愛情深い性格ゆえに、これまでの人生、ダメ男ばかりを引き寄せては、何度もだまされてきた母・肉子ちゃん。とんでもなく豪快で、子どもみたいに純粋な母に比べて、しっかりもので大人びた性格の小学5年の娘・キクコ。ふたりは肉子ちゃんの恋が終わるたびに各地を放浪し、北の漁港の町へと流れ着く。漁港で途方にくれる母娘の胃を満たしたのは、一軒の焼き肉屋「うをがし」の焼肉だった。妻に先立たれ、店をたたもうとしていた店主・サッサンは、目の前に現れた肉子ちゃんを“肉の神様”だと思い、「決しておなかを壊さないこと」を条件に肉子ちゃんを雇いいれる。こうして、サッサンが所有する漁港の船を住処に、肉子ちゃんとキクコの新しい生活が始まった……!キクコは地元の小学校に転入する。土地の言葉をきちんと使い、運動神経がよく、まわりの友達から「かわいい」と言われることが多いキクコは、大阪出身でもないのに大阪弁で思ったことをすぐ口に出し、町中でマトリョーシカと噂される母・肉子ちゃんの存在を、最近ちょっと恥ずかしいと思っている。一方、学校ではこの年頃特有の女子グループ間のやっかいな抗争に巻き込まれたり、風変わりな少年・二宮との出会いで、キクコは少しずつ成長し、この漁港の町をどんどん好きになっていく。肉子ちゃんの次の恋が終わったら、またこの町を出て行かなければならない。そんな不安がよぎるキクコと肉子ちゃんの大きな秘密が明らかになり……
蒼木門は石で漫画を描く自称「漫画芸術家」。当然食えない。門はバイト先のOL証恋乃とふとしたきっかけから、一夜を過ごす。しかし、翌朝目覚めて見ると、全身ヘンな格好をさせられていた。恋乃は帰宅後は同人誌漫画家へ変身するコスプレイヤーだったのだ。最悪の出会いだったが、二人は下心から惹かれあっていく。しかし漫画バーを経営する元売れっ子漫画家の中年・毬藻田が二人の恋路に立ちふさがり、3人の恋と未来を賭けたマンガバトルが始まった!
初夏の大月。突然の雨の中、気ままな旅を続けていた信(永瀬正敏)は名美(大竹しのぶ)に出会う。心魅かれるまま名美の働く地元の不動産屋を訪れた信は、社長の土屋英樹(室田日出男)にアパートを借りたい旨を突然申し出た。名美に案内された古アパートで、信は名美が英樹の妻であることを知るが、すでに信の名美への気持ちは抗し難いまでにたかぶっていた。結局信は英樹の下で働くことになる。あるドシャ降りの夕方、帰りの遅い信を名美が探しにいくと、信は思いつめた表情でモデルルームにいた。自分を押さえ切れない信はそこで名美を犯してしまう。しかしその後、今度は名美が誘うように2人はベッドで肌を合わせるのだが…。
70歳の安吉は、妻に先立たれ、40歳になる嫁ぎ遅れの長女・徳子と暮らしている。長男、次女は家を捨てたも同然で別居しており、躁鬱病の徳子だけが父の世話をしている。徳子は自分が婚期を逃したのも病気になったのも父のせいと言ってはばからない・・・。
東北地方の山奥の不毛の土地。ネズミまで食べ、木の根を煮たものをすすって、かろうじて生きていた母ユミエ(大竹しのぶ)と娘エミコ(伊藤歩)の飢えは、もはや限界だった。生き延びる為には、思い切った手段をとるしかない。葬式の幕と、開拓団の旗で服を作り、身体を洗い、化粧をしたふたりは、貯金箱にわずかに残った硬貨を使って、勧誘の電話をかける。電話を受けたダム工事現場の作業員(木場勝己)は金を払ってユミエとの情事を満喫した後、猛毒の焼酎を振舞わ、息絶える・・・。それからふたりは家に入ってくる男たちを次々とかどわかし、毒入り焼酎で命を奪っていくが・・・。
大正時代末期、広島の石内尋常高等小学校では、5年生の担任、市川先生(柄本明)が全力で生徒たちと向き合っていた。30年後、東京で売れない脚本家となっていた良人(豊川悦司)は、市川先生の定年祝いに出席。戦争をはさんで集まった同窓生それぞれの人生を目の当たりにした良人は、自身のふがいなさにがく然とする・・・。