2020年4月に東京芸術劇場、5月に近鉄アート館で予定していた“STRAYDOG”Produce公演『路地裏の優しい猫』。4度の延期を経て、2021年4月にCBGKシブゲキ!!でやっと幕を下ろせる!と思った矢先に、3度目の緊急事態宣言が発表され、座組の希望はあっさり潰えた……。そんな中、一人だけ諦めなかった男がいる。演出・森岡利行だ。瞬く間に舵を切り替え、郊外の美術倉庫で、たった一度きりの無観客公演を行うことになった『路地猫』。図面を引きなおす間も無く建てられた舞台セット、仕込まれていく照明や音響。今までずっと肩を並べて来たスタッフ達の献身によって現れた、主人公が生きた昭和の街に、多くの関係者が涙し、胸を打たれた。無観客の客席へ向けた、カーテンコール。「今だからこそ、笑っていなきゃって思うんです」1年半もの間、ヒロイン・ハルコを生き続けた女優・市川美織の笑顔と涙は眩しく、闘い続けた日々を慈しむようでもあった──本映画は、コロナ禍に翻弄された小さな座組の最後の9日間を『路地裏の優しい猫』演出・森岡利行の目線で切り取った、芸術の尊厳を静かに問いかけるドキュメンタリー・ドラマ映画です。
古い名画座「中野光座」。オールナイト上映のある晩、フラリと立ち寄ったしがないサラリーマン・多和は、ヤクザのイサオと彼を探すチンピラたちとのいざこざに巻き込まれてしまう。彼は館主の娘・芽以と常連のヘルス嬢・恵梨香に助けを求められ彼らに立ち向かおうとするが、あっさり暴力に屈しプライドを傷つけられる。一方、館内ではイサオの妹で看護婦の幸子が、スケベな医師・酒巻にセクハラを受けていた。そんな妹を助け出すイサオ。末期の胃ガンに体を蝕まれ余命幾ばくもない彼は、妹と母親の為に無謀にも組織からブツを盗み出し、それを現金に換えようとしていたのだ。彼の姿に感動し自らの「夢」を取り戻した多和は、芽以と恵梨香、そして自身の為にチンピラたちに闘いを挑む。果たして、彼は大怪我を負って病院に運ばれるが、後悔はなかった。やがて、イサオとチンピラの兄貴分・黒沢木が決着をつける時がきた。黒沢木がイサオの恋人・ケイを殺害した犯人だと知り、最後の力を振り絞って闘うイサオ。彼は黒沢木を倒すことに成功するも、翌朝、力尽きてこの世を去ってしまう。それから数日後、映画館で恵梨香に再会した多和は、大学時代の夢であった脚本家を目指し、シナリオを書き上げる約束を彼女にするのであった。