貧しい北町に住む売れない漫画家・義男(成田凌)。アパート経営の他に怪しい商売をしているらしい大家の尾弥次(竹中直人)から自称小説家の伊守(森田剛)とともに引っ越しの手伝いに駆り出され、離婚したばかりの福子(中村映里子)と出会う。艶めかしい魅力をたたえた福子に心奪われた義男だが、どうやら福子にはすでに付き合っている人がいるらしい。ほどなく、福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、義男は福子への潰えぬ想いを抱えたたま、三人の奇妙な共同生活が始まる……。
『変わらない。変われない。それでも、』宏冶の浮気で家を飛び出した妻は、そのまま帰ってこなかった。宏冶は、宏冶だけの妻の記憶と一緒に生きていくと決意する。これは、ある夫婦の絆の軌跡。/『宇宙にたった2人』カメラマンを目指して東京に上京するユメのいわきで過ごす最後の日。10年前に亡くなった同級生・なっちゃんの父親に別れの挨拶をしに行ったユメと幼馴染のソノは、10年間行けなかった海に行く決意をする。/『この町の』東京に嫁いだものの、離婚して故郷に出戻ってきた夕佳里。ある日、町に新型コロナの陽性者が出る。平和だった町に生じていく不協和音。ぎすぎすとした町の空気に夕佳里の心も蝕まれていく。/『遅い花』久しぶりの地方営業に呼ばれた未だ売れていないお笑いコンビ・大安吉日。ツッコミの津路は相方・西崎の到着を楽屋裏で待つも、結局間に合わずイベントは終了してしまう。その後、マネージャーから相方が事故に遭い亡くなったと連絡があり・・・。/『リフレインの鼓動』シンガーになる夢に破れ、故郷に帰るフタバ。フタバは駅で出会った女性に不思議な感覚を覚える。気づくと知らない家族が目の前にいた。過去と未来、夢と現実、様々な空間を行き来するファンタジー。
大学に通う内田桜(伊原六花)は引っ込み思案の性格でなかなか周りに溶けこめない生活を送っていた。幼馴染で同じ大学に通う真中聡(藤原大祐)がそんな桜を気分転換のために同じく幼馴染の華村希美(秋田汐梨)を誘い、旅行を兼ねてとある島にある旅館でアルバイトすることに。桜たちが働くことになった旅館は夫婦とフリーターの岩崎で営んでいた。ただ、旅館の主人・健介(坪内守)が足を怪我したことで桜たちをバイトとして雇うことなる。本格的なシーズン前でもあり、十分な休憩時間があった桜たちはリゾート地を楽しむことができ、その中で桜も自然と笑顔を取り戻してゆく。そんなある日、桜は女将の真樹子(佐伯日菜子)が毎晩、深夜にひっそりと廊下を歩き、食事を運んでいる姿を目撃し、言い知れぬ不安を抱く。それから数日後、夕食時に岩崎から桜たちは肝試しを提案される。その内容は桜が目撃した深夜に食事を運ぶ女将が向かうこの旅館の隠し部屋へ行くことであった。不安を感じる桜であったが、岩崎の強引さに負け、女将の後をつけて隠し部屋に向かうことになる。いつものように深夜に食事を運ぶ真樹子は壁に見える隠された扉を開けて中へ入ってゆくが、ものの5分も立たないうちにすぐに出てくる。しかし、女将が運んでいた食事は全て空に。その様子に違和感を覚える桜であったが、岩崎はさらにおもしろがり、二人一組で女将が向かった隠し扉から中へ入ることになってしまう。最初に桜と聡がその扉を開けて中へ入る。そこにはいきなり不気味な階段があり、怖がりの桜はそれ以上進むことに恐怖を覚えていると聡はそんな桜に気づき、一人で階段を昇ってゆく。この出来事により桜たちへ後戻りできない恐怖体験が始まる。
ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、3年前にとある地方で起きた「女子高生いじめ自殺事件」を追っていた。由宇子がその事件を追うのには理由があった。当時、女子高生の自殺をきっかけに、報道合戦はエスカレート。学校はいじめを隠蔽するために、女子高生が講師と交際関係にあることをでっちあげ、女子高生を学校から退学させようとしたのではないか―?いじめられていたとされる女子高生は、素行が悪く講師に色目を使っていたのではないか―?真偽のわからない様々な情報がメディア上に飛び交い、交際を噂された講師にまでバッシングは及び、その講師も自殺してしまうという特異な事件だったからだ。由宇子は、テレビ局の保守的な方針と対立を繰返しながらも、遺族への取材を粘り強く続け、事件の真相に迫りつつあった。そんな時、由宇子は学習塾を経営する父から思いもよらぬ“衝撃の事実”を聞かされる。その事実が世間に明るみになれば、父や自分、そして周りの人たちが社会から徹底的に叩かれ、抹殺されてしまうかもしれない…。大切なものを守りたい、しかしそれは同時に自分の「正義」を揺るがすことになる―。果たして“正しさ”とは何なのか―?常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる…。ドキュメンタリーディレクターとしての自分と、一人の人間としての自分。その狭間で激しく揺れ動き、迷い苦しみながらもドキュメンタリーを世に送り出すべく突き進む由宇子。彼女を最後に待ち受けていたものとは―!?
青山のアパレルショップで店長を務める伊藤真知子は、どこか満たされない毎日を送っていた。自分の意見は採用されず、年下のカリスマ店員・新堂さやかに仕事を取られ、ストレスが溜まる日々。そんなある日、さやかの何気ない一言がきっかけで真知子はSNSの裏アカウントを作り、自分の写真を投稿する。表の世界では決して得られない反応に快感を覚えた真知子の投稿はどんどん過激になっていき、それに呼応するようにフォロワー数も増えていった。「リアルで会いたい」「もっと自分を解放して」そんな言葉に誘われ、フォロワーの1人と会うことになった真知子。その相手は、“ゆーと”という年下の男だった。真知子は自分と同じ心の乾きを持つ彼に惹かれていく。しかし、その関係は1度きり。それがゆーととの約束だった。ゆーとと会えないことから、真知子は他の男と関係を持つようになるが、その心は満たされない。裏の世界でフラストレーションがたまっていくのとは裏腹に、表の世界は、店の売り上げ不振回復への施策に自身のアイデアが採用され、大手百貨店とのコラボレーション企画が決まるなど充実していく真知子。やりがいのあるプロジェクトに意気込む真知子だったが、その百貨店担当者の原島努こそが、あのゆーとだった。表の世界で再会を果たした2人。平静を装う原島に対し、心乱れ動揺を隠せない真知子。原島ではなく、ゆーとに会いたいという思いが日増しに募っていく。表と裏、愛情と憎悪、真実と嘘、理性と欲望…相反する2つが激しく交錯する中、真知子に突然訪れる結末とは…。
うまくいかない曲作りから逃れるかのように団地へと引っ越したシンガーソングライターのソラ。ある夜、新居の押し入れから、前の住人が残した大量のカセットテープが見つかる。テープに吹き込まれていたのは、贋作画家として日銭を稼ぐ青年トキオの「心の声」だった。見ず知らずのトキオの思いに触れるにつれ、「記憶」と「現実」が交錯していくソラの日常。交わるはずのなかったソラとトキオのひと夏の物語が始まる。
深夜、とあるマンション内のエレベーターホールで血だらけの女(紗希)が座り込んでいる。煙草を吸いながらスマホで誰かに電話している。その横には、意識朦朧とした血まみれの男(翔)が倒れている。その光景にカメラを向ける住人ら、慌ただしく無線を飛ばす警官たち。取調室、二人の刑事と虚ろな目をした紗希がいる。柔和で悲しげな表情を浮かべながら、翔との関係を話し出す。ふたりの出会いは2年前にさかのぼる。映画製作のスタッフで下働きをしていた紗希は、撮影現場で俳優の翔に出会う。連絡先を交換し、ほどなくしてふたりは、体の関係を持つまでになる。紗希は翔を愛し、借金を重ね、番組の製作費を盗んでまで翔に身も心も捧げていた。だが、そんな翔に「もう一人の女」の影が…事件に至るまでの全貌が明らかになるとき、女たちの狂った「純愛のかたち」を知ることになる…
また、真理子が居なくなった・・・自閉症の妹のたびたびの失踪を心配し、探し回る兄の良夫だったが、今回は夜になっても帰ってはこない。やっと帰ってきた妹だが、町の男に体を許し金銭を受け取っていたことを知り、妹をしかりつける。しかし、罪の意識を持ちつつも互いの生活のため妹へ売春の斡旋をし始める兄。このような生活を続ける中、今まで理解のしようもなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れ、戸惑う日々を送る。そんな時、妹の心と身体にも変化が起き始めていた…。ふたりぼっちになった障碍を持つ兄妹が、犯罪に手を染めたことから人生が動きだす。
「二人とも本当に解散の決心は変わらないんだな?」全国7都市を回るツアーへの出発の朝、車に乗り込んだデュオ〈ハルレオ〉のハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)に、ローディ兼マネージャーのシマ(成田凌)が確認する。うなずく二人にシマは、「最後のライブでハルレオは解散」と宣言するのだった。2018年7月14日、解散ツアー初日から波乱は起きる。別行動をとったレオが、ライブに遅刻したのだ。険悪なムードの中、「今日が何の日かくらい憶えているよ」と、小さな封筒をハルに押し付けるレオ。しばらくして、何ごともなかったかのようにステージに現れるハルレオ。トレードマークのツナギ姿に、アコースティックギター。後ろでシマが、「たちまち嵐」を歌う二人をタンバリンでサポートする。次の街へ向かう車の中、助手席でレオからもらった封筒を開けるハルを見て、「そうか、今日はハルの誕生日か」と呟くシマに、「違うよ。初めてレオに声をかけた日だよ」と答えるハル。二人が出会ったのは、バイト先のクリーニング工場。上司に叱られ、むくれていたレオを、ハルがいきなり「ねえ、音楽やらない?あたしと」と誘ったのだ。