台北市内のガランとしたマンションの空き家を訪れる男女二人。女は、ステレオをあそこに、テレビはここに、と夢を膨らませている。男は気のない様子でバッティングの素振りのフォームをしながら「内装に金がかかりそうだ」、「わたし、今度昇進するから大丈夫」。女はアジン。不動産ディベロッパーで働くキャリアウーマンだ。男はアリョン。少年時代はリトルリーグのエースとして将来を嘱望されていたが、いまは家業を継ぎ、廸化街で布地問屋を営んでいる。二人は幼なじみ。過去にはそれぞれいろいろとあったようだが、なんとなく付き合いが続いている。順調に思えたアジンの人生だったが、突然勤めていた会社が買収され解雇されてしまう。居場所を見失ったアジンは、アリョンの義理の兄を頼ってアメリカに移住し新たな生活を築こうと、アリョンに提案する。しかしアリョンにはなかなか踏ん切りがつけられない。ここには少年野球の仲間もいるし家業もある。一度は決心して資金を作るため家も売るが、昔気質のアジンの父親が事業に失敗するとその肩代りに奔走することになる。すきま風が吹き始める二人の間に、ある過去の出来事が重なり、そしてやがて思いもよらない結末が訪れる……。
「私たち、一緒に映画を作りませんか?」小説家と女優、ふたりの女性の幸福なめぐり合わせが生んだ、とっておきの映画体験 長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ねる。ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラポレーションの行方は……。
映画の主人公は、1936年に亡くなったノーベル賞作家ピランデッロの“遺灰”である。死に際し、「遺灰は故郷シチリアに」と遺言を残すが、時の独裁者ムッソリーニは、作家の遺灰をローマから手放さなかった。戦後、ようやく彼の遺灰が、故郷へ帰還することに。ところが、アメリカ軍の飛行機には搭乗拒否されるわ、はたまた遺灰が入った壺が忽然と消えるわ、次々にトラブルが…。遺灰はシチリアにたどり着けるのだろうかーー?!
魔都 TOKYO。眼球を抉り取られた死体が発見された。淫靡で凄惨な、狩りの季節が始まる―。“生き別れた眼球”を探すため、カメラ片手に魔都TOKYOを彷徨う麻耶。浮遊するがごとく眼球を求め続ける麻耶の姿を記録する脳外科医と、麻耶の眼球を狙う黒ずくめの怪しい眼球コレクター。三人が一つの線として結ばれた時、血の惨劇が幕を開ける…。愛液と鮮血をまき散らしながら迷いもがく麻耶が、己の網膜に焼き付けたものとは一体何だったのか!?
愁いを帯びた瞳とあふれる好奇心を持つ灰色のロバ、EO。心優しきパフォーマー、カサンドラのパートナーとしてサーカス団で生活していたが、ある日、サーカス団から連れ出されてしまう。予期せぬ放浪の旅のさなか、善人にも悪人にも出会い、運を災いに、絶望を思わぬ幸福に変えてしまう運命の歯車に耐えている。しかし、一瞬たりとも無邪気さを失うことはない。
ロサンジェルスの街を車で流しながら視聴者からのコメントをもじった即興のラップを配信するミュージシャンのアニー。ロックダウンの息苦しさにうんざりし、かつてのバンド仲間でイギリスに住むストレッチをアポなし訪問する。今や配達員として生計を立てる彼を茶化し、気まぐれで車を拝借したアニーは、大金につられて奇妙なオーダーを受ける。それは想像を絶する恐怖の幕開けであった。
殺人罪で服役中の模範囚ヘリムは、刑期を2年残して特別休暇を取得し、母の墓参りに行こうと江陵行きの列車に乗るが、そこで犯罪組織に巻き込まれて追われていた青年ミンギと出会う。ミンギの執拗なアプローチで刑務所生活中に凍りついた心が溶けたヘリムは、ミンギと愛を交わすが、遠くへ逃げようというミンギの誘いを振り切ってヘリムは刑務所に戻ってくる。ヘリムは2年前の今日、湖畔の公園で再会を約束して出所し、雪を浴びながらミンギを待つが、ミンギは警察に逮捕されて刑務所に閉じ込められており、待ちに疲れて傷ついたヘリムはどこかへ行ってしまう。
1953年パリ。ある日、モンマルトルのヴァンティミーユ広場で、シルクのイブニングドレスを着た若い女性の刺殺体が発見される。血で真っ赤に染まったドレスには5か所もの執拗な刺し傷。この事件の捜査を依頼されたメグレ警視は、死体をひと目見ただけで複雑な事件になる予感がするのだった……。死体に所持品は残されておらず、事件の目撃者も、彼女が誰なのか、どんな女性だったのかを知る者もいない。そんな状況で、身につけていた靴や下着などとは明らかに不釣り合いな高級ドレスが彼女を特定する唯一の手がかりに。メグレ警視は、身元不明の彼女がどうして殺されなければいけなかったのか、彼女はどんな人生を送ってきたのかを明らかにするべく、捜査を進めていく。この事件に異常にのめり込んでいくメグレ。何が彼をこれほどまでに駆り立てるのか……。
8月の地中海。実業家夫人のラファエラは、召使いのジェナリーノをこき使っていた。ある日、彼女はジェナリーノにモーターボートで洞窟に向かうように命じる。しかし、途中でボートが故障、2人は無人島に辿りつく。何もない無人島でブルジョア育ちのラファエラは役に立たず、ジェナリーノは日頃の恨みを爆発させる。そうして主従関係が逆転する中、ラファエラは、ジェナリーノの野生的な姿に強く惹きつけられていくのだった。
1945年、第二次世界大戦末期のイギリス。戦地にいた夫の帰りを待つ妻のグレースは、孤島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。日光にあたると死んでしまう病に冒された子どもたちを守るため屋敷は昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗い。そこへある日、使用人になりたいという3人の訪問者が現れる。だが、それ以来屋敷では奇妙な現象が次々と起こりグレースを悩ませ始める…。
20世紀末のヨーロッパ。フィッシャーはかつての恩師オズボーンを訪ねる。彼の著作「犯罪の原理 (エレメント・オブ・クライム)」は、捜査官が犯罪者の視点に立って事件を追体験しながら解決へと導く方法論で、フィッシャーは自身の捜査哲学の中核を為すほどに影響を受けていた。しかしオズボーンは、かつて掲げた自らの理論を危険なでっち上げだと激しく否定する...。ある日、港で殺人事件が持ち上がり、フィッシャーはこの捜査を受け持つことになるが....。
自ら知的障がい者のふりをして、人々の偽善を暴こうとする活動グループ、“イディオッツ”。彼らは、人々の偽善的な反応を、挑発的なやり方で暴こうとしていた。ある日、彼らに遭遇したカレンは、最初は怒りを抱くも、次第に彼らに惹かれ、引き寄せられるようにグループと行動を共にするようになっていく。彼らは一軒家で共同生活をおくりながら、“白痴”のふりをすることで闘いを挑み、また、それを楽しんでさえいた。カレンもまた、“白痴”の演技をし始めるのだったが…。
グレースが父親と共にドッグヴィルを去った後、ギャング団は南部アラバマ州の大農園“マンダレイ”を訪れるが、そこには70年も前に廃止されたはずの奴隷制度が残っていた。グレースは、“ママ”と呼ばれる大農園の女主人と対峙し、黒人たちを開放する。マンダレイを去ろうとするも、「自由な」生き方を知らない黒人たちのために、この地に残る決心をするグレース。4人の部下と弁護士のジョゼフとともに、黒人主権の新しい共同体を作り、監督役として、その最初の収穫まではこの地に留まることにするが...。
2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエ(有鉄)は、マー(馬)家の四男。両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトン(有銅)の家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。一方、内気で体に障がいがあるクイイン(貴英)もまた厄介者だった。互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。ある日、家を建てるためにヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。ロバと、ヨウティエと、クイインと。力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった―。
コペンハーゲンの巨大病院(キングダム)。夢遊病者のカレンは、助けを呼ぶ謎の声に導かれキングダムへと辿り着く。数々の不可解な事件を解決するため、カレンは病院の用務係のブルザー、心臓外科医のユディットと手を組むが、悪魔の力に反撃されてしまう。一方、キングダムに赴任してきて間もないスウェーデン人医師のヘルマー・ジュニアは、亡くなった父スティーグ・ヘルマーの秘密を探り始めるが・・・。
退院したドルッセ夫人は直後に事故に遭い再びキングダムに舞い戻る。ユディットから生まれた赤ん坊のリトルブラザーは、新生児とは思えぬ異常な体格を持ち、生まれてすぐに喋りはじめる高い知能を持っていた。一方、ハイチから帰国したヘルマーは、自らが犯した少女モナに対する医療ミスの証拠を掴んだクロウスホイを黙らせるため、ハイチで手に入れた秘薬で毒殺を試みる。そしてついに、リトルブラザーの父親であるクルーガーが現れ、リトルブラザーの秘密を明かす…。
コペンハーゲンの古い洗濯池の跡地に建つ巨大病院、キングダム。デンマーク人嫌いのスウェーデン人医師ヘルマーは、神経外科の主任医師としてキングダムに赴任してくる。医師長の息子モッゲは仕事そっちのけでセクシー看護婦にのぼせあがり、父の医師長メースゴーは“朝の空気運動”に力を入れ、患者のことなどそっちのけである。ドルッセ夫人は仮病を使って入院し降霊術の会を開くことを趣味としていたが、あるとき病院内のエレベーターで少女の泣き声を聞き、その世にも悲しげな声の正体を求め探しはじめる。
1970年代初頭のスコットランド。キリスト教戒律の厳しいカルヴィン主義が支配する小さな村の教会で、信仰の厚い無垢な女性ベスは、よそ者であるヤンと結婚する。ベスは村から離れて石油採掘の仕事に就いているヤンが早く戻ることを神に願う。しかし、油田で発生した事故でヤンは重症を負い、一命は取り留めたものの全身麻痺となってしまう。ヤンはある日、「もうお前を抱くことはできない。別のセックスの相手を見つけ、その様子を話してくれ。」とベスに切り出す…。
わずか23人の住人しかいない、廃れた鉱山町ドッグヴィル。偉大な作家になることを夢見るトムは、ギャングに追われる美しい女性グレースを助ける。翌日、トムは村人たちに彼女をかくまうことを提案し、「2週間で彼女が村人全員に気に入られること」という条件つきの同意を得る。グレースは村人たちに認めてもらうため、肉体労働を始める。閉鎖的な村人たちは、熱心に足を運ぶ彼女に対して徐々に心を開いていく。しかし、住人の態度は次第に身勝手なエゴへと変貌してゆき…。
1960年代、アメリカの片田舎。セルマと息子のジーンは、温かい隣人たちに囲まれ、つつましくも幸せな日々を送っていた。そんなセルマには悲しい秘密があった。遺伝性の病のため、彼女は視力を失いつつあり、息子ジーンも手術を受けない限り同じ運命を辿ることになるのだった。ある時、セルマは、無理な労働による疲労と視力の悪化により仕事場でのミスが増え、遂に工場を解雇されてしまう。さらに家に帰ると、ジーンの手術代として貯めていたお金がなくなっており…。
1945年、第二次世界大戦後のドイツ。ドイツ系アメリカ人のレオ・ケスラーは、父の祖国であるドイツの戦後復興の一端の担い手になりたいと、単身でドイツにやって来た。叔父の助力でドイツの大鉄道会社ツェントローパに就職し、寝台列車の見習い車掌として汽車に乗り込むことになる。いつものように汽車に乗り込んだレオは、走る列車の中で、同乗していたフランクフルト市長夫妻の暗殺事件に遭遇する。犯人はレオが乗せたふたりの少年で、ナチス残党が組織する地下組織<人狼>の刺客だった…。
映画監督ラースと脚本家のニルスは脚本のデータがワープロから消えてしまい、内容を思い出せない二人は、「実はあの脚本は気に入らなかったんだ。」と開き直り、残り5日間で新たな脚本を仕上げることにする。二人が新たに書き始めたのは『エピデミック(伝染病)』と題した、死の伝染病が蔓延した架空の国で、理想に燃える若い医師メスメルが、病に冒された人々を救うために謎のウィルスに挑む物語だった。そのころ、現実世界のヨーロッパにも死のウィルスの影が忍び寄っていた…。
テレビプロデューサーのジェームズは、倦怠期の妻とは互いの不倫を認め合うものの、満たされない日々を過ごしていた。ある日、彼は車を運転中に事故を起こし、大ケガを負うが、同時に味わったことのない興奮を感じてしまう。彼は退院後に事故の相手の女性と再会するが、彼女もジェームズと同様に事故の快感を忘れられないでいた。そして同じ嗜好を持つ人々の集まりの存在を知った二人は、次第に禁断の世界にのめりこんでいく。
画家ニコラスとその恋人マリアンヌは画商に招かれ、老画家フレンホーフェルの邸宅にやってくる。フレンホーフェルは10年前、妻をモデルに自らの最高傑作『美しき諍い女』描こうとするが、完成直前にその制作を中断して以来、筆を握っていなかった。しかし彼はマリアンヌに“美しき諍い女”を見出して再び制作に挑むことを決意する。モデルと画家の緊張感ある関係は、次第に彼の妻リズやニコラスをも巻き込んでいき…。
モスクワから世界最北端駅ムルマンスクにあるペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったラウラ(セイディ・ハーラ)は、大学教授の恋人イリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)にドタキャンされ、ひとりで旅立つことに。恋人がもう自分に興味がないことを薄々感じる失意の中、出発した寝台列車の同じ6号客室に乗り合わせたのは炭鉱労働者の男リョーハ(ユーリー・ボリソフ)。リョーハは出発早々に酒に酔いタバコをふかす粗野な振る舞いで、傷心のラウラにとって最悪な旅のはじまりとなる。しかし、旅を共にするうちに、お互いの不器用な優しさや魅力に気付いていく・・・
世界の音楽やファッションなど、あらゆる芸術と文化に強烈なインパクトを与え、またヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨーク・ドールズの拠点であり、NYパンク・ロックシーンを生み出したことでも知られる伝説的ナイトクラブ、マクシズ・カンザス・シティ(1965-1981)。本作はこのクラブの歴史を綴った初のドキュメンタリー作品である。かのCBGBより8年ほど歴史は古く、芸術家、作家、俳優、ミュージシャンなど文化人の社交場でもあったこの店は、アンディ・ウォーホルと彼の取り巻きたちが集い、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップ、ルー・リードが同じテーブルを囲み、ジョン・レノンやミック・ジャガーらも度々訪れ、ピストルズ解散後のシドもステージに立った場所。これまで明かされることがなかったこのナイトクラブの成り立ちから終焉までの軌跡を、当時を肌で経験したスターたちが振り返る歴史的にも稀少な映像作品である。
香港の暗黒街でヤクザな暮らしを送るアンディのもとに、これまで会ったことのない従姉妹のマギーがランタオ島から訪れる。そこへアンディの弟分ジャッキーから電話が入る。借金の取り立てにてこずるジャッキーを助けるべく、アンディは夜の街へと走り出した。アンディとマギーは急接近するが、今度は借金取りに追われる側となってしまったジャッキーを助けに向かったアンディは、トラブルに巻き込まれてしまう。身も心もボロボロになったアンディは、ランタオ島に戻ったマギーと愛の日々を過ごすが――。
ヨディはサッカー場の売り子スーに話しかけふたりは恋仲となるも、ある日ヨディはスーのもとを去る。ヨディは実の母親を知らず、そのことが彼の心に影を落としていた。ナイトクラブのダンサー、ミミと一夜を過ごすヨディ。部屋を出たミミはヨディの親友サブと出くわし、サブはひと目で彼女に恋をする。スーはヨディのことが忘れられず夜ごと彼の部屋へと足を向け、夜間巡回中の警官タイドはそんな彼女に想いを寄せる。60年代の香港を舞台に、ヨディを中心に交錯する若者たちのそれぞれの運命と恋──やがて彼らの醒めない夢は、目にもとまらぬスピードで加速する。
当代きっての歌舞伎役者で誰もが知る女形のスター坂東玉三郎。虚構と現実をないまぜにした幻想的な作品を得意とするダニエル・シュミット監督が、女形という特異な存在を通して、ジェンダー、生と死、そしてフィクションとドキュメンタリーの境界線上に、虚構としての日本の伝統的女性像を浮かびあがらせる。「鷺娘」「大蛇」「積恋雪関扉」を演じる玉三郎の美しい舞台映像。そして、撮影後ほどなくしてこの世を去った女優・杉村春子、日本舞踊家の武原はんの語りや、舞踏家・大野一雄の荘厳な舞踏など、20世紀末日本の黄昏に消えゆくレジェンドたちの“最後の姿”を捉えた貴重な記録。
生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。主人公ケイコを見守るジムの会長を三浦友和が演じる。
その夏、秘密ができた。怪物のようだった父は家を出て行き、母さえも消えてしまえばいいと思ったあの日、19歳の「ソジョン」は血を吐いたまま亡くなった母と向き合う。母の遺体を浴槽に隠したソジョンは、安全な家を見つけるまでお金を貯めることを決心し、音楽に逃避しながら危うい生活を始める。皮肉にも母から離れたことでソジョンにとって生まれて初めての「自由」を手に入れ、彼女は徐々に遺体の存在を忘れていく。しかし、夏の終わりの空気の中で、遺体は徐々に腐敗し始め…
もうすぐ17歳になるプリュダンスは母を亡くしたばかり。父は海外出張、姉は母がいない自宅を離れてしまう。広いアパルトマンに一人悶々と過ごすも、刺激を求めて万引きをしたり不良少女のマリリンを通じて違法バイク・レースの世界に入り込む。同じ年頃のフランクと恋心なく彼と一夜を過ごすも心は決して満たされない。プリュダンスの身勝手な態度に激怒したフランクは別の少女と街の中をバイクで走り出す。だが、その直後にフランクは事故を起こしてしまう・・・。
1942年、第二次大戦中の中立国スイスの首都ベルン。フランス大使館主催の豪華絢爛なパーティーで、ひとり遠くを見つめる外交官ジュリアン・ロシェル。シャンパンの泡沫に誘われて、ある女のことを思い出す。かつて、狂ったように愛した女のことを──。ダニエル・シュミット監督作の日本での初劇場公開作として脚光を浴び、その後の『ラ・パロマ』(74)公開等に連なる熱狂的なシュミット・ブームの口火を切ったのが、この『ヘカテ』です。ひとたびその優美な肌触りに触れたら、独占したくなるシュミットの世界。その秘密の扉を開いた名作が完全修復され、流麗な姿でスクリーンに伻ります。外交官であり、亡命先のスイスでココ・シャネルの伝記も執筆した、戦間期の文壇の寵児ポール・モランの小説「ヘカテの犬たち」を下敷きに、ギリシャ神話の異形の女神ヘカテの物語を翻案、「恋」という人類最大の病にして謎(ミステリー)の極限を軽やかに描き切り、永遠のきらめきを放つ至高のメロドラマに仕立てあげました。
大都会・ソウルの片隅で生きる男女4人の殺伐たる生き様を抑制のきいたタッチで描いたシリアス・ドラマ。売れない三文小説家の危うい均衡に成り立つ生活ぶりと、彼と関係する二人の女性やその夫を抑制の利いた画面構成と洗練されたモンタージュを通して描く。ソン・ガンホの映画デビュー作品。
1976年結成、“ニューヨークのセックス・ピストルズ”とも言われカルト的人気を誇ったバンド、ザ・デッドボーイズ。そのバンドを率いたスティーヴ・ベイターの生涯を描いた唯一無二のドキュメンタリー映画が遂に日本上陸!オハイオ州ジラード出身の彼がバンドを結成するまでの歩み、メジャーデビューからたった一年後の衝撃的な解散、そこから続く新たな音楽活動。音楽とドラッグにまみれてなお人々を魅了し、パリでの交通事故という形で突如散った彼の僅か40年の軌跡を、稀少な映像と真の姿を知る仲間たちの言葉とで綴った衝撃作。監督はクラッシュやジョニー・サンダース、シド・ヴィシャスも手掛けた音楽ドキュメンタリーの名手、ダニー・ガルシア。
死期の迫った二人の重病患者、マーチン(ティル・シュヴァイガー)とルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)。病院で同室となった彼らは、死ぬ前にまだ見たことのない海を見ようと病棟を抜け出し、車を盗んで旅に出る。その車がギャングのもので、中に大金が積まれていることも知らずに。余命わずかで怖いものなしの彼らは道中、犯罪を繰り返し、ギャングと警察の両方から追われる羽目に…。
フランスの地方都市らしい。彼女は車を走らせている。彼女は家族を捨てて家出をしたのだろうか。海外資料にあるストーリーは「家出をした女性の物語、のようだ」という1行のみ。フランス公開時にも物語の詳細は伏せられ、展開を知らない観客が、ある真実に気づいたとき、心が動揺するほど感動したという。
留学先のスウェーデンでミニマルなライフスタイルを学んで帰国したデザイナーのジーン。かつて父親が営んでいた音楽教室兼自宅の小さなビルで、出て行った父を忘れられずにいる母、ネットで自作の服を販売する兄と三人暮らしの彼女は、ある日家をリフォームしてデザイン事務所にするべく、断捨離を開始する。洋服、レコード、楽器、アルバムーー友達から借りたままだったモノを返して廻り、元カレのカメラを小包にして送り返す。部屋が片付いて行くのと反比例して、心は千々に乱れて…。時は年の瀬、ジーンは新たな気持ちで新年を迎えることが出来るのか?
舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム。大義のため英国政府の警察となるラーマ。熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。彼らが選ぶのは友情か?使命か?
将来の進路も定まらず、まだ何者にもなれないナイーブな青年ヨンホ。韓国とベルリンを舞台に、折り合いの悪い父、夢を追って海外に旅立ってしまった恋人ジュウォン、息子の進路が気がかりな母との再会と三つの“抱擁”を通して、一人の若者の人生が紐解かれていく。誰もが経験する青年期の迷いや喪失、孤独を抱え、恋に夢に破れながらも、やがて心安らぐ温もりに満ちた瞬間が訪れる…。
1991年、クリスマス。英国ロイヤルファミリーの人々は、いつものようにエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集まったが、例年とは全く違う空気が流れていた。ダイアナ妃とチャールズ皇太子の仲が冷え切り、不倫や離婚の噂が飛び交う中、世界中がプリンセスの動向に注目していたのだ。ダイアナにとって、二人の息子たちと過ごすひと時だけが、本来の自分らしくいられる時間だった。息がつまるような王室のしきたりと、スキャンダルを避けるための厳しい監視体制の中、身も心も追い詰められてゆくダイアナは、幸せな子供時代を過ごした故郷でもあるこの地で、人生を劇的に変える一大決心をする。
その旅は、クリスマスの残酷な遊び事(ゲーム)からはじまった…。アーサー王の甥であるサー・ガウェインは、正式な騎士になれぬまま怠惰な日々を送っていた。クリスマスの日。円卓の騎士たちが集う王の宴に、まるで全身が草木に包まれたような風貌をした緑の騎士が現れ、恐ろしい首切りゲームを持ちかける。その挑発に乗ったガウェインは、緑の騎士の首を一振りで斬り落とすが、彼は転がる首を自身の手で拾い上げると「1年後に私を捜し出し、ひざまずいて、私からの一撃を受けるのだ」と言い残して去ってゆく。それは呪いと厳しい試練の始まりだった・・・1年後、ガウェインは約束を果たすべく、未知なる世界へと旅立ってゆく。
ホテルの部屋で恋人であるヤン・スジョン(イ・ウンジュ)を待っているキム・ジェフン(チョン・ボソク)。画廊を経営する彼は、テレビ番組のディレクターで、先輩でもあるクォン・ヨンス(ムン・ソングン)と一緒に展覧会を訪れた構成作家のスジョンと出会い、恋に落ちたのだった。酒を飲んだ後にスジョンから「お酒を飲む時だけ恋人になりましょうか?」と言われ、交際を始めたジェフン。スジョンとセックスをしようとしたジェフンは「初めてなの」という言葉を聞き、彼女が心を決める日を待っていた。一方、ジェフンからの電話を自宅で受けたスジョンも、2人のこれまでを振り返る。ジェフンと会った当時、スジョンは妻帯者であるヨンスとの苦しい恋愛の最中で、優しくスマートなジェフンに彼とは違う魅力を感じていた。
ウェイトレス兼ストリッパーのゾラはレストランで働いていたところ、客としてやってきたステファニと「ダンスができる」という共通点があることで意気投合し、連絡先を交換する。すると翌日、ステファニから「ダンスで大金を稼ぐ旅に出よう」と誘われ、あまりに急なことで困惑するも結局行くことに。これが48時間の悪夢の始まりだとは露知らず……。
ロサンゼルス。攻撃的なユーモアセンスをもったスタンダップ・コメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と、国際的に有名なオペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)。“美女と野人”とはやされる程にかけ離れた二人が恋に落ち、やがて世間から注目されるようになる。だが二人の間にミステリアスで非凡な才能をもったアネットが生まれたことで、彼らの人生は狂い始める。
根本昌平は売れない映画監督。7年前に初監督作とその主演女優と結婚したことで話題にはなるものの、映画自体は大コケでそれ以来映画は一本も撮っていない。そんな昌平が夢中になれるのは洒落たシステムキッチンに自らが立って作るフランス料理だった。ある日、昌平が数年前にCM撮影で訪れた時に仲良くなったアラニア島の日系二世、パナポラ・ハンダ酋長から手紙が届く。商用で来日するため、4月1日の夜に自宅を訪ねたいという。しかし、聞いたところによるとアラニア島では友情の誓いとして妻を一晩提供する習慣があるらしい。悩んだ昌平は友人の脚本家藤沢へ相談すると、藤沢は新人女優を妻の替え玉にするシナリオを提案してきたのだった…
1945年、終戦直後のレニングラード。第二次世界大戦の独ソ戦により、街は荒廃し、建物は取り壊され、市民は心身ともにボロボロになっていた。史上最悪の包囲戦が終わったものの、残された残骸の中で生と死の戦いは続いていた。多くの傷病軍人が収容された病院で働く看護師のイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)は、PTSDを抱えながら働き、パーシュカという子供を育てていた。しかし、後遺症の発作のせいでその子供を失ってしまった。そこに子供の本当の母であり、戦友のマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還する。彼女もまた後遺症や戦傷を抱えていた。二人の若き女性イーヤとマーシャは、廃墟の中で自分たちの生活を再建するための闘いに意味と希望を見いだすが...。
無口で孤独な殺し屋・レオンの元に、家族を惨殺された少女マチルダが助けを求めてやってくる。奇妙な共同生活の中で、二人は徐々に心を通わせていくが・・・
砂漠に住む男“西毒”はかつては凄腕の剣士だったが今は殺し屋の元締めをしている。そんな彼の下に集う剣士たち。それぞれの心に傷を持つ彼らは、愛を捨て剣をとり、超人的な技を駆使して戦いを挑む。あるものは生き、あるものは死んでいく。夢の果てに彼らが見たものとは・・・。
大河・長江の景勝の地、三峡。舞台はそのほとり、二千年の歴史を持ちながら、ダム建設によって伝統や文化も、記憶や時間も水没していく運命にある古都。16年前に別れた妻子に再会するため、山西省からやってきた炭鉱夫サンミンと、2年間音信不通の夫を探すシェン・ホンの2人を軸に描かれる、時代のうねりに翻弄されながらも日々を精一杯に生きる市井の人々の「生」の物語。
ドキュメンタリー監督として約20年以上のキャリアを持ち、作家として映画に関する著書を複数発表、さらにイギリスの映画解説番組「Scene by Scene」でMCを務め、海外の映画祭でプログラマーも担当した北アイルランド出身のマーク・カズンズ。本作では監督/ナレーションを務め、映画をマルチな視点で捉える彼だからこそ成しえる映画表現で、過去10年の間に製作された111作品を紐解いていく。登場作品には、『アナと雪の女王』、『ジョーカー』等のメジャー大作から、アピチャッポン・ウィーラセクタン監督作『光の墓』、アリ・アスター監督作『ミッドサマー』等のインディペンデント作品まで、古今東西・ジャンル問わず、世界中の映画が集結!興行成績、賞レース、スターのゴシップに囚われない、映画制作における注目点や表現手段、光度、ショット、カットの美しさから新たな発見を探求します。さぁ出かけましょう、“あの映画”たちのまだ知らないストーリーへ!
1845年。オレゴンの砂漠地帯を、白人の3家族が西へ向けて移動している。ミークという男が彼らを先導するが、予定の旅程をとうに過ぎても、目的地には辿りつかない。水と食料が尽きかけていく中、3家族は次第にミークへの不信感を募らせていく。途次、ネイティブアメリカンの男に出くわす。水の在り処を知っていると期待した一行は、彼を引き連れ、歩を進めていくのだが……。
ウェンディは愛犬ルーシーを連れ、車を走らせている。失業の憂き目にあった彼女は、仕事を求め、アラスカへ向かっているのだ。その途次、車が故障し、立ち往生を食らう。愛犬ルーシーは腹を空かせるが、エサは既に尽きた。金も無い。ウェンディはドッグフードの万引きを試みるも、あえなく警察の御用となった。その間、ルーシーは行方不明となり……。
身重の妻を持つマークは、旧友カートからの電話を受け取る。久しぶりに再会した彼らは、山奥へ秘湯を探しに行く。父親になることを恐れるマークと、そんな彼が遠い存在になることを恐れるカート。かつて青春時代をともに過ごしたふたり。昔話に花が咲く……とはならず、会話は一向に噛み合わない。ふたりの間には、深い溝ができてしまったのだ。ようやくたどり着いた秘湯で、互いの胸の内を探るが――。
コージーは母としての生活に不満を抱いている。誰かが自分の子供たちを引き取っていくこと、そうすれば彼女自身が新しい人生を始められるということを、延々夢想している。彼女の父は、地元の刑事。昼間から酒を浴び、たびたび銃を失くしてしまう。最近またどこかに置き忘れ、停職を食らってしまった。彼の銃を、リーという放蕩青年が拾う。ある日バーで出会ったコージーとリーは銃を手に、代わり映えの無い日々からの脱却を目論む。ひょんなことで殺人を犯してしまったと勘違いした彼らは、逃避行を開始。だがそれは、映画のような夢物語とは、かけ離れていて。
永遠なるビーチ・ボーイズの大ヒット曲・当時のポピュラー・シーンを席巻した名曲が続々登場、全ての楽曲に字幕入り!フォー・フレッシュメン、フィル・スペクター、ビートルズなどブライアンが多大なる影響を受けたアーティストたちの秘蔵映像を膨大な映像ライブラリーから厳選して多数収録。そしてビーチ・ボーイズのメンバー~ブルース・ジョンストン、デヴィッド・マークス等、天才ブライアンを熟知する生きる伝説たちが語るエピソードと作曲分析は必見。
ロックデュオ「チカチーロンズ」のボーカル・信太はある日の対バンライブでギターの直也にドタキャンを食らわされる。路頭に迷う信太に救いの手を差し伸べたのはシンガーソングライターの月見ゆべしだった。売れない、金ない、時間ない、三十路同士の二人は共鳴し、やがて信太はゆべしのマネージャー・・・そして恋人となる。しかしメジャーに進出させたい信太と自分のスタイルを頑なに曲げないゆべしの溝は日に日に深まっていくばかりで…。
韓国で暮らすシングルマザーのユンヒが受け取った、一通の手紙。母の手紙を盗み見てしまった高校生の娘セボムは、自分の知らない母の姿をそこに見つけ、手紙の差出人であるジュンに会わせる決心をする。セボムに強引に誘われるかたちで、ジュンが暮らす小樽へ旅立つユンヒ。それは20年前の自分と向き合う、心の旅でもあった…。
荒廃した鉱山の町。夫のいる歌手と不倫しているカーレルは彼女の部屋を訪れるが追い返され、行きつけの酒場へ向かう。酒場の店主はカーレルに小包を運ぶ仕事を依頼するが、町を離れたくないカーレルは知り合いに運ばせようと思いつく。歌手の夫から彼女との関係を問い詰められたカーレルは、夫に小包を運ぶ仕事を持ちかける。
精神科病院で働くアンドラーシュは、バイオリンの見事な演奏を患者に聞かせる。彼は自分の子を産んだばかりのアンナのもとを訪れ、彼女に別れを告げる。やがて彼は依存症患者と飲酒したことが原因で仕事を解雇され、ケーブル工場で働き始める。ある日、アンドラーシュは酒場で出会った女性カタと恋に落ち、結婚するが……。