ハジメは京都の生まれ。いつも人よりワンテンポ早く、50m走ではフライング。記念写真を撮るといつもシャッターチャンスを逃してしまい、小学校、中学校、高校の卒業アルバムの写真はことごとく目を閉じている。現在、ハジメは長屋で妹の舞とその彼氏のミツルと3人で暮らしている。ハジメの職場は京都市内にある中賀茂郵便局。彼は高校を卒業して12年間、郵便の配達員だった。ついたあだ名が、『ワイルド・スピード』。度重なる信号無視とスピード違反で免許停止を食らい、それからは窓口業務だ。ハジメと同じ窓口に座るのは新人局員のエミリと小沢。いつもふたりに「見た目は100点なのに中身が残念」と言われ、ふてくされる日々。レイカも京都の生まれ。日本海に面した漁師町の伊根町で育った。いつも人よりワンテンポ遅く、50m走では笛が鳴ってもなかなか走りださない。現在、彼女は大学7回生の25歳。アルバイトをいくつも掛け持ちし、学費を払いながらの貧乏生活だ。写真部の部室に住み込み、ひとりぼっちで夜食をとりながら、ラジオを聴いている。ある日、急停車したバスに追突した高校生を看護するハジメの姿をみて、既視感をおぼえたレイカ。郵便局でハジメの窓口にいき、胸の名札『皇』の文字を見つめる。街中で路上ミュージシャン・桜子の歌声に惹かれて恋に落ちるハジメ。早速、花火大会デートの約束をするも、目覚めるとなぜか翌日に。“大切な1日”が消えてしまった…!?秘密を握るのは、毎日郵便局にやってくるレイカらしい。ハジメは街中の写真店で、目を見開いている見覚えのない自分の写真を偶然見つけるが…。
[BLUE BIRD]兄弟のケンジとジュンは何をするにも一緒だ。だが、ジュンが突然頭に激痛を訴え倒れてしまう。病状を告げる医師の言葉を受け入れられないケンジは、顔面包帯だらけで横たわるジュンを連れて逃げ出した。ところが、包帯の男は人違い。病院に戻ると、悲しそうな医師と看護師たちがケンジを待っていた。 [言えない二人]大学生のあゆむは友人からのお願いに困っていた。友人の彼女・柊子にあゆむの口から別れたがっていると伝えてほしいという。柊子が彼のプレゼントを買いに行くのに一日中付き合うが、一途な様子を見てあゆむは話を切り出せず、己の気持ちを隠したままでいた。 [水のない海]宅配サービス員ユキオの唯一の話し相手は人工知能音声アシスタントのOSだ。ある日配達に訪れると、ジェニと男が言い争っていた。その後、また彼女から依頼が入る。言葉が通じないジェニに気圧され部屋に呼ばれたユキオは、彼女の描いた未完成の絵に心を奪われる。OSはジェニの辛い過去をユキオに教えるが、ユキオは彼女に関わろうとしない。OSはユキオのため、ジェニに関わるナビを開始する。 [怪談 満月蛤坂]料亭の料理人・良介は、ある夜蛤坂で見知らぬ女と出会い一夜を共にしたあと、体に奇妙な変化が訪れた。魚の臭いが急にきつく感じ厨房の仕事ができない。三週間後、良介の腹は妊婦のように膨れ上がる。困り果てた良介は蛤坂であの女を待つが、現れた女の腹もはち切れんばかりに膨れていた。料亭の女将は、その女は200年前料亭にいた、仲居の幽霊だと良介に告げる。 [COYOTE]晴人はシカゴから突然日本に帰国する。恋人のハナは驚くが、二人の仲は良好だ。そんな中、新型コロナによる異変は起こった。ハナの所属する劇団の公演は中止になり、二人の愛犬が野生のコヨーテに殺されてしまう。一方、幼馴染夫婦の家を訪ね、彼らとバカ騒ぎをする晴人に傷心のハナから電話がかかってくるが、彼女の様子に気が付けずにいた。 [真夜中のひとりたち]バス停で佇む青木のそばに、女性が引き出物を置いて立ち去った。その女性・里実は想い続けていた初恋の人の結婚式に出席した後だった。追いかけてきた青木が誰かに贈るはずだった婚約指輪を持っているのに気が付いた里実。青木もまた想い人の式の帰りだった。共に、愛しい人を失った者同士である青木と里実は、深夜の東京を彷徨い続ける。