「母ちゃんが歌える歌、いっぱい作ってくれ」信州に生まれ育った中山晋平(中村橋之助)は、少年時代に見た旅楽団のジンタに魅せられ、音楽の道に進むことを夢見る。18歳の時に、早稲田大学教授・島村抱月(緒形直人)の書生になる機会を得て、上京。書生の仕事をしながら苦学を重ね、3年後、難関「東京音楽学校」に入学する。借金を重ねながらも卒業した晋平は、抱月の劇団「芸術座」の劇中歌『カチューシャの唄』を作曲することに。看板女優・松井須磨子(吉本実憂)が歌った曲は演劇と共に大ヒットし、女手ひとつで育ててくれた母ぞう(土屋貴子)を安心させることができた。しかし、母が突然、病で倒れてしまう。故郷へ急ぐが、死に目に会えなかった。悲しみに暮れる中、母への思いを込め、二曲目の劇中歌『ゴンドラの唄』を生み出す……。
詩人・小説家の耕治人が妻ヨシさんとの晩年の日々を綴った<命終三部作>(『天井から降る哀しい音』『どんなご縁で』『そうかもしれない』)を映画化したヒューマン・ドラマ。長く連れ添ってきた妻がある日突然認知症となり、穏やかな日常が一変してしまう中で、それでもすべてを受け入れ妻を優しく見守り続ける夫の姿を描く。主演は雪村いづみと上方落語界の重鎮、三代目桂春團治。
夏の喧騒が過ぎ去った人気のない海岸に、二人の男女が佇んでいる。女の名は山口真紀(西野翔)、男の名は橋本研二(並樹史朗)。真紀がまだ12歳の頃、母である俊江(齋木亨子)と橋本は情愛関係にあった。だが橋本の歪んだ性欲は、娘の真紀にまで食指を伸ばすようになっていく。俊江は必至で真紀を守ろうとしたが、その無力さから自ら命を絶ってしまう。成長した真紀は、DVで苦しめられた元夫篠崎悟(千葉誠樹)とも別れスナックを経営するようになり、女一人過去を封じ込め健気に生きていた。そんなある日、真紀の店に偶然橋本が客として現れる。真紀に見覚えがあると言うその視線に真紀の心は凍りついた。さらに縁を切ったはずの篠崎がまたしても真紀の前に現れる。ストーカー行為を繰り返し、執拗に真紀の身体を貪り始める。繰り返される人生への失望と諦めが真紀を自暴自棄にしていく。だがやがて真紀は運命を味方に付けるかのように、身体に絡まった黒い糸がするするとほどけていく様を見届けることになる・・・。