天界と地上の間にある街、三ツ瀬。美しい海を見下ろす山の上に、老舗旅館「天間荘」がある。切り盛りするのは若女将の天間のぞみ(大島優子)だ。のぞみの妹・かなえ(門脇麦)はイルカのトレーナー。ふたりの母親にして大女将の恵子(寺島しのぶ)は逃げた父親をいまだに恨んでいる。ある日、小川たまえ(のん)という少女が謎の女性・イズコ(柴咲コウ)に連れられて天間荘にやってきた。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故にあい、臨死状態に陥ったのだった。イズコはたまえに言う。「天間荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいいわ」。しかし、たまえは天間荘に客として泊まるのではなく、働かせてほしいと申し出る。そもそも三ツ瀬とは何なのか?天間荘の真の役割とは?
血統書付きの父と、ミックス犬で優雅な母との間に生まれたマロナは、同時に生まれた9匹きょうだいの末っ子で、“ナイン”と呼ばれていました。ハート型の鼻を持つ女の子です。生まれてすぐ家族から引き離された彼女は、曲芸師マノーレの手にわたり、“アナ”と名づけられました。住処も名前も決まり、アナにとって幸せな日々が訪れたかに思えましたが…。
広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりに気づいてしまう。だがすずは、それをそっと胸にしまい込む……。昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。 そして、昭和20年の夏がやってくる――。
コロナ禍の2020年。いつかが通う美術大学でも、その影響は例外なく、卒業制作展が中止となった。悲しむ間もなく、作品を持ち帰ることになったいつか。いろいろな感情が渦巻いて、何も手につかない。心配してくれる父・母とも、衝突してしまう。妹のまいもコロナに過剰反応。普段は冷静な親友の平井もイライラを募らせている。こんなことではいけない。絵を描くことに夢中になったきっかけをくれた友人との再会、平井との本音の衝突により、心が動く。未来をこじ開けられるのは、自分しかいない―。誰もが苦しんだ2020年―。心に光が差す青春ストーリー。
2019年10月28日、監督・片渕須直は東京国際映画祭のレッドカーペットを、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の主演女優のんと歩いている。2016年11月に始まった映画『この世界の片隅に』の公開からの約3年。そこには、日本全国で行われた数多くの舞台挨拶、海外の映画祭への参加、そして『さらにいくつもの片隅に』完成に向けて、徹底的なリサーチと圧倒的なこだわりを持ってアニメーション制作に臨む監督の姿があった。