古井栗之助は、施設育ちの雇われ探偵。育ての親・今日子から、裏社会の危ない仕事を回してもらい、なんとか生きている。ある日、元カノの女医ゆかりに衝撃の事実を告白された栗之助。その矢先、自殺した娘・柚子に盗まれた五百万円を探せ、という会社社長からのきな臭い依頼が入ってくる。栗之助はギャンブル好きの謎のオカマに付きまとわれながら、柚子の身辺を調査するが…。栗之助にふりかかった衝撃の事実とは?また迷宮入りした事件を栗之助は無事解決できるのか?
キャバクラで働いていた琴音(20)は、コロナ禍で店が休業、一緒に住んでいた男に家財を持ち逃げされ、家賃を払えなくなり、行き場を失ってしまう。そんな中、知り合った楓(21)の紹介で出会い系喫茶に出入りするようになり、男性客とパパ活をすることで日々を切り抜ける生活をしている。客に絡まれたりネット上で中傷をされたりしながらも、逞しく生きている琴音は、あることがきっかけで、同じ出会い系喫茶でパパ活をする大学生のさくら(20)と出会う。生まじめで何事も重く受け止めてしまうさくらと琴音は不思議とウマが合い、友情を深めていくのだった。体目当ての矢田(42)、IT企業の社長でパトロンでもある清岡(36)、容姿端麗なダンサーの木村(28)ら軽薄な男たちと、生活のため、ホスト通いのため、学費のため、様々な理由でパパ活をする女性達の対比で物語は進んでいく。
竹中時雄(48)は脚本家を生業としているが、仕事への情熱を失い、妻のまどか(47)との関係も冷え切り、漠然と日皮を過ごしていた。ある日、時雄の作品の大ファンで脚本家を志しているという横山芳美(21)が仕事部屋に押しかけ、弟子にしてくれてと懇願する。時雄は芳美の熱心さに根負けする形で師弟関係を結ぶ。一緒に仕事をするなかで芳美の物書きとしてのセンスを感じるとともに、彼女に対し、恋愛感情を覚え、公私共に充実した時間を得るようになる。だが、そんな日閃もつかの間、芳美の彼氏で同じく脚本家を目指しているという田中秀夫(20)が上京してくるというのだ。嫉妬心と焦燥感に駆られ、強く反対する時雄だったが・・。
斜陽の一途にあるピンク映画業界。栩谷は監督だが、もう5年も映画を撮れていない。梅雨のある日、栩谷は大家から、とあるアパートの住人への立ち退き交渉を頼まれる。その男・伊関は、かつてシナリオを書いていた。映画を夢見たふたりの男の人生は、ある女優との奇縁によって交錯していく。
東北から上京した正次(松本享恭)は、やることもなくふらついている所で、ひょんなことから大輔(細田善彦)と出会う。大輔と意気投合し、てっとり早く金儲けをたくらんだ二人は、ヤクザの傘下に入り違法な利益で金を貸し付ける闇金稼業を営むことになった。債務者に容赦なく追い込みをかける正次と、気が弱く非情になりきれない大輔。2人の性格は正反対だったが、なぜかウマが合い、闇金稼業も順調であった。そんなある日、正次は親分格にあたる組長・成松(川瀬陽太)から勧誘される。一方の大輔は恋人・舞香(仁科あい)の借金が発覚し、成松の組の金を持って舞香と行方をくらましてしまう…。
しがないシナリオライター・九十九朔美の家に野良猫が迷い込む。朔美は“シロ”と命名し、妻・ひよりと飼うことに。子供のいない夫婦は我が子のようにシロを溺愛する。ところがある日、シロが家を出たきり帰って来なくなった。朔美は仕事そっちのけでシロを捜すが、望ましい情報は得られず、泣き暮らす日々。そして追い討ちをかけるように、ひよりに不安な出来事が…。「シロ、お前はどこに行ったのか」
周一郎が他界して5年、文緒(喜多嶋舞)は再び西湘に地にやって来た。カルチャーセンターの生花講座の講師として、急遽招かれたのだ。文緒は周一郎(中村方隆)の仏壇に線香をあげるために吉岡邸を訪れると、康隆(芦田昌太郎)は不意の来訪者に動揺を隠せない。かつて淡い想いを寄せたひと、そのひとと仁志(小林宏史)との逢引を目撃した衝撃が蘇ってくる。康隆は大学院に進み、学友のみどり(橘実里)と2人で論文をまとめ上げるため、日夜机を向かい合わせていた。そんな2人の心は既に学友からお互いを異性として知らず知らずのうちに意識していた。それにも関わらず、文緒の存在は康隆の心境に微妙な変化を与える。そんな折、文緒は康隆に周一郎の未発表遺稿「月下美人」を読ませる。そこには周一郎が脳梗塞で倒れる寸前からの、文緒と周一郎の愛の日々が綴られていた。なぜ文緒は康隆にそれを読ませたのか。その真意とは・・・。
30歳の文緒(喜多嶋舞)は65歳になる夫の周一郎(中村方隆)との夫婦生活を西湘の邸宅で過ごしていた。周一郎は数々の名作を生み出してきた文豪で、文緒の耳には「莫大な遺産目当て」と揶揄した言葉も入ってくる。しかし、文緒の心にあるのは周一郎の一途な愛だけ。文緒はまさに現代の日本女性が失っていたゆかしさを備えた女性であった。しかし、周一郎が脳梗塞で倒れて下半身が不随になったときから、周一郎に捧げてきた身も、心も、徐々に微妙な変化を遂げていく。作家志望の青年、仁志(小林宏史)。周一郎の孫、康隆(芦田昌太郎)の存在。そして、30歳の若さで不能の夫を持つことになった文緒を哀れむ周一郎。3人の男性の思惑が、文緒の火照った心を、身体を、更に熱いものへとしていく。やがて、文緒の身体が開かれるときがやってくる・・・、一夜限りの大輪を咲かせる月下美人のように・・・。