1879年、良家の長男として生まれ育った荷風。父の意向に反し、早くから文学の道を志した荷風は、やがて玉ノ井の娼家でお雪と出会う。世の中の底辺に生きながらも清らかな心を持つお雪に、荷風は運命的なものを感じ、57歳にしてついに結婚の約束をするが・・・。
2020年、熊本を襲った豪雨から3か月。母の訃報を受けた孝之(中原丈雄)は22年ぶりに帰郷するが、仮設住宅で暮らす息子の文則(渡辺裕太)は、かつて自分を捨てた父に心を開こうとしない。幼馴染の宏一(三浦浩一)が営む旅館「三日月荘」もまた半壊の痛手を負っていた。女将の雪子(清水美砂)が再建を願う一方、父を土砂で亡くした宏一は前を向けず、災害は夫婦の間にも亀裂を生む。その頃、球磨川くだりの再開を信じて船頭を志す文則は、かつての同級生・樹里(篠崎彩奈)と再会。隣人の直彦(不破万作)と妻のさとみ(宮崎美子)は仮設から自宅に戻ることを決め、孝之も水害で荒れた田畑の開墾に希望を見出していく。「居場所ばなくしたら、自分で取り戻すしかなか」 河とともに生きてきた人々は、それぞれの歩み方で明日へ進もうとしていた――。
一年前に離婚した時田結衣は、母・時田十和子が結婚相談所を営んでいる実家に戻り、張り合いのない日々をなんとなく送っていた。そんなある日、持病が原因で入院することになった十和子に頼まれ、渋々ながらも相談所の会員のお世話をすることに。そこで出会った会員・湯浅まどかに振り回されながらも、結衣は徐々に仲人としての自分に目醒めていく―――。長編映画「マリッジカウンセラー」の前日譚となるハートフル・コメディ短編。
大手不動産会社に勤める赤羽昭雄はトップ営業だった過去の栄光を自慢し、パワハラ・セクハラ当たり前の鬱陶しいオヤジ。ある日のこと、赤羽は会社からの辞令で、結婚相談所「とわえもわ」に出向することに。そこは、カリスマ仲人である母の後を継いだ時田結衣が切り盛りしている結婚相談所だった。最初は「物件紹介も結婚相手の紹介も大差ない」と高をくくっていた赤羽だが、“3回目のデートから先に進んだことがない”会社員、30代のうちに結婚したかった女性など、それぞれに事情を抱えた個性的な会員を前に、予想外の苦労の連続。一方の結衣も、真摯に会員と向き合いながらも、自分の手腕に自信を持てずにいた。最初こそ価値観の違いから衝突する2人だが、互いに足りないものを補い合い、小さな奇跡を起こしていく―――。
台湾と琉球列島の間には、世界最大級の海流・黒潮が流れる。3万年以上前、祖先たちはそこをどうやって越えたのか?使われた可能性があるのは、数種類の舟。研究者と冒険家のチームが、それらを作って海に漕ぎ出し、人類最古段階の航海の謎をさぐる実験がはじまった。度重なる失敗を乗り越え、2019年7月に台湾を出航。男女5人が昼夜を越えて漕ぎ続けた先に見たものは・・・
70年代、帰国事業により北朝鮮へ渡った兄と生まれたときから自由に生きてきた妹、そして兄をかの地に送った両親。その兄が病気治療のため一時帰国をする。25年ぶりの日本での再会を喜ぶ一家。ところが、治療も終わっていないにも関わらず、兄は突然の帰国命令を受ける。その時に家族が下した決断とは……。