東京郊外で倉庫作業で働きながらただ漠然と日々を過ごす真司。唯一の趣味は本を読むことでよくノートに自分の気持ちを書いている。そんな真司だが過去に一度だけ原田茉耶という女性と付き合っていた。彼女とはうまくいっていたのだがある日突然別れ話を真司の方から切り出してしまう。真司は茉耶に言えない過去をもっていた。児童養護施設で育った真司はその時の経験で強烈な劣等感を感じていた。別れ話の数日後二人は台北に来ていた。事前に予約していた台北旅行。茉耶は複雑な気持ちだったが真司に半ば強引に説得され行くことにした。楽しさと悲しみが入り混じった旅行をする二人。茉耶は不意に涙し「だって私ずっと一人なんだもん」と気持ちを吐露してしまう...
一人娘の三島チアキは、母ヨシコが経営する鵺ヶ淵・温泉郷へ里帰りする。チアキの父は12年前、母に想いを寄せる男、澤津久森(さわつくもり)によって殺害されていた。辺鄙な山奥の洋館では、UMAを専門に扱う雑誌の編集長・京極がUMA(未確認生物)を捕獲し、マダムに差し出していた。マダムは新鮮なUMAの肉で若さを保つ老女。鵺は古事記や平家物語に登場する日本古来の妖怪で、猿の顔に狸の体、虎の手足、蛇の尻尾を持つ。そんなUMAの血を引く人間が生きる秘境、それが鵺ケ淵であった・・・。
桜の花の蕾が膨らんで、満開の季節の訪れを誰もが感じている大阪・キタ。中崎町にある古い木造のアパートで、白骨化した老婦人の死体が発見された。警察は実況見分で、アパートの周りの捜査や関係者へ事情聴取を行っていた。孤独死なのか、または財産絡みの謀殺なのか、いろいろな噂が飛び交っている。そんな中、中国、台湾、韓国の観光客、マレーシアのビジネスマン、ネパール難民、ミャンマー人留学生、ベトナム人技能実修生などの外国人たち、彼らとの日常を共有している日本人たちの三日間の小さな出来事の断片が、大阪の中心、梅田北区、通称《キタ》と呼ばれる限られた地域の中で人知れず起きている。時に滑稽で、時にもの悲しく、時に倒錯的に…。事件の調査が終わりを告げるとき、この間に彼らに起きた様々な人生の岐路も新たな展開を迎えようとしていた。
若者が都会に出て行き、活気を失った地方の町に、奇妙なヘルメットを持った神崎が現れた。ヘルメットの力で町は活気づき、神崎は町長から町にとどまって活性化するよう依頼される。ただ神崎には謎めいた過去があり、彼が町に来た本当の理由を知る者は誰もいなかった。