幕末から明治。激動の時代を知恵と愛で生き抜いたある家族がいた――代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、家業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚付き合い、養育費、冠婚葬祭と、武家の慣習で出世の度に出費が増え、いつしか家計は火の車!一家の窮地に直之は、“家計立て直し計画”を宣言。家財を売り払い、妻のお駒(仲間由紀恵)に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは――。世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山家三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。
情緒溢れる町並みが、どこか時代から取り残された感のある愛知県瀬戸市。人のウワサがあっという間に広がりそうな片田舎で、43歳の警察官・友川と、15歳の中学生・陽子が恋に落ちた。警官でありながら拳銃をぶっ放して遊び、淋しい主婦とヨロシクやってしまう破天荒なおっさんだったが、知的障害を持つ陽子の兄・助政や、一人暮らしの老婆トヨといった、社会から疎外された人々に優しい目を向ける。そんなおっさんの自由だが一本筋の通った生き方が、胸に小さな傷を抱えた少女の心に安らぎを与え、孤独という心の穴を埋めていく。だが、ある事件をきっかけに二人の関係が周囲に知られてしまうことに。現実を突きつきつけられたおっさんと少女の愛の形を美しい映像でアヴァンギャルドに綴った奥田流抒情詩。