天才的な技能を駆使し、古い家電からロボットまで修理を請け負う工房で働く16歳の倫太郎。ある日、ひとり暮らしの老婦人からAIBOの修正依頼が舞い込む。時を同じくして、倫太郎は発声障害のある14歳の少女すずめと出会う。すぐに仲良くなったふたりは、依頼品のAIBOと共に20年ぶりに復活した榛名湖のダイダラ祭りへと向かう。湖には「甦りの伝説」があり、願いが叶うと亡くなった人が甦るという。その帰り道、AIBOがとある録画映像を映し出したことで、倫太郎も知らなかった過去が明らかとなっていく―――。
2011年。東日本大震災で未曽有の被害を受けたたくさんの人たち。その中で、被災した宮城県から栃木県鹿沼市に引っ越して来た母娘がいた。鹿沼でほうき職人として伝統を守ってきた男は、家業だけでは生活が出来ないため副業として塾を経営している。男は宮城から鹿沼にやって来たその母子家庭の娘を支えてやろうと月謝を取らずに塾に通わせていた。高校受験を控えたその娘はしかし、心に負った震災の傷が癒えずに塾を休みがちになる。どうにかしてやりたいと思うが不器用な男は何もできない。さらに自分には実の娘がいて、娘としては他人の娘にばかり優しくする父が面白くない。見かねた妻がたしなめるが男はわかっていない。やりきれない心と心がすれ違い交わりそうで交わらない。息苦しい暮らしの中で娘たちは何かを見つけるのか――
順調とは言えない毎日、幼い頃から抱く父への不満、心に燻る微かな想い…生まれ育った町に帰り、未来に向かって走りだした先でみつけた“大切なもの”とは―。大学進学を機に上京し役者を目指す大河(森崎ウィン)は、ある日突然、地元で暮らす幼馴染の美帆(深川麻衣)から父(西村まさ彦)の急死を知らされる。父はラリーで数々の栄誉に輝いたメカニックで、今は豊田市の外れで「北村ワークス」を営んでいた。しかし、大河は幼い頃死別した母を想い、家庭を顧みなかった父を今も許せておらず、釈然としない思いのまま久しぶりに故郷へ帰る…。実家ではエリート銀行員の兄(佐藤隆太)が、優秀なメカニックの父なしに経営存続は難しいと考え、「北村ワークス」を畳む決断をする。一方、大河は実家で兄と遺品整理する中で父の知らなかった過去に初めて触れる。さらにシングルマザーとして奮闘する美帆や、父が若き日にともにラリーをめざした親友・宮本武蔵(竹内力)、路頭に迷う従業員(田中俊介、小林きな子、有福正志)たちと向き合ううちに、父の残した本当の思いに気づき、自分自身と仲間たちの再起をかけてラリーにチャレンジしようと決意する。しかし、素人の大河、頼りない仲間たちとの挑戦には、予想もしていなかった困難が待ち受けていた――。
1996年、関東の郊外、埼玉県岩槻市。暴力団「青葉会」が支配する大宮周辺では巨大暴走族が蔓延り、日々若者の抗争が絶えなかった。そこで一躍名を上げていたのが、県下一の勢力を誇る暴走族「桜神會」(おうじんかい)の吉田正樹(奥野壮)だ。しかし、その活躍を面白く思わない青葉会と、その傘下に入った暴走族「魅死巌」(みしがん)の企みにより正樹は少年刑務所に送られてしまう。少年刑務所での酷い仕打ちに抵抗する正樹だったが、娑婆に残った桜神會のメンバーが次々と青葉会に買収され、妻や娘も不当なゆすりに遭っていることを知る。正樹は青葉会や魅死巌への復讐を誓い、一刻も早く、この灰色の壁を出るべく、まずは模範囚になることから始めるのだった。いま、ある男の人生を賭けたリベンジが静かに始まった―。
かつてシンガーソングライターとして活躍していたジェシカ。今は音楽を諦め、心臓病を抱える父親の金物店を手助けしていた。久しぶりにLAの音楽業界で働く親友ボニーのもとに遊びに行く予定だったジェシカだったが、自分の代わりに店を見てくれるはずの弟にドタキャンされ、結局は残るハメに。そんな彼女が父親の昔馴じみのチェンバース牧師に依頼され、教会の聖歌隊を指導することに。聖歌隊は教会の再起をかけた100周年記念式典で歌を披露するはずだったが、指導者が本番の3週間前に逃走。そもそも彼らにはきちんとした指導もされていなかった。聖歌隊は古臭い定番曲すら歌えず、執事はジェシカの失敗を願うなど、さんざんな初日となるのだが…。
交通事故で両親を失い、いきなり一家の主となったヨンジュ(キム・ヒャンギ)は自らの学業を放棄しても弟ヨンイン(タン・ジュンサン)の面倒だけはみようと決意する。しかし、ヨンインはそんな姉の思いをよそに、非行に走り問題を起こしてしまう。示談金を用意しなければヨンインが少年院送りになるという状況に直面したヨンジュは、両親の事故の加害者であるサンムン(ユン・ジェミョン)を訪ねるが…。
30歳を目前にした功一は、東京での仕事を捨て、函館の空き家になった実家で暮らし始める。何も告げず東京に残してきた愛人に電話をすると、女は一人の若い女性との出会いを予言する。ある一夜、功一は場末の裏通りで亡き父に似た流しのアコーディオン弾きとすれ違い、昔馴染みのバーで働き始めたユミコを知る。そして二人は互いの過去や孤独を語りあい、次第に思いを深め合っていく。ユミコと一緒に暮し始めたある夜、静まりかえった部屋で功一は死んだ父と出会う。功一はユミコとの将来を伝えるが父は何も答えてくれない…。
内モンゴルのフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦。夫のチョクトは都会での生活を望んでいるが、妻のサロールは今の暮らしに満足している。どこまでも続く大地、空を流れる白い雲。羊は群れをなし、馬が草原を駆けぬける。しかし、自由なはずの草原の暮らしにも変化が訪れ、徐々に二人の気持ちがすれ違いはじめる。そして、ある冬の夜、二人は大きな喪失を経験する。その日を境に、サロールと草原で生きる覚悟を決めたチョクトだったが…。
神奈川の山間の町・下村。ひょうきんな父と、優しく聡明な母の愛情を一身にうけ育ってきた大塚あやめは、高校卒業後は東京の専門学校に進学することを決めている。そんなある日、18年前から絶縁状態だった姉・すみれが帰ってくる。あやめと同い年の娘・茉祐子をつれて。自分の知らない家族の姿に戸惑い、受け入れられないあやめ。しかしすみれの過去の想いを知り、本当の「家族」の意味に気づいていく…。故郷からの旅立ちを前に葛藤し、時に真正面からぶつかっていく少女の成長、そして家族や故郷の人々の深い愛情が胸に迫る。
ベトナムで日本語教師として働く日本人女性・小松みゆき氏が認知症の母との暮らしをつづった「越後のBaちゃんベトナムへ行く」を、フィクションを交えながら松坂慶子主演で映画化した人間ドラマ。日本で離婚した後に憧れの地ベトナムへ移住し、日本語教師として働いているみさおは、認知症が進行しはじめた母を義兄が施設に預けようとしていることを知り、母をベトナムに連れて来ることを決意する。母は慣れない土地での生活に戸惑いながらも、ベトナムの人々の温かさに触れるうちに少しずつ笑顔を取り戻していく。
夏の終わり、父のルイジと母のマリアと三人で休暇を過ごしたダフネ。しかし、楽しいバカンスが一転、帰り支度の最中に突然マリアが倒れてしまう。すぐに病院に運ばれるが治療の甲斐なく、帰らぬ人に……。あまりに唐突すぎる母の死に、ダフネは泣き叫び、感情を露にする。ルイジはそんな彼女を心配し、必死に落ち着かせようとするが、ダフネは辛く当たってしまう。マリアの葬儀が終わり、普段の生活へと戻る二人。ダフネは、元来の明るさと、勤務先のスーパーマーケットの同僚や友人の支えによって、少しずつ日常を取り戻していく。一方、気丈にふるまっているようにみえたルイジは、喪失感と不安で押し潰されそうになっていた。一家の精神的支柱であったマリアがいなくなってしまった今、ダフネと二人だけで、どう生活していけばいいのか。そんな父の異変に気付いたダフネはある提案をする。それは、母の故郷コルニオーロへ歩いて向かう、ことだった……。
軍事法廷では、全米が注目する裁判が開かれていた。アメリカ政府の建物を爆破し、多くの死傷者を出した罪を問われている被告人の名女・ジャンヌ。神の声を聞いて行動したと主張したことで、キリスト教信者から“オクラホマの乙女”と呼ばれる女だった。マスコミは遺族のつらい心情を書き立て、極刑を望む論調を繰り返し報道するもものの、ある者は彼女を聖女だと言い敬い、ある者はテロリストだと言い憎みを募らせる。ジャンヌの扱いに苦慮した軍の上層部は、カウンセラーによる懐柔や処女検査などで精神と肉体に揺さぶりをかけるが、彼女の意見が覆ることはなかった。そして遂に業を煮やした軍上層部は、復活祭の日もって判決を下すことを決める。
葬儀屋を営みながらそこを自宅としても使っているベルナルドと妻のエステラ、そしてベルナルドの連れ子であるイリーナ。表向き、うまくいっているように見えるこの家族は、それぞれお互いがお互いに不満を抱えていた。そしてもうひとつ、この家族には悩みがあった。それは葬儀場で起こる不可解な恐怖現象の数々。ある日、娘イリーナはついに我慢することができず祖母の家に逃げ込んでしまう。そしてその日を境に、不可解な現象はさらに頻度を増していく。その原因を探るため、霊能力者を自宅に呼ぶ妻エステラ。そこで彼女は驚くべき事実を知ることとなる。なぜこの家族が狙われるのか…。家族に迫る恐怖の正体とは…。そして訪れる激しくも悲しい結末とは…。そこには、ある人物が企てた残酷な計画が関係していた。単なるホラーの枠には収まらない人間ドラマ、美しいカメラワーク、そして強烈な音楽。新進気鋭の監督が撮る「葬儀屋の秘密」が、ホラーの新しい扉を開いていく。
大学に入学した柴原は、伊藤、橘、永井という3人の男子生徒と体育館で出会い、友人になる。学校では一緒にいる4人だが、それ以外の関わりはなく、普段何をしているかはお互いに知らない。生活のため続けるバイト、怪しげな先輩を介した怪しげな仕事、誰にも言えない心の悩み。知ろうとする度に、深まっていく溝。学生生活の終わりに、彼らを待ち受けているものとはー。
ある日、誠(安楽涼)の兄が犯罪を犯した。それを苦にした父は自殺し、誠は母親に助けを求めたが、母は助けてはくれなかった。誠は家を飛び出し、自分を傷つけてくれるものを探した。そして、一t人の浮浪者に出会う。彼との出会いをきっかけに、誠の生と向き合う音が静かに響き始める。
考古学者の父を亡くした6歳のサリー。南米マヤ・インディオの言い伝え、“人は死ぬと月へ行き、選ばれた特別な子と話をする”という伝説を信じ、月からのメッセージを待つために、サリーは口を噤み神秘的な沈黙の世界に閉じこもってしまう。次第におかしな行動を繰り返すサリーを心配した母親ルースは、精神科医ビアランダーに診せるも治療は功を奏さず、ルースとも意見が対立する。そんなある日、ルースはサリーが建てた不思議な“カードの塔”を発見する。
沙里が11歳の時に両親が離婚し、母は大好きな弟を連れて出ていった。3年後、だらしのない父親のもとで暮らす沙里は、部費すら払えないギリギリの生活の中で、陸上部エースながらも傍若無人に過ごしていた。そんなある日、沙里はスーパーで弟と再会するが、その傍にいたのは沙里の母と、沙里とは犬猿の仲の陸上部部長・雪菜だった。
若者が都会に出て行き、活気を失った地方の町に、奇妙なヘルメットを持った神崎が現れた。ヘルメットの力で町は活気づき、神崎は町長から町にとどまって活性化するよう依頼される。ただ神崎には謎めいた過去があり、彼が町に来た本当の理由を知る者は誰もいなかった。
愛する息子ウリのために人生を捧げてきた父アハロンは、田舎町で2人だけの世界を楽しんできた。しかし、別居中の妻タマラは自閉症スペクトラムを抱える息子の将来を心配し、全寮制の支援施設への入所を決める。定収入のないアハロンは養育不適合と判断され、裁判所の決定に従うしかなかった。入所の日、ウリは大好きな父との別れにパニックを起こしてしまう。アハロンは決意した。「息子は自分が守る―」こうして2人の無謀な逃避行が始まった。
アメリカ・ニューヨーク。生まれた時から知らず知らずのうちにツキに恵まれていた27歳のフランク。ある日、質店で小切手を換金した際に、店主から「何か買え」と言われたフランクは、興味がなかった1ドルの宝くじを1枚購入。するとその後、なんと賞金額620万ドルの宝くじの最終候補50人に選ばれる。一方、フランクの父親はギャンブルに浸り金をスッてばかり。どうやらギャングに1万ドルもの借金をしていることが判明し、フランクは最終候補者になった夜、ある一大決心をする。
都会で暮らす画家のサラは、自作の絵を批評家に、“技術的には優れていても魂がない”と酷評され、さらには会場に来ていた彼とも衝突し、別れを切り出されてしまう。落ち込んだサラは母が一人で暮らす家へと立ち寄った。すると、思い出のある祖母の家の周辺一帯にショッピングモール建設計画があることを知り、売却を阻止するべく、サラは母を連れて郊外の故郷へ。早速、市議会議員で弁護士のロジャーに相談したところ、解体予定の教会が国の文化財に指定されれば、建設計画を阻止できると教えられる。そんな中、サラは母の昔の恋人ラリーと出会う。
NY在住キャリアウーマンのテリーと、生まれ育った地元で仲間と農場を共同経営している妹のマンディ。二人の両親は温室で栽培した生花店を営んでいたが、実態の経営は火の車だった。だが愛する家族のため、父はその事実を隠していた。そんな父が復活祭の日に突然倒れ、亡き人に。突如、会社を解雇されたテリーは再就職のため奔走していたが、帰郷して家業の生花店の立て直しに動き始め、マンディの協力も仰ぐ。だが、普段は自分の都合ばかりを優先する姉のことが面白くないマンディは何かと対立。その上、生花店を手伝うサムとテリーをくっつけようとする母を見て、マンディはついに不満を爆発させてしまう。
中年男パヴカは気難しい父ヴァシルと不仲だ。母は父へ「大事な話がある」とだけ電話で告げたのち亡くなった。父は母の最期のメッセージを知ろうと、霊能者の助言により森で一夜を過ごし、行方不明になる。パヴカは暴走する父を追いかけながら、家に残した妊娠中の妻が食べたがっている「マルメロのジャム」を探し回るが手に入らず、盗みを企てる。愛に突き動かされ奔走する親子のおかしくも愛おしいブルガリア発ヒューマンドラマの傑作。
単線列車の走る長閑な田舎。50歳独身のタカシには、夢も仕事も家もない。認知症の叔父の介護を条件に、本家に居候させてもらっている身だ。叔父が亡くなり、その息子のミツアキが帰ってくる。幼馴染のショウも交え、再会を果たす旧友三人。叔父の釣り堀を営みながら、楽しく過ぎていくタカシたちの生活。そんな頃、東京からある一家が引っ越してくる。田舎でのナチュラルライフに憧れ、古民家カフェ開業を夢見る一家。彼らはタカシの住む美しい茅葺の本家に目を付ける。タカシたちの平穏な日常は、徐々に崩れ始めていく。
バーで用心棒をしているダンは、月額3000ドルの薬を購入してきた22年目のHIV陽性患者。これまで医療支援プランのお陰で何とかやってこられたが、母から受け取った100ドルの小切手をうっかり貯金したことで低所得者の対象から外され、保険の補助を失ってしまった。ダンは高額の薬をこれまで通り受け取るため、あの手この手を尽くすもなかなか結果を出すことができないでいた。一方、世話になっているバーのオーナー夫妻が些細なケンカから別居に発展し、心配したダンとルームメイトのポーラは彼らのために尽力するのだが、その頃からダンは体に異変を感じ始め…。
クルスはサンフランシスコで朗読会や講師などで生計を立てて暮らす、サンタフェ出身の詩人。彼の言葉は文学的で、生徒や同僚からも一目置かれていた。美しい画家の恋人と過ごすプライベートも充実し、豊かではないが満足のいく生活を送っていた。ところがある日、弟の妻から電話がかかり、実父が随分前からすい臓がんを患っていたことを聞く。動揺したクルスは仕事を整理し、残された時間を父と過ごすべく、3ぶりに故郷へと戻った。しかし、故郷を捨てたように出て行ったクルスを歓迎するわけでもない父、批判的な弟、寄ってくる酒と麻薬と暴力に身を置く昔の知人たちと、クルスはすぐに帰郷を後悔するのだが、父の体調は悪化の一途を辿り…。
2018年夏、第100回記念大会を迎えた高校野球選手権。大会歌は「栄冠は君に輝く」の作詞は、加賀大介(石川県根上町出身)でした。大介は1914年に中村義雄として、農家に生まれました。16歳の時、裸足で野球をしていて、右足指先をけが。治療を怠ったことで、右ひざから切断することになる。絶望の淵に落ちた義雄は、やがて文芸の道を目指し、”投稿生活”を始めたのです。「加賀野短歌会」を主宰し、昭和20年太平洋戦争が終わり、戦後民主主義のなか、演劇活動を始める。そのころ、運命の女性が登場します。それは高橋道子で、加賀野短歌会に参加。昭和23年6月、学制変更により第30回高等学校野球選手権大会に因み、大会歌の作詞が公募された。5,252編の中から選ばれたのは、加賀大介(のちに改名)の書いた「栄冠は君に輝く」だった。小説家を目指した大介は、志半ばの昭和48年、がんのために死去。この映画は70年間歌い継がれた「栄冠は君に輝く」の誕生秘話と大介と家族の物語です。
イタリア北部・ウーディネ。スターを夢見るロレンツォは、愛情深い里親に引き取られ、トリノからこの町へやって来るが、奇抜な服装で瞬く間に学校で浮いた存在に。クラスのはみ出し者だったブルーとアントニオと意気投合し、3人で友情を育んでいくが、ロレンツォのある行動がきっかけで少しずつ歯車が狂い始める――。
阪神淡路大震災ですべてを失くしたケイコ(桃井かおり)は、ひとり淋しく暮らしていた。震災から20年。ラトビアの首都リガで着物ショーに参加したケイコは、本番中の舞台裏で行方不明になっていた夫(イッセー尾形)と再会する…。
20歳のルーシーは、男の子とキスをしたことも、働いたことも、本当の友人を持ったこともなかった。彼女のいちばんの―おそらくただ1人の―理解者は、母親のクレア。ルーシーを外の悪い世界からずっと大切に守ってきた。自分の末期の病さえも隠しながら…。クレアの妹ケリーは、手遅れになる前に娘に本当のことを告げるようにと急かす。何かが母に起きていることに気づいたルーシーは、早く自立した大人にならなくてはと、焦って就職面接を受けに行く。その道中で目にした「フェリーニ映画祭」と題されたきらびやかで怪しい劇場。吸い込まれるように入っていったその場所で、『道』にまたたく間に心を奪われる。これまで慣れ親しんだハッピーエンドとは違う、巧妙に不可解に作られた悲喜劇。フェリーニの魅惑の世界にのめり込んだルーシーはいてもたってもいられず、フェリーニを探すためイタリア各地を巡る旅へ出る。そこで待ち受けるのは、フェリーニ作品の世界に迷い込んだようなファンタジーや悪夢、胸高鳴るラブストーリー。彼女の発見の旅と人生は、段々と死の足音が近づいている母クレアとは対照を成す。離れていても繋がっている二人。真実と虚構が幻想的に絡み合いながら、ルーシーの「フェリーニを探す旅」は最終地点へと向かっていく。
日本、現代――いじめらっれ子を守る心優しき女子高生・光。3年間の交際を経て、恋人と婚約した青年・陽。被災地にボランティアへ通う青年・健太とその姉・マナ。幸せな日々はいつまでも続くと思われたがある日、人生は一変する。無差別連続殺人事件、何者かによるレイプ、交通事故。予期せぬ悲劇が彼らを襲う。被害者になった者、加害者になった者。大切なものを失った彼らの運命は絡み合い、交差し始める……
街の片隅にあるスナック。表向きこそスナックだが、実際は別部屋でホステスと遊べる店として営業を続けていた。美咲は一人息子の凌空のため金になるなら何でもやってきた。ある日のこと、店に一人の男がやってくる。男は部屋の窓辺から外を覗き続ける不思議な客だった。
他人の戯曲を盗んで発表したことで、一躍成功をつかんだ男ベルトラン。2作目を期待されるがペンは進まず、パトロンからは矢の催促が。執筆の場である別荘に着くと、吹雪で立ち往生した男女が窓ガラスを割って入りくつろいでいた。腹を立てたベルトランは、バスタブにつかっていた娼婦エヴァに文句を言おうと近寄るが、彼女に一瞬で心を奪われる。次作の題材という名目でエヴァに近づくが冷たくあしらわれ、思うようにならない関係に苛立ちを募らせたベルトランは、周囲の人間を巻き込み官能と破滅の道を突き進んでゆく……。
几帳面な性格だが、植物が苦手なために、庭を荒れ放題にしているベラのもとに届いた撤去勧告。“一ヶ月以内に庭を元どおりにできなければアパートを出て行くこと”。」何から手をつけていいかわからないベラは、料理人ヴァーノンの助けもあって、犬猿の仲だった隣人アルフィーの力をかるることになり…。
消防士を定年退職し、妻・夏美の精神病院入院をきっかけに北陸の田舎町から東京近郊に暮らす息子夫婦の元に身を寄せることになった馬野杢平。彼は大菊の厚物を仕立てることでは北陸の名人と呼ばれる腕前を持っている。ある日、地元の菊同好会の集まりで、老人相手に援助交際をしている音大生のミハルを紹介された杢平は、彼女の道案内で隣町に住む黒瀬の家を訪ねた。黒瀬は全国的に名の知れた厚物作りの名人で、杢平が菊にのめりこんだのも、少年時代、北陸に疎開してきた黒瀬が作った厚物を見たことが原因だった。しかし、偏屈で欲深い黒瀬は杢平を冷たくあしらう。だがミハルには興味を抱き「ミハルを紹介すれば、とっておきの肥料を教える」と杢平に迫るが.…。
メキシコのとある村。フアンは愛らしい子供と美しい妻ナタリアとともに何不自由ない恵まれた生活を送っていた。ところが、ある夜、赤く発光する“それ”が彼の家を訪問したときから、なにげない平和な日常が歪みはじめる。ヒカリと闇が互いに戯れるがごとく交わる世界の断片は、1発の銃声によって新たな位相に導かれていく。フアンの家に現れた“それ”はいったい何だったのか?禍をもたらす「悪魔」なのか、それともどこかに彼らを導こうとする「神」だったのか…。
取り立ての厳しい貸金業者クレメンテがある夜帰宅すると、自宅に女の子の赤ん坊がいた。彼が関わった売春婦の誰かが母親だとうことで、母親を捜す間、隣人の女性ソフィアが赤ん坊の面倒を見ることになる。信心深いソフィアは赤ん坊が、10月に現われるという“奇跡の主”だと信じてしまう。クレメンテはソフィアや赤ん坊の存在を意識することで、自分に足りない人間らしさを意識するようになる。
新宿駅前で街頭劇を行う唐十郎。青年が紀伊國屋書店に入っていき、万引きで女店員に捕まる。青年は鳥男、女店員はウメ子。一方、酒場で性談義をする大鳥組の俳優たち。新宿の不穏な熱気は混沌と幻想を呑み込んでいく。
大島渚最後のATG映画。素直子は父の婚約者でピアノの家庭教師でもある桃子と本土復帰直前の沖縄にやってきた。数ヶ月前、素直子は大村鶴男と名乗る沖縄の青年から手紙をもらい、自分たちは兄妹かもしれないというので、鶴男を訪ねて沖縄にやってきたのだった。下船した素直子はさっそく観光客に沖縄語を教えて金を稼ぐ青年と知り合い、親しくなる。実は彼こそが鶴男なのだが、彼は庭先で見かけた桃子を素直子だと勘違いしているので、二人はお互いに気づかないまま、すれ違いを繰り返していく。一方、沖縄人に自分を殺してほしいと、その相手を探す老人がいる反面、本土の人間を殺したいと願い、相手を探す男がいる。三世代それぞれの者たちの思いは交錯し、沖縄の青い空に溶け込んでいく……。
1942年、ジャワの日本軍俘虜収容所。まだ夜が明けきらない薄闇の中、日本軍軍曹ハラは英国軍中佐ロレンスを叩き起こす。朝鮮人軍属が白人俘虜を犯すという破廉恥な事件が起きたため、ハラが独断で処分する立会い人として、日本語を自由に操るロレンスが必要だったのだ。そこに収容所長のヨノイ大尉の気合が響く。隙を突いて朝鮮人軍属は銃剣を自らの腹に突き立てる。ジャカルタの軍事裁判で英国軍少佐セリアズが裁かれている。彼に熱い視線を送るヨノイ。茶番の処刑劇を経て、セリアズは収容所に移送される。そして、それがすべての厄災の始まりだった……。
少女は夢に生き、青年は夢を捨てて生きてきた――オペラ歌手を夢見、名門女子高の合唱部でソロを歌う岩田真理子(安藤サクラ)は、ふとしたきっかけで一人の青年(佐々木崇雄)に出会う。大事な楽譜をなくされた真理子は、その償いとして青年に学校帰りのボディガードになってほしいと頼む。次第に親密になっていく二人だったが、青年はいつまでたっても自分の名前を明らかにしない。在日朝鮮人三世、趙聖文(チョ・ソンムン)が彼の名だった。そんななか、真理子は合唱部のソロを降ろされ自暴自棄に。一方、聖文は悪事に手を染めるようになる。互いに惹かれ合いながらも溝が深くなっていく二人・・・・・・。
「何事もつつみ隠さず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合う。それが私たち家族の決まり」高度経済成長期に造られたニュータウンも今や「ダンチ」と呼ばれる集合住宅にすぎなくなっていた。京橋家の人々は“家族間では秘密をつくらない”という自分たちでつくったルールを守ることもできず、それぞれ誰にも言えない秘密を持っていた――。娘のマナは、学校をサボタージュし「ディズカバリーセンター」を呼ばれる巨大ショッピングセンターで時間を過ごし、時には見知らぬ男性とラブホテルに向かう。弟のコウもまた、学校に行っていないようだし、父・貴史は浮気に忙しく、長年の恋人・飯塚にストーカーまがいに付きまとわれたり、新しい恋人ミーナの若さに振り回されている。妻・絵里子もベランダのガーデニングに丹精を込めつつも、内心、母・さと子とのこれまでの関係に悩み、また、自分がかつてひきこもりの少女であった事実をトラウマとして抱え、生きている。ルールを言い出した彼女ですら、「わたしには、家族にたったひとつだけ秘密がある」――。ふとしたきっかけから、ミーナがコウの家庭教師として京橋家に乗り込んできた!“存在するはずのないお互いの秘密が暴露されはじめて・・・・・・・。
郊外から都心へ向かう電車に一人揺られている、ひかり(蓮佛美沙子)。秋葉原で起きた事件で恋人の健治を失った日を境にして、現実世界は遠のき、ひかりは健治と過ごした時間だけを糧にして生きていた。家に引きこもり、一人で食事をし、庭にパンジーを植え育てる日々。優しく見守ってくれる母や友人とのたわいのないお喋りをするなかで少しずつ落ち着きを取り戻し、歩き出そうとしていた。緊張した面もちで秋葉原の駅に降り立つひかり。健治が好きだった街を、その面影を探し求めて歩き始める。ひかりは、健治を知っている人間を探して街を歩き続け、人々と出会う。そこで、佑二と出会う。そしてひかりの話に耳を傾けていた佑二が突然「これが現実なんだ」と言って指差したテレビには被災地の無惨な光景が映し出されている。目の前のものすべてが現実であり、本物であり、それを受け入れること、そして、「まだ、間に合うよ」と。二人は再会を約し、佑二は故郷へと向かい、ひかりは健治と一緒に乗る約束をした船に乗る。
26歳のペトリは、彼女にフラれたことをきっかけに、モノで溢れた自分の部屋には幸せがないと感じ、自分の持ちモノ全てをリセットする”実験”を決意する。ルールは4つ。「1:持ちモノ全てを倉庫に預ける。2:1日に1個だけ持って来る。3:1年間、続ける。4:1年間、何も買わない。」毎日、モノを1つ選ぶたびに、自分自身と向き合うペトリ。「人生で大切なものは何か?」、究極の”シンプルライフ”から見えてくる。
70歳の安吉は、妻に先立たれ、40歳になる嫁ぎ遅れの長女・徳子と暮らしている。長男、次女は家を捨てたも同然で別居しており、躁鬱病の徳子だけが父の世話をしている。徳子は自分が婚期を逃したのも病気になったのも父のせいと言ってはばからない・・・。
夏、蓼科の別荘に避暑にやってきた老女優、蓉子。彼女をその別荘で迎えるのは農婦の豊子。もう30年もの間続いてきた光景だ。言葉は乱暴だが、仕事はきっちりこなす豊子に蓉子は信頼を寄せている。そして、今年の夏も、いつも以上にいろいろなことが彼女たちを待っていた・・・。豊子の娘あけみは、実は蓉子の亡き夫の子だという告白から、互いの心の中が変化していく・・・。
夏休みが明けた頃、東京から新潟の山あいの高校に転校してきた宮沢真理(石橋杏奈)。都会で育った真理は、昔のままの木造校舎や雄大な自然の風景がとても新鮮で、安らぎを感じていた。ある日、見馴れない制服を着た美しい少女、岡部梨絵(竹富聖花)と出会う。神秘的な目でじっと真理を見つめる梨絵は、「帰ってきたの?」と言い、不意に口づけをする。呆然と立ち尽くす真理。気がつくと梨絵はその場から消えていた。それから真理と梨絵は不思議な交流を重ねていく。 やがて真理は、豊かな自然や友人、町の人々に囲まれて、傷ついた心を癒していくが・・・。
大正時代末期、広島の石内尋常高等小学校では、5年生の担任、市川先生(柄本明)が全力で生徒たちと向き合っていた。30年後、東京で売れない脚本家となっていた良人(豊川悦司)は、市川先生の定年祝いに出席。戦争をはさんで集まった同窓生それぞれの人生を目の当たりにした良人は、自身のふがいなさにがく然とする・・・。
1度見たらその個性的なキャラクターゆえに誰も忘れることのできない、戦後の日本映画界になくてはならない貴重なバイプレイヤーとして活躍した殿山泰司。自らを“三文役者”と称し、女と酒とミステリ小説を愛しつづけた彼のことを、みなは親しみを込めて“タイちゃん”と呼んだ。“タイちゃん”の半生は・・・。
大学生の鉄男は、バイト先のスーパーに客としてやってくる美しい年上の女性さとるに想いを寄せていた。ある日、鉄男は店内で貧血を起こしたさとるを助ける。これをきっかけに2人は付き合うようになる。さとるは、病的なほど繊細で人前に出るのを極端に恐れる一方、積極的に鉄男の体を求めてくるなど大胆な一面も見せる複雑な女性だった。鉄男はある時、さとるの不安定な精神状態が、異常な家庭環境にあると気付き、さとるを自宅から連れ出そうとするのだったが・・・。
東京での結婚式を目前に控えたみゆき(田中美里)は、交通事故でケガをした婚約者の母親のため、震災の傷あとが残る能登へ向かう。都会と異なる田舎の生活、厳しい姑・松子(泉ピン子)の態度に戸惑うみゆきは、東京に帰ろうかと悩む。しかし、地震で被災しながらも懸命に生きる人々の姿に心を打たれた彼女は、あることを思いつき・・・。
米・ロス郊外に暮らすラクラン・マクアルドニックは、グリーンカードを持つスコットランド人。かつては人気UKバンド“CRANKS”のメンバーとしてスポットライトを浴びていた彼だが、現在は、昼は農場でオーガニック栽培した農作物を市場で売る農夫として、夜は往年のバンド曲を紹介する人気ポッドキャスト番組のDJとして、貧しくも穏やかな生活を営んでいた。ある夜、バーを出て家路に向かった彼は飲酒運転で連行される。取り調べが進む中、彼が昔犯したドラッグ歴が判明する。釈放金も弁護費用も払えないラクランは、遂には永住権の剥奪・祖国への強制送還の危機にまで追い込まれてしまう。米国に残るため、彼に残された選択肢はただひとつ。米国居住権保持者で、ラクランの身元を立証し代理人となってくれる近しい人物が必要だった。彼は、かつてのマネージャーや元妻、娘と再会するのだが・・・。
オリンピック誘致の候補地として挙げられ、それに伴い撤去される方向で検討が進められていた大阪・通天閣。起死回生をねらい経営陣が倉庫から取り出したのはかつての人気者・ビリケン像。像と共に眠りから覚めた神様が東奔西走してもたらすご利益が評判となり、かつての勢いを取り戻した通天閣だったが、些細なことから肝心の神様は通天閣から追い出されて一転流浪の身に。超能力を失った神様は小学生・清太郎や心優しい学童保育の月乃先生と出会い、ビリケン像のもとに戻ろうとするが・・・。
幕末の動乱期、京都に新撰組さえ恐れる若き薩摩の侍がいた。彼の名は中村半次郎。人並み外れた度胸の良さと剣の腕で西郷隆盛に重用され、志士たちからは慕われ、脱藩覚悟で公家の暗殺を目論んでいた薩摩の永山弥一郎や、敵対していたが理解のある長州の鮎川小次郎と肝胆相照らす仲となる。やがて幕府との間で戊辰戦争が起こり、半次郎は永山らと数々の武勲をたて明治新政府の陸軍少将まで上りつめるも元勲たちの腐敗ぶりに憤慨し、大久保利通との権力闘争で敗れた西郷と共に故郷・薩摩へと下野する。その頃、近代化を急ぐ新政府による不平士族の弾圧に薩摩の不満は頂点に達していた。半次郎は不利を承知で西郷を擁して反政府の旗を掲げる決意をし、五十年ぶりの雪が桜島を覆った日、一万三千の薩摩軍を率いて東上した・・・。
原発の臨界事故が起きた町に母と暮らす青年・祐一郎。開業医だった亡き父の跡を継ぐべく勉強しているが、常態化した倦怠感の中、ギャンブルやドラッグの世界にハマリこみ、極秘で行なわれている放射線科の臨床試験アルバイトを知る--。借金返済を目的に、危険な治験に挑む祐一郎。彼の情報が入ったドッグタグのようなUSBメモリを首から提げながら……。
工業都市・川崎。貨物列車で石灰石が運び込まれるように、棟方はこの町の小さな電子工場にたどり着く。工場を経営する大森、従業員の毛、牧師松村、その娘ゆかり。取り巻く人々と向き合うにつれて、善良そうな人間の底に潜む醜さ、平凡な人生に漂う限りない悲しみ、当たり前の日常を支える不条理が次々と浮き彫りになっていく。
アナタの心を満腹にしてくれる<とってもオリジナルな幸せ>世の中で唯一の名字“ペンギン”夫婦が生まれたとっておきの物語。フリーライターとして東京で働いていた歩美(小池栄子)は、中国で出会ったカメラマン(ワン・チュアンイー)と国際結婚。しかしその後、夫の会社が倒産し職を失ってしまう・・・。歩美は落ち込む夫を気晴らしに石垣島へ連れて行く。そこで出会った大自然、温かい心、そして美味しい食材にすっかり二人は魅了され、移住する事に!職のアテも無い二人は共通の趣味である”食”を活かし、石垣島の食材を使った全く新しいラー油を作ろうと思い立つ。苦労しながらも気持ちを込めて作ったラー油。しかし一つも売れない。それでも前向きな二人に新たなチャンスが舞い込んだ。国際結婚、離島への移住、帰化申請。これは食べるラー油誕生の裏に隠されたとってもあったかい絆の物語。
江戸時代初頭。井伊直孝の大名屋敷に津雲半次郎という初老の浪人が現れ、切腹のため玄関先を貸して欲しいと言う。時は合戦もなくなった泰平の世、食い詰めた浪人たちが大名屋敷で切腹を申し出、金品や士官の口をせしめる狂言切腹が流行していたのだ。応対に出た井伊家家老の斎藤勘解由は、かつて井伊家に狂言切腹に訪れ「当家では狂言切腹は通用せん」と実際に腹を切らされた若い武士・千々岩求女の死に様を、津雲に話し始める…。
富山県高岡市。“スーパー智子ちゃん”こと斎藤智子は、あらゆる仕事をこなしながら子供たちを女手ひとつで育てあげてきた評判の肝っ玉母ちゃんだ。しかし娘の美咲は3年前に駆け落ちしたまま音信不通。やんちゃな息子・優介もまた智子について行けず、母親と“なーんつまらん、この町”から逃れるように上京を決意する…。ふるさとを飛び出していく息子を「人生で大事なのは、自分が生きた証を残すこと」という言葉で送り出す母親。ハチャメチャな元気と笑顔の裏側にあるまっすぐな想い。その切なさがやがて家族の絆をつなぎ合わせ、わたしたちの心にもつよく響く―。
青い空の下、グラウンドで無心に白球を追いかける若者たち。1943年、太平洋戦争が彼らから青春の日々を奪おうとしていた。「野球は敵国アメリカのスポーツだ」と六大学野球が廃止、さらに学生に対する徴兵の猶予が停止、彼らはバットを捨て、銃をとらねばならないのだ。しかし、早稲田大学野球部顧問の飛田穂洲は、出陣のその日まで学生たちと野球を続けると誓う。野手の戸田順治は、厳格な父から「この非常時に」となじられたが、志願した兄の「戦争は俺に任せて、お前は野球をやれ」という言葉を胸に練習に励む。「試合がしたい」選手たちの願いは、ただそれだけだった。ある日、慶應義塾塾長の小泉信三が、飛田に「早慶戦」を申し込む。二度と帰れないかもしれない若者たちに生きた証を残してやりたい―小泉の切なる願いを飛田も喜んで受けとめるが、早稲田大学総長は頑として拒絶する。飛田の強行突破で、遂に幕を開ける早慶戦。それは、別れであると同時に、明日への希望に満ちたゲームだった……。2008年制作。