天界と地上の間にある街、三ツ瀬。美しい海を見下ろす山の上に、老舗旅館「天間荘」がある。切り盛りするのは若女将の天間のぞみ(大島優子)だ。のぞみの妹・かなえ(門脇麦)はイルカのトレーナー。ふたりの母親にして大女将の恵子(寺島しのぶ)は逃げた父親をいまだに恨んでいる。ある日、小川たまえ(のん)という少女が謎の女性・イズコ(柴咲コウ)に連れられて天間荘にやってきた。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故にあい、臨死状態に陥ったのだった。イズコはたまえに言う。「天間荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいいわ」。しかし、たまえは天間荘に客として泊まるのではなく、働かせてほしいと申し出る。そもそも三ツ瀬とは何なのか?天間荘の真の役割とは?
たった一人の家族だった祖母が亡くなり、メイクアップアーティストになる夢にも破れ、東京から富山へと帰ってきた音更結子。祖母の遺影がピンボケだったことに悔しい思いをした結子は、町役場で働く幼なじみの星野一郎から頼まれた、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける。初めは皆「縁起でもない」と嫌がったが、思い出の場所で写真を撮るという企画に変えると、たちまち人気を呼ぶ。ところが、あるひとの思い出が嘘だったとわかり、その後も謎に包まれた夫婦や、過去の秘密を抱えた男性からの依頼が舞い込む。怒って笑って時に涙しながら成長してゆく結子の毎日は、想像もしなかったドラマを奏でてゆく──。
時は幕末。京都の貧乏長屋に住む清川多十郎は、ワケありの小料理屋女将・おとよに何かと世話を焼かれながら、怠惰に日々を過ごしていた。元々は長州で名うての侍だったが、親が残した借金から逃げるために流行りの脱藩浪人となった今は、己の鬼神のような剣の強さを持て余し、大義も夢もなく無為に日々を過ごしている。一途なおとよの想いに気付きながらも、頑なに孤独であろうとする多十郎。その頃、新撰組の勢いに押されている京都見廻組は面目を保つため、取り締まりを強めていた。ちょっとした喧嘩から恨みを抱いていた岡っ引きの密告により、多十郎の存在を見廻組に知られてしまう。京都を不穏な空気が覆う中、勤皇を胸に腹違いの弟・数馬がやってくる。故郷へ帰るよう説得する多十郎と、自堕落に生きる兄を責める数馬。そこへ見廻組が急襲し、数馬は目を負傷する。おとよに数馬を託し、二人が無事に京を離れるまで囮として町中を逃げ回り、追う役人を斬って斬って斬りまくる!多十郎にとって人生最初で最後の、命を懸けた戦いが始まった…!
あてもないけど、生きていく。ふつうの人間関係を築けない大人たちがその意味を探し続ける切なく孤独な旅-。あたしはこれから普通の家庭を築き、まっとうな生活を重ねていく。結婚を控え、そう考えていた泰子(初音映莉子)の前に現れた、かつて半年間だけ一緒に暮らした父の愛人の息子、智(高良健吾)。20年前、愛人・直子(草刈民代)と智が転がり込んできたことで、泰子の家族は壊れたはずだった。根無し草のまま大人になった智は、ふたたび泰子の人生を無邪気にかき回し始める。「邪魔しないであたしの人生」、そう普通の幸せを願っているはずなのに…。泰子は智とともに自分の母親、異父妹、そして智の母・直子を訪ねて行くことで、平板だった自分の人生が立ちどころに変わって行くのに気づき始める。
おじさま、あたいを恋人にして頂戴。短い人生なんだから、愉しいことでいっぱいにするべきよ 自分のことを「あたい」と呼び、まあるいお尻と愛嬌のある顔が愛くるしい赤子(二階堂ふみ)は、共に暮らす老作家(大杉漣)を「おじさま」と呼んで、かなりきわどいエロティックな会話を繰り返し、夜は身体をぴったりとくっ付けて一緒に眠る。しかしなにやら様子がおかしい。赤子は普通の女とは何かが違う。普通の人間には彼女の正体がわからず、野良猫には正体がバレてしまう。そう、彼女はある時は女(ひと)、ある時は尾ひれをひらひらさせる真っ赤な金魚だったのです・・・。そんな或る時、老作家への愛を募らせこの世へと蘇った幽霊のゆり子(真木よう子)が現れる。老作家の友人・芥川龍之介(高良健吾)、金魚売りの男(永瀬正敏)が3人の行方を密かに見守る中、ある事件が起きて・・・。
夏休みに地元の古めかしい映画館「銀映館」でバイトを始めた大学生の恵介は、過去のある事件が理由で3年間、映画館から外に出ていない美人映写技師のルカと出会う。バイト採用の条件として、支配人から「月曜日はルカをそっとしておく」「ルカとの恋愛は禁止」「ルカの過去について質問してはいけない」という約束をさせられた恵介だったが、次第にルカにひかれていき……。
雅人とノブは甲子園常連野球部の補欠部員。出場メンバーの当落線上ギリギリの2人はあの手この手でベンチ入りを企てるが、鬼監督サンダーから命じられるのはライバルチームの偵察など雑用ばかり。挙げ句、超有望株の新入生が入部し、残された席はあと一つ…。今まで支え合いながら頑張ってきた親友同士の2人は、最後の夏の甲子園ベンチ入りを懸けた熾烈な争いを決意する―。
2018年の東映京都撮影所を舞台に繰り広げられていく中島貞夫監督(当時83歳)とキャスト・スタッフたちによる覇気あふれる映画作りと、友人である倉本聰(脚本家)や、かつての仕事仲間である荒木一郎(俳優/作家/歌手)、三島ゆり子(女優)、橘麻紀(女優/歌手)、高田宏治(脚本家)、教え子の熊切和嘉(映画監督)らによる言葉たちと共に綴られていく、ひとりの映画監督の愛すべきポートレイト。京都国際映画祭2021、大阪アジアン映画祭2022で上映され喝采を浴びたドキュメンタリー。
『Helpless』『EUREKA ユリイカ』で国内外での評価を不動のものにした青山真治。その二作に続く“北九州サーガ”の集大成的作品が『サッド ヴァケイション』である。小説家としても活躍する青山自身の同名小説をベースに、全編北九州ロケを敢行した意欲作。2007年制作。