クリストス・ゴダスは2018年春から、人間の信仰や知識、そして物質的・精神的世界の関係を探求するための旅に出た。だが2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲い、人々の活動が大きく制限されるなか、彼の旅は一度終わりを迎えるかに思われた。いわゆる“アンソロポーズ”と呼ばれるこの時期、交通が激減し都市は静まり返ったが、その静寂の中で新たに見えてきた事実や気づきも数多くあった。彼はその気づきを胸に、人間の知識と信仰、物理学と形而上学のつながりをさらに探求し続ける。そして旅の終わりに、帰路についた彼が悟ったものとは?
米国の諜報活動への抗議デモが広がるヨーロッパ。ギリシャのテッサロニキで反米を唱える女性記者が遺体で発見される。何者かが米政府に批判的なジャーナリストの死をCIAの仕業にみせかけ、世界を敵に回させようとしていた。捜査を進めていくうちに、容疑者は1年半前に死亡したはずのCIA諜報員だと判明する。事態を収拾すべく、米政府は元凄腕CIAエージェントのスティーヴ・ヴェイルに協力を要請するが…。
そう遠くない未来。人工的な環境に適応するよう進化し続けた人類は、生物学的構造の変容を遂げ、痛みも消えた。“加速進化症候群”のアーティスト・ソールが体内に生み出す新たな臓器に、パートナーのカプリースがタトゥーを施し摘出するショーは、チケットが完売するほど人気を呼んでいた。しかし政府は、人類の誤った進化と暴走を監視するため“臓器登録所”を設立。特にソールには強い関心を持っていたのだが…。
“独身者”は、身柄を確保されホテルに送られる。そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられ、森に放たれる。独り身になったデヴィッド(コリン・ファレル)もホテルに送られ、パートナーを探すことになる。しかしそこには狂気の日常が潜んでいた。しばらくするとデヴィッドは“独身者”が暮らす森へと逃げ出す。そこで彼は恋に落ちるが、それは“独身者”たちのルールに反することだった―。
「お名前は?」「覚えていません」――。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。治療のための回復プログラム“新しい自分”に男は参加することに。毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る、バーで女を誘う...―そして新たな経験をポラロイドに記録する。ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく。毎日のミッションをこなし「新しい日常」にも慣れてきた頃、買い物中に住まいを尋ねられた男は、以前住んでいた番地をふと口にする・・・。記憶はどこにいったのか?新しい思い出を作るためのミッションが、男の過去を徐々に紐解いていく。
不幸なときだけ幸せを感じる男の物語。ティーンエイジャーの一人息子と、小綺麗な家に住み、健康で、礼儀正しく、概ね身だしなみは良い、一見何不自由ない弁護士の男性。しかし彼の妻は不慮の事故により昏睡状態に陥っている。境遇を知り親切になる周囲の人々。そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れ…。楽園を失った男はやがて自分自身を見失い、暴走する
中年男パヴカは気難しい父ヴァシルと不仲だ。母は父へ「大事な話がある」とだけ電話で告げたのち亡くなった。父は母の最期のメッセージを知ろうと、霊能者の助言により森で一夜を過ごし、行方不明になる。パヴカは暴走する父を追いかけながら、家に残した妊娠中の妻が食べたがっている「マルメロのジャム」を探し回るが手に入らず、盗みを企てる。愛に突き動かされ奔走する親子のおかしくも愛おしいブルガリア発ヒューマンドラマの傑作。
質素で孤独な生活を送る鉄道保線員ツァンコ・ペトロフは、ある日線路で大金を見つけ警察に届ける。運輸省の広報部長ユリアは客車問題の目くらましに、ツァンコを表彰し英雄と持ち上げる。だが実際は皆ツァンコをぞんざいに扱い、ユリアはツァンコの大事な腕時計を失くしてしまう。静かな憤りを胸に、ツァンコは腕時計と尊厳をかけた戦いに挑む。