ひき逃げ事故で兄を助け刑務所から出たばかりの青年ジョンドゥは、家族のもとへ戻るものの、皆からけむたがられていた。ある日、被害者家族のアパートを訪れた彼は、寂しげな部屋で一人取り残された女性コンジュと出会う。脳性麻痺を持つコンジュは、部屋の中で空想の世界に生きていた。二人は互いに心惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくが、周囲の人間はだれ一人として彼らを理解しようとはしなかった。そして、ある事件が起こる…。
バイト暮らしのジョンスは、偶然再会した幼なじみのヘミと肉体関係を持ち、彼女の旅行中に猫の世話を頼まれる。やがてヘミは、裕福な青年ベンを伴って帰国。ベンはジョンスに“趣味”を打ち明ける。それは古いビニールハウスを燃やすこと。そしてこの日を境に、ヘミの姿が消えた......。
1999年、春。旧友たちとのピクニックに場違いな恰好で現れたキム・ヨンホ。そこは、20年前に初恋の人スニムと訪れた場所だった。仕事も家族もすべてを失い、絶望の淵に立たされたヨンホは、線路の上で向かってくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ。すると、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させてしまった妻ホンジャとの生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した「光州事件」…。そして、記憶の旅は人生のもっとも美しく純粋だった20年前にたどり着く…。
兵役を終えて汽車で故郷に向かっていたマクトンは、赤いスカーフを巻いた女性が、チンピラに絡まれているのを助ける。しかし彼らと喧嘩になり、助けた女性と言葉を交わすことなく手元に彼女の赤いスカーフだけが残る。暫くして、ミエと名乗る女性から連絡が来る。彼女は赤いスカーフの女性で、ナイトクラブのステージに立ち、新興の裏組織のボス、テゴンの情婦でもあった。ミエの口利きと持ち前の負けず嫌いの性格で組織の一員になったマクトンは、テゴンに気に入られ頭角を表す。ミエへの恋心を抱きながらも、テゴンへの忠誠を誓うマクトン。その頃、対立組織のボスが刑期を終えて出所し、マクトンらに圧力をかけてくる。
シネは事故で亡くなった夫の故郷で再出発するため、息子とソウルからミリャン(密陽)に引っ越して来る。車が途中で故障し、レッカー車を呼ぶと、自動車修理工場を営むジョンチャンが現れた。彼の好意でシネはピアノ教室を開き、順調に新生活を送っていたが、ある日息子が誘拐され…。
イ・チャンドン監督作品の本質と真実に迫る、タイムトラベルのような本作は、『ペパーミント・キャンディー』にインスパイアされ、現在から過去へ、作家として過ごした日々、そして幼少期と、イ・チャンドンの芸術的原点へと遡っていく。また、彼の作品に出演した俳優や、共同脚本家のオ・ジョンミとの制作についても描かれる。さらに、各作品のロケ地の現在の姿も映し出される。