「今から話す話は、駆け出し芸人であった僕に実際に起こった出来事です...」売れないお笑い芸人、綾野晃司は、テレビ番組のプロデューサーからきた、「“事故物件”に住む」仕事を引き受けることとなった。幼い頃から自分の持っている霊感について気付いてはいたものの、中途半端なレベルのもので、胸を張って霊感があります、とは言えなかったのだがこのままチャンスを逃すまいと、決心したのである。翌日、約束の場所に現れた不動産屋・岡田はアパートに向かって合掌した上、立ち止まる。「これが物件の鍵です…。私、ここでお待ちしております…」恐る恐る玄関からキッチン、部屋の中を見て回る晃司…。何も感じるところもなく、決心したように何度かうなづくと、そのまま一礼して出口へ、ドアから外に出て、鍵閉めようとすると、カチャリと内側から鍵が閉まる…。「え‥‥!?」遡ること約2年、同じように事故物件と知りながら住み始めたお笑い芸人がいた。上京して間もない野田二郎とその相方・崇である。彼らには全く霊感というものに縁がなく、二人で安いところに住めるなら、と軽い気持ちで住み始めたのであった。だが、そこには先住者がいた。部屋の片隅に佇む奇妙な人形であった…。その人形はなんだかじっと自分を見ているように見えるのだが…更に2年前、なんとそこに住んでいたのは、これまたお笑い芸人の土居シンジであった。シンジは、漫才に相方に愛想をつかされ、行く末を案じながらもお金がなく、この激安の物件にたどり着いたのであった。「この場所で敷金礼金ゼロで、月額たったの5万ですか?」市街に近いにもかかわらず、通常の半額以下の金額設定に不信感を抱きながらも、幸か不幸か、流されやすい性格でそのまま判を押してしまった。その日のうちに入居し、何も部屋で寝そべりながらうわごとばかりを言っている。「俺にはそもそも才能がないのかもしれん。何のネタも思いつかない…。」ふいに起き上がり、部屋を出るシンジであったが…。
ソープ店で働く主人公・加那。ある日、母から電話が。「一週間だけ、おばあちゃん の介護してくれない?」 仕事のことを隠していた加那は、ソープ嬢ということを秘密に、翌日から祖母宅⇔ソープ店を行き来して、“人の身体”を洗い続ける二重生活〈ダブルワーク〉をすることに。認知症が進み、名前すら覚えていない祖母・紀江の介護に奮闘する加那。会うたびに“初対面”を繰り返してゆく毎日。「どうせ忘れる」相手に対し加那は、祖母との暮らしの中で、本当の事を素直に打ち明けられている自分に気付く。そして祖母の知らなかった、これまでの人生と孤独が垣間見えてきて…。