あまりにも突然に訪れた鈴木家の長男・浩一の死。ショックのあまり記憶を失った母のため、遺された父と長女は一世一代の嘘をつく。ひきこもりだった浩一は、扉を開けて家を離れ、世界に飛び出したのだと―。
81歳になった芦村朋子は、不慣れな手つきでパソコンにむかい、亡くなった夫・吾郎との思い出を手記として記録していた。しかし、朋子は突然病に倒れてしまう。そんな朋子の代わりに、孫の理が『何日君再来』と題された祖母の手記をまとめていくことに。綴られていたのは今まで知ることのなかった、戦中・戦後の困難な時代を生きてきた祖母・朋子と祖父・吾郎の波乱の歴史と、深いきずなで結ばれた夫婦と家族の愛の物語だった-。
定年退職した校長先生、森衣恭一は堅物さと偏屈さから近所では浮いた存在だ。訪ねてくるのは亡き妻がかわいがっていた三毛猫・ミイくらい。猫嫌いの先生は何とか追い払おうとするが、ミイは毎日妻の仏壇の前に座っているのだった。しかし、ある日突然、姿が見えなくなる。何故か心配になり探し始めると、自分の他にもミイを探している人達がいることが分かる。彼らと関わっていく中で、先生の頑なな心が変化していくのだった。