耽美派・谷崎潤一郎の代表作「痴人の愛」を、現代を舞台に“男女逆転”愛と官能に彩られた、究極のマゾヒズムの行方は―。教師のなおみは、年下の男ゆずると暮らしている。出会いの日、道端にぽつんと座り込んでいたゆずる。儚げで捨て猫のような男を放っておくことはできなかった。それからなおみは、広い家に引っ越し、勉強を教え、少ない給料をふたりの生活につぎ込んでいった。ゆずるとの間に体の関係は無かった。行くあてのない年下の男を不憫に思い、その成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されながらも、その蠱惑的な魅力の虜になっていく―。ゆずると出会った日、どうすれば良かったのだろうかと今でもふと思う時がある。誰かに打ち明けたいのだけれど、決して誰にも言えない話―。
小さい頃から奈々ちゃんにとって、人が食べているもの、大事にしているものが何よりも素敵に見えた。大人になってからも彼女は相変わらず。奈々ちゃんにとって一番魅力的なのは「真剣に誰かを大事にしている男性」だった。そんなわけで、せっかく就職した大企業も上司との不倫が原因で退職。新たに見つけたバイト先のコンビニでも、真面目に働く店長の左手の薬指に指輪を発見して・・・。
夫とその愛人を殺して逃げ出した夜、果純は突然車にはねられる。車を運転していた容一は、同乗していた後輩・鎌田に言われるがまま、ぐったりと動かない果純を地中深く埋めようとするが、果純は死んでいなかった。行くあてのない果純を自らの家に招き入れる容一。そこから「殺人犯」と「ひき逃げ犯」の奇妙な同居生活が始まる。
しがないシナリオライター・九十九朔美の家に野良猫が迷い込む。朔美は“シロ”と命名し、妻・ひよりと飼うことに。子供のいない夫婦は我が子のようにシロを溺愛する。ところがある日、シロが家を出たきり帰って来なくなった。朔美は仕事そっちのけでシロを捜すが、望ましい情報は得られず、泣き暮らす日々。そして追い討ちをかけるように、ひよりに不安な出来事が…。「シロ、お前はどこに行ったのか」
菜緒26歳、主婦。夫と義父と3人暮らし。楽しみといえば、夜中の自慰行為と、浮気した夫へのあてつけで始まった昔の上司との不倫関係。淡白な夫に比べ義父は優しいが、最近どうも様子がおかしい。深夜、台所で小便をしようとしたり、菜緒の入浴中に脱衣所へ入ってきたり。しかし、ある日、偶然義父の日記を読んでしまい、それらがすべて確信犯だったことを知ってしまう。そして、義父が菜緒の不倫を知っていたことも・・・。
女癖が悪く傲慢なTVディレクターの金子は、アイドル・ユカが出演する心霊番組を頼まれ、心霊スポットとして知られる山奥の廃墟に赴く。そこでは飛び降り自殺で成仏できなかった霊が目撃者に憑依するという。撮影を進めるうち、ユカとADが廃墟の地下で行方不明になり、皆が捜す中、ひょんなことから金子は廃墟に一人取り残されてしまう。そんな金子を不可解な心霊現象と、廃墟内にしかけられた残酷な罠が襲う・・・。パニック寸前になる金子だったが疑念がわき起こってくる。これは心霊などではなく、ユカやスタッフが仕組んだものではないのか・・・?金子には皆に恨まれる心当たりがあったのだ。