手には常にライフル銃が握られている男の名は、レスター・バラード。天涯孤独の彼は、家族を失い、家を失い、山中の廃小屋で暮らしはじめた。レスターの粗暴な振る舞いは地域住民に疎まれ、次第に社会との繋がりさえ失われていった。ある時、山道の車中で半裸姿の若い男女の死体を発見したレスター。女に欲情し性交を済ませると、その死体を持ち帰り奇妙な同居生活を始めるのだった。数日が過ぎたある極寒の深夜。悪い予感を察知し目を醒ましたレスターだったが時すでに遅く、暖炉の火が瞬く間に家中へと燃え広がり、女の死体は火の海にのまれていった。すべてを失い再び孤独となったレスターは、歪んだ欲求をさらに増幅させ、やがて凄惨な犯罪へと手を染めていく…。
日本から帰国する際、搭乗するはずだった飛行機が墜落。記録上、死亡したことになった男は、NYでウィリアム・ヴィンセントという他人名義のパスポートを購入し、映像編集する仕事を得て暮らしていた。ウィリアムとして過ごし始め3年が経過。スリとしての才能も合わせ持つ彼に興味を持ったある組織のボスは、部下のビクターを使い、顔を出すよう強請する。何に対しても動じず、秘密主義的なウィリアムを気に入ったボスは、敬意の印として情婦のアンを贈ることに。乗る気でなかったウィリアムはその申し出を辞退したが、自宅にアンが訪れた時から、それぞれは惹かれ合う仲に。だが、それは2人にとってあまりにも危険的な、許されざる好意だった。