アフリカ、マリ共和国のニジェール川沿いのティンブクトゥからほど近いある街で、少女トヤは、父キダン、母のサティマ、牛飼いの孤児イサンと、ささやかながらも互いに慈しみ合う幸せな生活を送っていた。そこにはいつも父の奏でる音楽があった。しかし、街はイスラム過激派のジハーディスト(聖戦戦士)に占拠され、様相を変えてしまう。過激派は厳格なシャリア(イスラム)法と恐怖政治により住民たちを支配してゆく。彼らは、音楽、笑い声、たばこ、そしてサッカーや不要な外出など次々に禁止し、毎日のように悲劇と不条理な懲罰を繰り返していく。それでも人々は隠れて音楽を楽しみ、少年たちはボールを使わずにサッカーの試合をし、静かに抵抗するのだった。そして極彩色のドレスを着た気のふれたひとりの女は、身体を張って不条理な暴力に対抗する。自由という、彼女の中で燃え上がる炎でもって。しかし過激派たちの、住民への圧政はより色濃くなっていく・・・。
8年の歳月をかけた最後のプロジェクト「GENESIS」。サルガドのレンズが見つめるのは、かけがえのない地球の姿。これまでサルガドは常に人間と向き合い、死、破壊、腐敗といった根源的なテーマを扱ってきた。だが、ルワンダ内戦のあまりにも悲惨な光景を前に深く傷つき、心を病んでしまう。故郷に戻ったサルガドを待っていたのは、まるで彼の心を写したかのように荒れ果てた大地だった…。長年連れ添い、いくつものプロジェクトに二人三脚で携わってきた妻レリアは、ある壮大な提案をする。それは、新しいプロジェクトの始まりだった―。 2004年から始められた「GENESIS(ジェネシス)」では今も地球上に残る未開の場所―ガラパゴス、アラスカ、サハラ砂漠、アマゾン熱帯雨林など、生と死が極限に交わる、ありのままの地球の姿がカメラにおさめられる。サルガドは言う、「GENESIS(ジェネシス)」とは地球への“ラブレター”なのだと。誰もが息をのみ、胸打たれる構図に込められたサルガドの想い。それは彼が、幾多の苦しみの果てに見い出した、希望への祈りなのだ。
メキシコのミチョアカン州。小さな町の外科医、ドクター・ホセ・ミレレスは、何年にもわたり地域を苦しめ続けている凶暴な麻薬カルテル“テンプル騎士団”に反抗するために、市民たちと蜂起を決行する。一方、アリゾナ砂漠のコカイン通りとして知られるオルター・バレーでは、アメリカの退役軍人ティム・フォーリーが、メキシコの麻薬が国境を越えるのを阻止するため“アリゾナ国境偵察隊”と呼ばれる小さな自警団を結成していた。二つの組織は徐々に勢力を強めるが、組織の拡大とともに麻薬組織との癒着や賄賂が横行してしまう。正義の元に掲げた旗は徐々に汚れ、善と悪のボーダーラインは不鮮明になっていく…。映画監督のマシュー・ハイネマンはメキシコ麻薬戦争最前線に乗り込み、決死のレポートでメキシコとアメリカの魔の連鎖、そして、肥大化した組織がたどる皮肉な秩序の崩壊を暴いていく。
独身男コルベインは子持ちの未亡人ソルヴェーイグに惹かれ、彼女も彼に惹かれている。しかし、村中がこの恋の発展を興味津々で見守るなか、なんと、馬同士の愛が先を越してしまう。果たして、彼らの複雑化してしまった四角関係のゆくえは・・・・!?アイスランドの美しくも過酷な大自然を舞台に繰り広げられる、人間と馬との予測のつかないストーリー。交差する悲劇と喜劇。そしてその結末は・・・・。
世界遺産に登録されたモロッコ北部の町、テトゥアン。26歳のマリクは定職にも就かず、2人の悪友アラールとスフィアンと、悪事で手に入れた金で遊び暮らしていた。そんなある日、酒場のダンサーでドゥニアという女性と出会い恋に落ちる。だが、彼女は売春婦の仕事もしていて、彼女を人生の裏街道から救うには金が必要だった。彼女が働いている店に麻薬密売の容疑で警察の手が入り、ドゥニアが逮捕されたことを知ったマリクは、かねてより恨みを抱いていた義父を麻薬密売人として警察に売り、代わりにドゥニアを釈放してもらう。ところが、これをきっかけにマリクは担当のデバス警部から情報屋として働くように命じられる。
これが“悪の正体”なのだろうか―――。60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は軍ではなく、“プレマン”と呼ばれる民間のやくざ・民兵たちであり、驚くべきことに、いまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは人権団体の依頼で虐殺の被害者を取材していたが、当局から被害者への接触を禁止され、対象を加害者に変更。彼らが嬉々として過去の行為を再現して見せたのをきっかけに、「では、あなたたち自身で、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけてみた。まるで映画スター気取りで、身振り手振りで殺人の様子を詳細に演じてみせる男たち。しかし、その再演は、彼らにある変化をもたらしていく…。
“モンタナ州のウディ・グラント様 我々は貴殿に100万ドルをお支払い致します”誰が見ても古典的でインチキな手紙をすっかり信じてしまったウディは、ネブラスカまで歩いてでも賞金を取りに行くと言ってきかない。大酒飲みで頑固なウディとは距離を置く息子のデイビッドだったが、そんな父親を見兼ね、骨折り損だと分かりながらも彼を車に乗せて、4州にわたる旅へ出る。途中に立ち寄ったウディの故郷で、デイビッドは想像もしなかった両親の過去と出会うのだが―。
これが最後の手品!!時代遅れのマジックを披露する老手品師タチシェフは、かつての人気をすっかり失い、場末のバーでドサまわりの日々。ある日、スコットランドの離島に流れ着いた彼は、やっと電気が開通したばかりの片田舎のバーで、貧しい少女アリスと出会う。