太陽が見えないほど、深い森の奥にある重度障害者施設「三日月園」。ここで新しく働くことになった堂島洋子は元・有名作家だ。東日本大震災を題材にしたデビュー作の小説は世間にも評価された。だがそれ以来、新しい作品を書いていない。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平は人形アニメーション作家だが、その仕事で収入があるわけではない。経済的にはきつい状況だが、それでも互いへの愛と信頼にあふれた二人は慎ましく暮らしを営んでいる。施設職員の同僚には作家を目指す坪内陽子や、絵の好きな青年さとくんらがいた。洋子は昌平ともども、妹や弟のように年齢の離れた彼らと親しくなる。そしてもうひとつの大切な出会いがあった。洋子と生年月日が一緒の入所者、“きーちゃん”だ。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない“きーちゃん”のことを、洋子はどこか他人に思えず親身になっていく。そんな折、洋子の妊娠が判明した。高齢出産になることもあり、彼女は産むという選択にひとり不安を覚える。施設の仕事にはだんだん慣れてきたものの、しかしこの職場は決して楽園ではない。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力、虐待を目の当たりにする。だが施設の園長は「そんな職員がここにいるわけない」と惚けるばかり。障害者たちの人間らしい生活を支援するはずのこの場所で、不都合な現実の隠蔽がまかり通っているのか。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく。特に、誰も入ってはいけないと言われている“高城さん”の入所部屋――その扉を開けてしまった時、さとくんの中で何かが一線を超えてしまう。「やっと決心がつきました。頑張ります。この国のためです。意味のないものは僕が片づけます」そして、その日はついにやってくる。――。
「解散」の道を選んだ河原組の桐生(竹内力)の手元には、組の遺産の大量の拳銃が残された。処分に困った桐生は、立花(山本裕典)という男の助言を得て拳銃を闇のオークションに出す。しかし、その会場には因縁のある大道会の神矢(山本譲二)が来ていた。桐生の脳裏には神矢の過去の裏切りの記憶が蘇る。神矢も然り。そして大量の拳銃を前にして、壮絶な銃撃戦が始まる!!誰が味方で誰が裏切り者か?何が真実で、何が嘘なのか?欺き続けた男たちが銃撃戦の後に辿いたものとは?
三島有紀子監督『オヤジファイト』、榊英雄監督『父と息子』、長澤雅彦監督『この柔らかい世界』、橋本一監督『熱海少年探偵団』、青山真治監督『ヤキマ・カナットによろしく』の5編の作品は、人間ドラマ、サスペンス、アクションなど、それぞれの監督が独自の視点で、多種多様なストーリーを描いている。
若菜家は、息子2人、父と母の平凡な家族。だがある日、若菜家の母・玲子(原田美枝子)に「脳腫瘍」が見つかる。末期症状で、余命1週間の診断をされる。父(長塚京三)は取り乱し、長男の浩介(妻夫木聡)は言葉を失くし、次男の俊平(池松壮亮)は冷静を装う。やがて、“どこにでもいる家族”に潜んでいた秘密が表面化していく―。どうしたらいいか分からない、でも投げ出すことなんてできない。そして男たちは「悪あがき」を決意する―。
雅人とノブは甲子園常連野球部の補欠部員。出場メンバーの当落線上ギリギリの2人はあの手この手でベンチ入りを企てるが、鬼監督サンダーから命じられるのはライバルチームの偵察など雑用ばかり。挙げ句、超有望株の新入生が入部し、残された席はあと一つ…。今まで支え合いながら頑張ってきた親友同士の2人は、最後の夏の甲子園ベンチ入りを懸けた熾烈な争いを決意する―。