- 配信期間: 2016/05/27 ~
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日本本土と沖縄の愛憎溢れる複雑な関係性を青春映画風に描いた、大島渚最後のATG映画。
あらすじ
大島渚最後のATG映画。素直子は父の婚約者でピアノの家庭教師でもある桃子と本土復帰直前の沖縄にやってきた。数ヶ月前、素直子は大村鶴男と名乗る沖縄の青年から手紙をもらい、自分たちは兄妹かもしれないというので、鶴男を訪ねて沖縄にやってきたのだった。下船した素直子はさっそく観光客に沖縄語を教えて金を稼ぐ青年と知り合い、親しくなる。実は彼こそが鶴男なのだが、彼は庭先で見かけた桃子を素直子だと勘違いしているので、二人はお互いに気づかないまま、すれ違いを繰り返していく。一方、沖縄人に自分を殺してほしいと、その相手を探す老人がいる反面、本土の人間を殺したいと願い、相手を探す男がいる。三世代それぞれの者たちの思いは交錯し、沖縄の青い空に溶け込んでいく……。
解説ヴェネツィア国際映画祭招待作品。
キーワード 邦画 ヒューマンドラマ スタッフいちおし 青春 ブログ掲載作品 ドラマ 歴史
スタッフコメント印象的な台詞回しのリズムだったり、俳優の身振りの美しさとその運動にキャメラが呼応するという意味において、優れた演出が施された映画はすべてミュージカルだと思っていますが、大島渚の作品も例外ではありません。その中でもとりわけ本作が強い印象を残すのは、りりィの強烈なしゃがれ声によるでしょう。一度聴いたら一生忘れられないあの声は、非職業俳優が多用される大島渚作品の中でも異彩を放ち、ギリシャ彫刻のように美しい顔貌とのミスマッチがさらにその印象を深めさせます。その上で、新人女優とベテラン職業俳優、非職業俳優らが混然一体となりつつ、調和を拒否しながらそれぞれの発話の固有の特徴を存分に発揮させる様は、あたかもオーネット・コールマンやアルバート・アイラーといったフリージャズの演奏を目の当たりにしているかのようでもあります。結果的に得も言われぬ不思議な感動を訪れさせてしまう大島渚の超絶技巧的な演出には舌を巻くばかりです。(スタッフT.M.)【ブログ掲載作品】