戦争の足音が聞こえる1937年上海ーこの都市の有力なマフィアのルー(グォ・ヨウ)は冷徹な判断を持つ男で、ある時は財力である時は暴力で今の地位を維持していた。一方、上流階級の社交界ではルーのボスの妻リュー(チャン・ツィイー)たちが奔放で華やかな生活を送っていた。ルーの妹の夫ワタベ(浅野忠信)は日本人だが上海暮らしも長く、ルーの良き参謀であった。ある日、日本の実業家がルーに商談を申し込んできた。それを知ったワタベはルーに日本とのビジネスは危険だと忠告する。後日、実業家は軍人を引き連れてやってきて共同銀行の設立を持ちかけたがルーは丁重にその話を断った。提案を断られた男たちは他のマフィアと手を組めば事が進むと判断しルーを暗殺することを計画する…。
売れない貸本漫画家のツベ(浅野忠信)は、なんとなく暮らし始めた国子(藤谷美紀)との生活も二年になるが、どん底の生活が続いていた。とうとう家賃が払えなくなり、二人はアパートを追い出される事になる。国子は会社のまかない婦として住み込みを始めるが、一文無しのツベは、かつて住んでいた太平荘の木本(金山一彦)のところに転がり込む。ある日、木本の留守中に国子がやってくる。隙をみて国子の鞄から金を抜こうとしたツベは避妊具を見つけ、想像を巡らせる・・・。そして、国子の浮気を想像をしながら様々な事を回想し、やるせなくなったツベは、釣りをするために、あてもなく山道を歩いていると少女・チヨジ(つぐみ)に出会う。ツベは彼女の方言に惹かれついて行くと、そこは居酒屋・もっきり屋だった。そこで、彼は幻想的な体験をする・・・。
3年間失踪していた夫が突然帰ってきた。だが、夫は「俺、死んだよ」と妻に告げる。そして、夫が過ごした時間をめぐる、夫婦ふたりの旅がはじまった。夫の優介(浅野忠信)がこれまでにお世話になった人々を訪ねて歩くふたり。旅を続けるうちに、妻の瑞希(深津絵里)と優介はそれまで知らずにいた秘密にも触れることになる。お互いへの深い愛を、「一緒にいたい」という純粋な気持ちを感じ合うふたり。だが、瑞希が優介を見送る時は刻一刻と近づいていた--。
春野家の家族はそれぞれ心にモヤモヤとした悩みを抱えていた。長男ハジメは片思い、妹の幸子はときどき巨大化した自分を見てしまうことにとまどっていた。母親の美子は仕事復帰に悩みを抱え、父親は妻に取り残されたような感じを抱く。そんな春野家に美子の弟アヤノが帰省。彼はある決心をして帰ってきたのだが・・・。
『Helpless』『EUREKA ユリイカ』で国内外での評価を不動のものにした青山真治。その二作に続く“北九州サーガ”の集大成的作品が『サッド ヴァケイション』である。小説家としても活躍する青山自身の同名小説をベースに、全編北九州ロケを敢行した意欲作。2007年制作。