洗骨───。今はほとんど見なくなったその風習だが、沖縄諸島の西に位置する粟国島などには残っているとされる。粟国島の西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらうことで、晴れて「この世」と別れを告げることになる。
二月のある日、シングルファーザーの肇(柳家京太郎)は、広島から上京して、春から東京の大学に通う娘の璃子(石井杏奈)のため、二人で部屋探しに歩く。そこで出会う人々とのふれあいが、二人の心にかけがえのない思い出を刻み付けていく。たった一日のちいさな旅路が終わりに近づくころ、肇は璃子が幼いころ死別した妻との思い出を語りはじめる。璃子にとってそれは、今まで知ることのなかった父と母の秘められた物語であった。