けに来た泉谷朝子と出会う。ぎこちない態度をとる朝子に惹かれていく亮平。真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながら朝子も惹かれていく。しかし、朝子には亮平に告げられない秘密があった。亮平は、2年前に朝子が大阪に住んでいた時、運命的な恋に落ちた恋人・鳥居麦に顔がそっくりだったのだ――。5年後、亮平と朝子は共に暮らし、亮平の会社の同僚・串橋や、朝子とルームシェアをしていたマヤと時々食事を4人で摂るなど、平穏だけど満たされた日々を過ごしていた。ある日、亮平と朝子は出掛けた先で大阪時代の朝子の友人・春代と出会う。7年ぶりの再会。2年前に別れも告げずに麦の行方が分からなくなって以来、大阪で親しかった春代も、麦の遠縁だった岡崎とも疎遠になっていた。その麦が、現在はモデルとなって注目されていることを朝子は知る。亮平との穏やかな生活を過ごしていた朝子に、麦の行方を知ることは小さなショックを与えた。一緒にいるといつも不安で、でも好きにならずにいられなかった麦との時間。ささやかだけれど、いつも温かく包み、安心を与えてくれる亮平との時間。朝子の中で気持ちの整理はついていたはずだった……。
医大生のミンウ(カン・ソグ)と音大生ダヘ(イ・ミスク))は、ミヌの先輩ヒョンテ(アン・ソンギ)の仲介で互いに愛し合うようになったが、ミヌは病気の父を守るために傷害事件を起こし大学を除籍処分となる。それ以後、ミヌの身辺には次々と不幸が訪れ、ミヌは自分の出生の秘密を探ろうとして米軍相手のバーを経営する叔母のヨンスク(キム・ヨンエ)に会いに行き、そこで米軍基地の歓楽街の悪の世界に引き込まれていく。
悪ガキ3人組“不死身のワニ団”、アリス、ヘイゼル、ジョディは大の仲良し。ある日、ゲームで遊ぶ代わりとして、ママの大好きなブルーベリーパイを手に入れに行くが、必要な卵を謎の男に横取りされる。奪い返すために男を追いかけた3人は、魔女率いる謎の集団“魔法の剣一味”に遭遇し、怪しい企みに巻き込まれてしまう。森で出会った、魔女の娘ペタルを仲間に、悪い大人に立ち向かう4人…果たしてこどもたちの運命は?
ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのように男たちのファンタジーの対象である女性、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンのジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。アニエスはまるで自身が画家でもあるかのように、ジェーンを名画の中に息づかせることも忘れない。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しく、危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力を余す事なく切り取った、アニエスによる私的な肖像画になっている。
娘(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を持っている。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。
サカイヒデキは東京の大手食品商社に勤めるサラリーマン。さまざまな食のブランドの M&A を進めることが主な仕事で、プライベートでは上司である副社長のケイコと婚約している。会社が米国モンタナ州に所有する経営不振の牧場を収益化するため、希少価値の高い和牛に切り替えることを提案。和牛畜産業の専門家であるワダを連れてモンタナに向かう。空と大地がどこまでも続くモンタナでは東京の常識は通じず、ヒデキはすぐにトラブルに見舞われる。ワダが怪我で入院し、一人になったヒデキは場違いなスーツ姿で牧場主のペグに和牛の事業計画をプレゼンするが、邪険に扱われるばかり。そんな中、ヒデキはハビエルが副業として牧場の片隅で密かにキヌアを栽培していることを知る。おおらかで地に足のついた生活を楽しむハビエルと交流するうち、土地の魅力に気づき始めたヒデキは、スーツからカウボーイの格好に着替え、牧場の仕事を積極的に手伝うように。大規模な牛追いにも参加し、牧場の労働者たちと打ち解けていく中で、自身の効率一辺倒の働き方を見つめ直していく。やがてヒデキは、牧場再建の新たなプランを考えはじめるのが……。
1970年代半ば、韓国の漁村クンチョン。海が化学工場の廃棄物で汚され、地元の海女さんチームが失職の危機に直面する。リーダーのジンスクは仲間の生活を守るため、海底から密輸品を引き上げる仕事を請け負うことに。ところが作業中に税関の摘発に遭い、ジンスクは刑務所送りとなり、彼女の親友チュンジャだけが現場から逃亡した。その2年後、ソウルからクンチョンに舞い戻ってきたチュンジャは、出所したジンスクに新たな密輸のもうけ話を持ちかけるが、ジンスクはチュンジャへの不信感を拭えない。密輸王クォン、チンピラのドリ、税関のジャンチュンの思惑が絡むなか、苦境に陥った海女さんチームは人生の再起を懸けた大勝負に身を投じていくのだった......。
巫堂ファリム(キム・ゴウン)と弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から、桁違いの報酬で依頼を受ける。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)も合流する。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行うが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていた…。
1941年の春、アムステルダムに住む両親の元を離れ、佐賀県唐津に暮らす叔母(常盤貴子)の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦(窪塚俊介)の新学期は、アポロ神のように雄々しい鵜飼(満島真之介)、虚無僧のような吉良(長塚圭史)、お調子者の阿蘇(柄本時生)ら学友を得て“勇気を試す冒険”に興じる日々。肺病を患う従妹の美那(矢作穂香)に恋心を抱きながらも、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)と“不良”なる青春を謳歌している。しかし、我が「生」を自分の意志で生きようとする彼らの純粋で自由な荒ぶる青春のときは儚く、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。「殺されないぞ、戦争なんかに!」…俊彦はひとり、仲間たちの間を浮き草のように漂いながら、自らの魂に火をつけようとするが…。
1997年、中国返還を目前に控えた香港。母と二人で低所得者用アパートに住む少年チャウは、弟分のロンを引き連れ借金の取り立ての手伝いをしている。ある日、チャウは同じような境遇の少女ペンと出会い恋をする。が、彼女は重い腎臓病に冒されていた。やがて彼女の身を守るため、生まれて初めて銃を手にするが……。
心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。スティーブンには、もう一人、時どき会っている少年マーティンがいた。マーティンの父はすでに亡くなっており、スティーブンは彼に腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。しかし、マーティンを家に招き入れ家族に紹介したときから、奇妙なことが起こり始める。子供たちは突然歩けなくなり、這って移動するようになる。家族に一体何が起こったのか?そしてスティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られる…。
少年ジュリアンは夏の別荘で出会った従姉妹のジュリアに恋をする。しかしジュリアはそっけない。開放感に満ち溢れた真夏の避暑地ー抑えきれないジュリアンの性の欲求は、別荘の使用人マチルドらによって満たされていく。 一方、ジュリアも次第にジュリアンの事が気になっていく…。思春期の揺れ動く性を、大胆に美しく描いた幻の問題作。
17歳のユウは、いつも川辺でギターを弾いている同級生のヨースケに秘かな想いを寄せいていた。ヨースケが同じところばかり弾いていた為、いつのまにかユウもそのフレーズを覚えてしまった。しかし素直に想いを伝えられないユウ。一方ヨースケは、事故で大切な人を亡くしたユウの姉のことが気になっていた。やがてある哀しい出来事がそんなユウとヨースケを引き離す。それから17年、34歳のヨースケとユウは、東京で偶然再会するのだが・・・。
春野家の家族はそれぞれ心にモヤモヤとした悩みを抱えていた。長男ハジメは片思い、妹の幸子はときどき巨大化した自分を見てしまうことにとまどっていた。母親の美子は仕事復帰に悩みを抱え、父親は妻に取り残されたような感じを抱く。そんな春野家に美子の弟アヤノが帰省。彼はある決心をして帰ってきたのだが・・・。
台北に住む17歳の女子高生バイ(ルゥルゥ)は、離婚した母と祖母との3人暮らし。学園生活を明るく満喫していたが、最近、親友ウエンと男友達イエとの関係に心を痛めていた。そんなある日、母のワン(アリッサ)が交通事故で意識不明の重体に。悲しみに暮れる中、バイは母のパソコンから、偶然、初恋の相手リン(リッチー)に宛てた未送信メールを発見。そこには、自分と同じ17歳だったころの思い出が切々と綴られていた。遠い日の母の青春に思いを馳せるバイは、彼女に代わって「会いたい」とリンにメールを送る…。
ホテル勤務に嫌気がさしたアナは現実から逃避するように、とある浜辺にたどり着いていた。そこでは潜水艦に住み着いたマーシャをはじめとした少女兵士たちが生活をしており、アナもまたそのグループの一員となってゆく。少女たちにはミッションがあり、それは無線を打診することで戦場の兵士たちを巧みにおびき寄せ、死に至らしめるというものだった――。
寄宿学校では学期末の数日を、女生徒達がもどかしく過ごしていた。その中にビリティス(パティ・ダーバンヴィル)という美しき少女もいる。そして、夏休み。彼女は、父の女友達の娘メリサ(モナ・クリステンセン)とその夫ピエール(ジル・コーレル)の住む南フランスはプロバンス地方で、その夏を過ごすことになった。サントロペ近くの高台にあるメリサの家は、牧場のある12世紀風の豪邸。そしてピエールは馬の調教師。だがビリティスは生理的に彼を好きになれない。それにくらべメリサの高貴なエレガントな美しさ。ビリティスはうっとりとした。だが、反面、メリサとピエールの夜は、サド的な夫と妻いう異常な関係。ある日、メリサとビリティスは海へ行く。そして、そこでビリティスは好意を寄せていた写真家ルカに再会。彼はアルバイトに海辺で写真店を開いていた。ルカの事も気になるビリティスだが、大人の女性であるメリサの美しさに惹かれていく・・・。
ナポレオン政権下の1850年代のフランスの田舎の村。働き盛りの男たちはみなレジスタンス活動に明け暮れ、終いには投獄されてしまう。そして、女だけが残された。小麦を収穫してパンを作り、果物を摘み、牛から乳を搾る・・・女だけで平和な日々は続いた。しかし女たちは知っていた。このままでは村に「未来」がないことを。女たちは子孫を残すために、もし男がやって来たら、みなで共有しよう―と、秘密の約束をかわす。そこへ、ひとりの若い男がやって来た。若く健康なその男の素性はまったくわからないものの、男を村に引き留めるために、村1番の聡明な美しい女が世話係としてつくことに。美しい大自然の中、衣食住を共にしていくうちに、その女の生命力あふれるたくましさ、美しさに魅了された男は、密かに女と関係を持つ―。しかしその事実はすぐ皆が知ることとなる―。
1974年、フランコ政権末期のスペイン。バルセロナを追われた料理人フェルナンドとアルベルトの兄弟は、友人フランソワの伝手でサルバドール・ダリの住んでいる海辺の街カダケスに辿り着く。彼らを迎えたのは魅力的な海洋生物学者のロラ、そしてその父―ダリを崇拝する、レストラン「シュルレアル」のオーナーであるジュールズだった。「いつかダリに当店でディナーを」をスローガンに、ありとあらゆる無謀な試みに奔走しながら、情熱を謳い続けるジュールズ。やがてそのカオスはフェルナンドの料理に新たな風をもたらし、世界規模の革命的シェフの誕生を呼ぶことになる。
人里離れた村で暮らす姉のシャロータと妹のタマラは母親の虐待から逃げ出すことを決意したが逃げ込んだ森の中で恐ろしい事故に遭ってしまう。事故から20年、消息を絶っていたシャロータがある出来事をきっかけに村に戻るも受け入れる者はいなかった――。村が夏至祭に近づく中、彼女が過去のトラウマと対峙するほどに人々は疑念を募らせてゆくが……。
1960年代、湘南の夏。12歳のなぎさは、4年前に漁師の父を亡くし、居酒屋を営む母と二人で暮らしている。なぎさにとって、その年の夏休みは生涯忘れられない夏休みとなった。ポータブル・レコード・プレイヤーを手に入れる為、伯母が経営する海の家でバイトを始めたなぎさ。従姉の不良娘・麗子の影響を受けてパーマをあてたり、アメ車を乗り回す麗子のイカした彼氏とダンパに出かけたり、東京から帰省してきたリッチな美少女・真美に意地悪をされたりと毎日様々なことが起きる。ある日、お気に入りの岩場で泳ぎの練習をしていると、見知らぬ男の子に出会う。東京からやってきた病弱な少年・洋は砂浜で漂着物を収集しているという。なぎさは泳げない洋に泳ぎを教えることになり、親しくなっていく。
高校生の初子(中嶋朋子)はある日、仔犬の鳴き声に呼び寄せられた廃工場で、落下してきた鉄骨で頭を打ち、幽霊になってしまう・・・が、それは初子の勘違いで、実は鉄骨と一緒に落下してきた弁当箱に頭をぶつけただけだった。彼女は幽霊の先輩・弦之丞(柳葉敏郎)に“早く体に戻って生き返りなさい”と説得されるが、そんな言葉などどこ吹く風、人間界へと遊びに出かけてしまう。生き返る前に幽霊という特権的な立場を楽しもうと、初子は憧れの委員長・津田沼君の部屋に忍び込んだり、自分の葬式の準備風景をのぞいたり・・・。やがて彼女は、隣のクラスの変人・夏山が幽霊と話す能力を持ち合わせていることを知る。
ある晴れたバレンタインの日に、彼女たちは姿を消した―― 1900年、2月14日。セイント・バレンタイン・デイ、寄宿制女子学校アップルヤード・カレッジの生徒が、二人の教師とともに岩山ハンギング・ロックに出かけた。規律正しい生活を送ることを余儀なくされる生徒たちにとってこのピクニックは束の間の息抜きとなり、生徒皆が待ち望んでいたものだった。岩山では、磁力の影響からか教師たちの時計が12時ちょうどで止まってしまう不思議な現象が起こる。マリオン、ミランダ、アーマ、イディスの4人は、岩の数値を調べると言い岩山へ登り始めるが、イディスは途中で怖くなり悲鳴を上げて逃げ帰る。その後、岩に登った3人と教師マクロウが、忽然と姿を消してしまう…。
出会ってすぐ恋に落ちたアーサーとヴィダ。片時も離れることができない2人は同棲をスタートする。だが、ウェールズの労働者階級の家庭に育ち自転車配達員をしているアーサーと、裕福なユダヤ人の家庭に育ちチェロ奏者をしているヴィダは少しずつ価値観の違いを感じ始める。特にそれぞれの実家を訪ね、両親や兄弟姉妹に会った彼らは生活習慣など些細なことでギャップを抱くことに。だが互いに夢中な2人は婚約パーティーを開催。その最中、アーサーの父が心臓発作を起こして倒れてしまう。ウェールズに戻ったものの、結局父は亡くなってしまい、ヴィダの母もホテルで不倫中に突然死。互いの親を失ったアーサーとヴィダはその悲しみからさらにギクシャクしていく。
ハンナとリブは親友同士。バックパッカーとして訪れたオーストラリアでお金に困り、荒れ果てた田舎にある古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在してワーキング・ホリデーをすることになった。単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちに待ち受けていた洗礼は、炭鉱で働く荒々しい男たちが店に来て起こすハラスメントや女性差別の連続だった……。楽観的なリブは店に溶け込んでいくが、潔癖なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、2人の友情は徐々に崩壊していく。嫌な上司や泥酔する男たちなど身の毛のよだつような悪夢を描くという、女性側の視線に立って作られた新しいタイプのフェミニスト・スリラー。
ペク・ホビンはアメリカという巨大な国で富と機会を夢見る野望の男だ。彼は永住権を得るためにジェーンと契約結婚をする。ジェーンは切膜して利己化された米国という文明社会で孤独に疎外された女性だ。ペク・ホビンと同居人で結婚生活をしている間、ジェーンはホビンに彼女の人生の中で最後に訪れた光と同じ愛を感じる。移民国職員の厳しいインタビュー危機を乗り越え、ホビンは米国市民の資格を得る。結婚契約が終わる頃、ホビンの欲望とジェーンの愛がぶつかって対立する。ジェーンは契約に違反してホビンに愛を訴えるが、ホビンは本国の婦人と子供に対する一念だけだ。結局ホビンの隠された秘密が明らかになり、狂的な乱暴性が爆発ジェーンの人間性を襲ってしまう。ついに二人は離婚旅行の道に上がり、死のような砂漠の上に許した人間の欲望と死の結末が見られる。
陸上部に所属するシーヘルは、チャンピオンシップ大会に向けて結成された強化チームに選ばれ、同じく選手として選ばれた自由快活で爽やかな少年マークと出会う。ある日、練習の後、チームメイトと泳ぎに出かけ二人きりになったシーヘルとマークとはお互いに引き寄せられるようキスをしてしまう。たった1度の15歳の眩しい夏、美しい時の中で少年は本当の恋を知る・・・
南イタリア、ナポリの沖合いに浮かぶ小さな緑の島。貧しい漁師の父親と二人で暮らすマリオ(マッシモ・トロイージ)は、チリから亡命してきた高名な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)に、世界中から送られてくる大量の手紙を届ける郵便配達人の仕事を得る。丘の上に佇むネルーダの住まいまで自転車で通うのは大変だったが、マリオは女性からのファンレターが大半の“愛の詩人”に興味を抱いていた。温かみがありながらどこか厳しく、圧倒的な存在感を放ちながらも愛妻と甘い声で「アモール」と呼び合うネルーダに、マリオはたちまち惹きつけられる。ネルーダの詩集を取り寄せたマリオは、ネルーダの詩集を熱心に読みこむようになる。そして、ネルーダに感想を伝え、詩の内容について質問する。ネルーダは隠喩についてマリオに教えながらも、意味を理解することより感じることが大切だと説く。やがてマリオは自分も詩を書きたいと願い、自らの生き方や社会について考えるようになり、ネルーダと対話を重ねていく。ネルーダは、マリオの何ものにも染まらない、まっさらな感性に度々驚かされるのだった。そんな中、港のバーで働くベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に一目で恋したマリオは、ネルーダに助けを頼む。ネルーダはマリオの強引な態度に呆れながらもどこか憎めず、一肌脱ぐことになった。マリオの書いた詩の隠喩のお蔭でベアトリーチェはマリオに興味を持つ。二人の恋は燃え上がり、ネルーダの後押しもあって結婚が決まる。村中の人々がお祝いに集まった結婚式の日、ネルーダのもとにチリでの逮捕命令が取り消されたという報せが届く。ネルーダはチリへと帰国し、失業したマリオはベアトリーチェの店を手伝いながら、ネルーダからの手紙を待ち続けていた。だが、ようやく届いたのは、ネルーダの秘書からの荷物を送ってほしいという事務的な手紙だった。失望を胸にネルーダの家を訪れたマリオは、ネルーダが録音したテープを聴き直すうちに、どんなに多くの素敵なことをネルーダが残していってくれたかに気づく。5年後、島を再訪したネルーダとマチルデ。再会の喜びに胸を躍らせてベアトリーチェの店に立ち寄るが・・・。
ある日、ジファンのもとに差出人不明の一通の手紙が届く。その封筒の中には“逢いたい”と一言だけ記された1枚の写真が入っていた。ジファンの中で懐かしい思い出が蘇る――。5年前の夏、ジファンはバイト先の喫茶店で親友同士の女の子スインとギョンヒと出会った。3人は友だちとして付き合い始め、かけがえのない日々を過ごすようになる。しかし、スインとギョンヒは突然ジファンの前から姿を消してしまったのだ…
昼は冴えない銀行員、夜はプロレスラーという二重生活を送る男の姿をユーモラスかつ哀愁たっぷりに描く。デホは要領が悪く情けない男。職場ではいつも厳しい上司にヘッドロックをかけられていた。そんなある晩、デホはさびれたプロレス館で選手募集のポスターを目にする。衝動的に入門を申し込んだデホは、以来、厳しいトレーニングに励み、上司のヘッドロックもかわせるようになり、ついに緊張のデビュー戦を迎えた……。
バレエカンパニーの研究生で27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、大学在籍時の親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とニューヨークのブルックリンで共同生活をしていた。ある日、彼女は恋人に一緒に暮らそうと誘われるが断り、その後別れることに。ところがソフィーがアパートの契約更新を行わず、引っ越しすると言ったことで……。
タームは出家した兄のティーに会うために旅に出て、ドンシンタム島の寺院にたどり着いた。タームは、ティーが前の僧院長を殺して逃亡したという噂を聞くが、ティーが人を殺すことができるとは思えない。この村でタームは身寄りが無く、寺に住んでいる純粋な青年、テと知り合った。この村では“ポープー”という人の形をした像が信仰されていた。またこの島では人が死ぬと遺骨の一部を入れ、土の像(フンパヨン)を作って拝む習慣がある。ジェットはフンパヨンの作り手だ。タームは村人たちの信仰に疑問を抱き、村を守る霊的な存在というよりも、盲目的な迷信だと考える。ある夜、タームは怒りに任せて“ポープー”への供え物を壊してしまった。その後、恐ろしい出来事が次々と起こり、村は恐怖に包まれる。女性が行方不明になり、死人が続出し村人たちは怒りに燃える。闇夜に人の形をした“フンパヨン”像が森の中を彷徨う。人形師のジェットは呪文を唱えて、皆の身を守ろうとするのだった。
仏・マルセイユの自宅で回想録を執筆しているガルー。かつて外国人部隊所属の上級曹長だった彼は、アフリカのジブチに駐留していた。暑く乾いた土地で過ごすなか、いつしかガルーは上官であるフォレスティエに憧れともつかぬ思いを抱いていく。そこへ新兵のサンタンが部隊へやってくる。サンタンはその社交的な性格でたちまち人気者となり、ガルーは彼に対して嫉妬と羨望の入り混じった感情を募らせ、やがて彼を破滅させたいと願うように。ある時、部隊内のトラブルの原因を作ったサンタンに、遠方から一人で歩いて帰隊するように命じたガルーだったが、サンタンが途中で行方不明となる。ガルーはその責任を負わされ、本国へ送還されたうえで軍法会議にかけられてしまう…。
1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編「くじ」が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイ(エリザベス・モス)はスランプから抜け出せずにいた。小説の着想の元になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女ポーラ・ジーン・ウェルデンが突如として消息を絶った未解決の失踪事件。同じくベニントン大学教授である夫のスタンリー(マイケル・スタールバーグ)は、引きこもってばかりいるシャーリイを執筆へ向かわせようとするがうまくいかない。ある日、そんな二人のもとへ一組の夫妻が居候としてやってくる。文学部でスタンリーの助手として職を得たフレッド(ローガン・ラーマン)は、妻のローズ(オデッサ・ヤング)とともにバーモント州の学園都市へ移住を計画していた。新居が見つかるまでの間、無償で部屋と食事を提供する代わりに家事や妻の世話をしてほしい―ースタンリーに半ば強引に言いくるめられた夫妻はシャーリイとスタンリーと共同生活を送ることに。他人が家に上がり込むことを毛嫌いしていたシャーリイだったが、自分の悪態にも挫けずに世話を焼こうとするローズを通じて、次第に執筆のインスピレーションを得るようになる。一方、ローズはシャーリイのカリスマ性に魅入られ、いつしか二人の間には奇妙な絆が芽生えていく。しかし、この風変わりな家に深入りしてしまった若々しい夫妻は、やがて自分たちの愛の限界を試されることになるのだった……。
人付き合いが苦手で不器用なフランは、会社と自宅を往復するだけの静かで平凡な日々を送っている。友達も恋人もおらず、唯一の楽しみといえば空想にふけること。それもちょっと変わった幻想的な“死”の空想。そんな彼女の生活は、フレンドリーな新しい同僚ロバートとのささやかな交流をきっかけに、ゆっくりときらめき始める。順調にデートを重ねる二人だが、フランの心の足かせは外れないままで――。
バブル期の到来を迎えた台湾。その出会いが、図らずも少年にある選択を迫ることになる……台北郊外に父と二人で暮らすリャオジエ。コツコツと倹約しながら、いつか、自分たちの家と店を手に入れることを夢見ている。ある日、リャオジエは“老獪なキツネ”と呼ばれる地主・シャと出会う。優しくて誠実な父とは真逆で、生き抜くためには他人なんか関係ないと言い放つシャ。バブルでどんどん不動産の価格が高騰し、父子の夢が遠のいていくのを目の当たりにして、リャオジエの心は揺らぎ始める。図らずも、人生の選択を迫られたリャオジエが選び取った道とは……!?
キーファーは初期の作品で、ナチスの第三帝国に異論を唱え、近い過去に起こったことに対する沈黙を破る方法として、戦後ドイツのアイデンティティーと向き合った。ナチス式の敬礼を揶揄したり、国民社会主義時代の建築物やゲルマン民族に対して英雄伝説を視覚的に引用また脱構築したりすることで、自らのアイデンティティーと文化を探求した。1971年からドイツのオーデンヴァルトで活動。1992年までは、リード線、藁、植物、生地、木版画など、この時期を通じて彼が作品に導入した素材や技法や、ワーグナーのニーベルングの指輪、パウル・ツェランやインゲボルク・バッハマンの詩、聖書への言及やユダヤの神秘主義などといったテーマが、彼の作品を象徴している。その後フランス・バルジャックのアトリエに移り現在に至るまで絶え間なく創作活動を続けている。熱心な読書家であるキーファーの作品には、文学や詩の引用が何層にもわたって表現されている。これらは必ずしも固定された関連付けでも文字通りの関連付けでもなく、むしろ重なり合い、織物のように織り込まれて意味を形成する。彼が文章と物体として本に関心を抱いていることは、彼の作品に顕著に表れている。創作活動の当初から彼は、数多くのアーティストブックを手掛けた。アンゼルム・キーファーは、絵画、彫刻、本、写真以外にも、さまざまな場所に手を加えてきた。ドイツのホプフィンゲンにある元レンガ工場をアトリエに変身させた後、インスタレーションや彫刻を創作してそれがその場所の一部となった。フランスのバルジャックに拠点を移した後は、アトリエの周囲の地面を掘り起こし、地下トンネルと地下室を網のように張り巡らして数々のインスタレーションを繋いだ。
テネシー州メンフィス。ここでは多種多様な音楽が生まれ融合し、また、数々の“生ける伝説”と呼ばれる世界的ミュージシャンたちを輩出してきた。彼らを今一度この故郷に呼び戻し、名門ロイヤル・スタジオ等にて、ジャンルや人種、世代を超えた新たなレコーディングを行い、メンフィスの音楽と精神を現代の世界に再び送り出そう――この破天荒なプロジェクトの過程を追ったドキュメンタリーである本作。ブッカーT.ジョーンズやメイヴィス・ステイプルズ、惜しくも収録後にこの世を去ったボビー・ブランドやスキップ・ピッツといった巨匠たちが次世代を担う若者に音楽を継承する貴重なセッションの数々を、かのスタックス・レコードの盛衰に象徴される黒人差別の歴史と絡めつつ綴っていく。偉大なる先人たちがプレイの秘訣を惜しげもなく伝授してゆくシーンが印象深く、過去から現代へ粛々と受け継がれるこの地の“ソウル”がスクリーンから溢れ出す。音楽の本質を垣間見せてくれる感動作。
若い女性ジャンナは周囲に反対されながら警官になりたいと熱望してポリスアカデミーに入学したが、おっちょこちょいなので成績は悪い。そこで有力なコネを使い、卒業試験に合格することに成功。意気揚々のジャンナはある行方不明者を捜すために関係者を捕まえるべく、街で売春婦に化けて潜入捜査に挑む。署長らいい加減な同僚たちに囲まれ、捜査はなかなか進展しないものの、意外なきっかけから悪党に近づくことに成功するが……。
凪(ナギ)は大阪で契約社員として働いている。はじめての有給休暇前日に1年間付き合ってきた彼氏に振られる。怪談したり、ライブ行ったり、ゲートボールしたり、昔好きだった人に再会したり、大喧嘩したり。凪のメランコリックな有給休暇は過ぎていく
本作は、シド・ヴィシャスと恋人ナンシー・スパンゲンの壮絶に散った短い生涯に迫ったドキュメンタリー。幼少期から出逢い、そして衝撃的な最期まで、初公開となる数々の映像や写真、親交を持ったアーティスト達の証言によって、二人の破壊的な生きざまが綴られる。誰一人引き離すことの出来なかったシドとナンシーの関係は1978年、二人が住んでいたニューヨーク・チェルシーホテルの100号室でナンシーの死体が発見され、シドが容疑者として逮捕される、という悲劇的な最後を迎えた。未だ謎の多いこの事件について、その直前まで一緒に過ごした友人や目撃者を通じその真相にも切り込んでいく。