1956年、ブダペシュトで民衆が蜂起する。モスクワからハンガリーへ帰国したユリはカメラを手に、荒廃した街並みや犠牲者を見つめていく。その年の大晦日、ユリたちは久々に一堂に会する。政治的立場が異なる者たちも、束の間、仮装や音楽、ダンスに耽る。しかし反動分子の弾圧はとどまるところを知らず……。
1947年、ソ連からハンガリーへ帰国したユリは、共産党員の養母マグダの保護下で育つ。父は秘密警察に捕らわれ、母はこの世を去っていた。恐怖政治が布かれるこの国で、ユリは不安定な生活を強いられる。ある日、ユリはヤーノシュと名乗る男と出会う。彼は父と瓜二つの人物だった。
マグダの元を離れ映画監督を志すユリは、モスクワの大学で映画制作を学ぶ。スターリンの死後、ユリは労働者の実情を捉えたドキュメンタリー映画を完成させる。そしてユリは父がすでに死去したことを知らされる。
ある病院の小児科センターに、左腕を骨折したアダムという4歳の男の子が入院した。栄養失調で痩せこけたアダムは発育が遅れ、骨が脆くなっている。裁判所は移民のシングルマザー、レベッカに問題があるとし、彼女の面会を制限する命令を下した。自らもシングルマザーである看護師長のルシーは、息子と引き離され、親権を失うことを恐れるレベッカに寄り添おうとする。しかしレベッカの思いもよらない行動と病院システムの歪みによって、ルシーは次第に追いつめられていく……。
舞台は1985年、アイルランドの小さな町。炭鉱商人として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が、ついに下す決断とは――。
アメリカからハンガリーへ帰国したアンドラーシュ。根無し草状態の彼は、放し飼いにされていた犬に惚れ込み、飼い主の少女から強引に買い取る。やがてふたりは、親子とも言い切れぬ親密な関係を育んでいく。彼のかつての恋人アンナも、そんなふたりを気に掛け、彼に愛を告白するが……。
工場勤務のユトゥカは、大学生のアンドラーシュと恋に落ちるが、拒絶されることを恐れ、学生のふりをして名前も偽る。やがてアンドラーシュは真実を知るも、両親には告げられない。両家の食事会でアンドラーシュ家の階級意識が剥き出しになっていく。
政治家の夫に先立たれたエディトは、保険金や邸宅の相続を頑なに拒む。父の名声が汚されることを恐れた息子は、母エディトを別荘に軟禁した。息子の婚約者も「看守」として手を貸すが、壊れていくエディトを見るうち、結婚という結び付きに違和感を募らせていく。
児童養護施設で育ったエルジは、24年ぶりに小村で暮らす実の母を訪ねる。再婚していた母は、娘の来訪に戸惑い、彼女を姪と偽って新しい家族に引き合わせた。家族関係の修復も曖昧なまま街へ戻ったエルジは、行きずりの男と交際しながら、鬱々と日々を過ごす。ある日、素性の知れぬ中年男性がエルジの前に現れ、「君の両親は死んだ」と告げる。
りんご酒売りを廃業した男が毛皮交換所の娘と恋に落ち、逆境をバネに成長していくアクションコメディ。モノクロの雪山で出会う人々に教えを乞い、森の動物たちを罠にかけ、ついには数百匹以上いるビーバー集団の巣窟に潜り込み、死闘を繰り広げる。男は無事脱出できるのか?ハンターとして成功し、好きな相手のもとに行けるのか…??
1997 年台北。受験に失敗し、強引な母の勧めにより名門女子校「第一女子高校」の”夜間部”に進学した小愛(シャオアイ)。同じ教室で同じ机を使うことになった全日制の成績優秀な生徒、敏敏(ミンミン)と、小愛は机に手紙を入れるやりとりから “机友(きゆう)”=デスクメイトになる。夜間と全日制。制服は同じでも、胸の刺繍の色が違う。ある日、小愛は敏敏から学校をサボるために制服を交換することを提案され、次第に、小愛が敏敏からもらった全日制の制服を来てふたりで遊びに行くようになるなど行動がエスカレート。やがてふたりは同じ男子校生を想っていることに気づき……。
文学者ド・ビューラドールは、裕福な一族から家庭教師の仕事を得、南国の孤島へ招聘される。雇い主は妖艶な3人の女。ドー、その娘クロ、クロの娘ジョー。生徒はジョーの妹で13歳のフロだが、外国にいるらしい。やがて三世代の女たちは各々、この新任家庭教師を誘惑していく。そして、ド・ビューラドールは、まだ出会ってもいないフロに心を奪われて……。
年老いた夫婦、シャルルとリュシーは慎ましく暮らしていた。ある日、南仏の豪邸を相続したとの知らせを受け、退屈な日常は一変していく。ふたりはさっそく南仏へ向かうが、目当ての館はなかなか見つからず……。
マルクとその一味は、大富豪の令嬢クッキーを誘拐。しかし聡明で蠱惑的なクッキーは、ギャングの構成員を次々と懐柔し、彼らを骨抜きにしていく。そこを付け狙う第三者まで現れ、狂おしいほど滑稽な抗争に発展する。
保守的な村社会から除け者にされるマリーと母。母の死をきっかけに、マリーは村人たちを相手に売春をはじめる。男たちを利用して稼いだ金を、必要のない商品の購入で浪費し、彼女のあばら家はモノであふれていく。
環境破壊により人類が地上に暮らせなくなってから25年が経った地球。豪華な地下シェルターで暮らす富裕層のアメリカ人家族のもとにある日、外の世界からやって来た少女が現れる。少女は人間が住めない地表の様子を語り、家族が川を渡ろうとして死に、自分だけが生き残ったと告白する。一行はしぶしぶ少女を地下シェルターに迎え入れることにしたが、この出来事をきっかけに、これまで孤立しながらもルーティーンを守って暮らしてきた家族の脆い日常が静かに崩れはじめ、やがて自らの過去と存在の真実に対峙することになる。
11歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ナディア・ブーランジェに師事。才能は開花しクラシックとジャズを組み合わせた独自の音楽を作り上げた。ジャズミュージシャンとして活躍したのち、フランス映画音楽の世界に飛び込みジャック・ドゥミとのコンビで『シェルブールの雨傘』他名作を生みだす。海を越えハリウッド映画の作曲も数多く手がけた。本作は、晩年のルグランに密着し、貴重なアーカイブと、スティング、クロード・ルルーシュなど、45名以上の音楽家や映画監督、家族のインタビューを通じて、彼の人生を振り返りながら貴重な音楽制作の舞台裏に迫る。音楽家としての高いプライドを持ち、一切の妥協を許さない厳格な姿勢、普段見せることのない作曲中の姿、創作にもがき苦しみ重圧に苦悩するという知られることのなかった素顔を映し出す。
ある朝、少年パスカルは学校に行く途中で、ふわりと宙に浮かぶ赤い風船を見つける。風船は街灯に紐が引っかかって動けなくなっていたのだ。放課後、風船を持って家へ帰り着いたが、窓から風船を放り出されてしまう。しかし、不思議なことに、風船は窓際にふわふわと浮いてとどまった。風船と友達になったパスカル。いじめっ子たちが、風船を我がものにしようと追いかけてくる。パスカルは風船とパリの街を逃げ回る・・・。
はるか昔、東の国のある島。子供たちひとりひとりがロバを飼う習慣があった。ビムは最も美しいロバで、アブダラがその飼い主だったが、アブダラはとても貧しかった。意地悪な領主の息子メサウドは、美しいビムに一目惚れし、アブダラからビムを奪い取った。連れ去られたビムを取り返そうと、アブダラは勇敢にも領主の屋敷に忍び込むが、護衛に見つかり牢に入れられてしまう・・・。
パスカル(パスカル・ラモリス)の祖父(アンドレ・ジル)は学者で、気球を発明し、フランス中を旅する計画を立てていた。なんとしても冒険がしたいパスカルは、こっそりゴンドラにしがみつき、気球に乗り込む。北フランスのベテューヌを出発し、パリを通過、ブルターニュから南へ。次々と災難に見舞われるが、アルプスを越え、ニームで海水浴を楽しむ。しかし、闘牛場での一時着陸の際に、気球はパスカルひとりを乗せたまま空に上がり、みな大慌てする・・・。
フィフィ(フィリップ・アブロン)は邸宅から時計を盗み、サーカス団に逃げ込む。支配人は彼を警察には突き出さず、鳥人間に仕立てようとする。背中に羽をつけ空中を飛ぶ危険な演目だ。団員のミミ(ミレイユ・ネーグル)に一目惚れし練習をはじめたフィフィは、空中を飛べるようになり、天使のふりをして時計を盗みミミにプレゼントをする。しかし、ミミに想いを寄せる猛獣使い(アンリ・ランベール)と喧嘩になり、サーカスは崩壊。警察の追跡がはじまり、フィフィは空高く舞い上がる・・・。
南仏カマルグ地方に、白く美しい荒馬をリーダーにした野生馬の一群がいた。“白いたてがみ”と呼ばれる馬の存在は噂となり、牧童たちは野生馬を捕獲し始める。漁師の少年フォルコ(アラン・エムリー)は、牧童たちの手から逃れた“白いたてがみ”を見つけ、ひっそりと近づき、手綱を握った。ひきずられながらも手綱を放さないフォルコに、馬は次第に心を許す。しかし、すぐに牧童たちに見つかり、フォルコは馬をなんとしても守ろうとするが・・・。
インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、お見合い結婚させようとする親に知られたら大反対されることはわかっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、一人で生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。
2008年、北京オリンピック開催間近の中国。友人を誤って死なせた青年ランは、刑期を終えゴビ砂漠の端にある故郷に戻って来る。区画整理で人の流出が止まらず廃墟が目立つ街では、捨てられた犬たちが野生化して群れとなっていた。ランを気に掛ける警官から捕獲隊に誘われるが、ひょんなことから一匹で行動している黒い犬と出会う。決して捕まらず賞金を懸けられた黒い犬とランの間に、いつしか奇妙な友情が芽生えるが…。
その日暮らしの父親バグと腹違いの兄ハンターと暮らす12歳の少女ベイリーは、友人もいない寂しさとやり場のない閉塞感を募らせて、身の回りの風景や野生の鳥をスマホで撮影する事で孤独を紛らわせる日々を過ごしていた。そんなある日、父親のバグが3ヶ月前に知り合ったばかりの子連れの恋人ケイリーと結婚式を挙げると宣言する。突然の環境の変化に気持ちが整理できないベイリーは結婚式に出席しないと言い放ち、家を飛び出してしまう。そして兄のハンターが友人たちと町の自警団を結成した事を知り、仲間に入れてもらおうとするのだが、全く相手にされない。だが勝手に兄の後を追いかけ、彼らが襲撃する家に辿り着くも警察に通報され、散り散りになってしまう。ただ一人、草原に逃げ込んだベイリーは、そこで“バード”と名乗る謎めいた男に出会うのだが…。
大規模酪農場で飼育されているホルスタイン・フリーシアン種のルマは、一頭の雌牛を出産する。やがてルマは子牛から離され、搾乳機に繋げられ、餌を食み、放牧されて走り回り、種付けされ、また子を生む。カメラは極力牛の目線の高さに据えられ、農場の日々の営みと、家畜たちの日常が綴られていく。ルマの物言わぬ瞳が語りかけているものとは?
ヨークシャーの荒れ地に佇む屋敷“嵐が丘”の主人アーンショーが、ひとりの孤児を連れ帰る。少年はヒースクリフと名づけられ、アーンショーの娘キャサリンと一心同体のような強い絆で結ばれるが、キャサリンは裕福な家の息子エドガーと結婚してしまう。出奔したヒースクリフは数年後に大金持ちになって舞い戻り、再びキャサリンの前に現れるが……。
悪名高い賞金稼ぎのリリスは、銀河系で最も混沌とした惑星にして自らの故郷“パンドラ”に戻ってくる。彼女の使命は、アトラスの行方不明の娘を見つけることだ。リリスは、傭兵ローランド、放浪の解体者タイニー・ティナ、ティナの守護者クリーグ、風変わりな科学博士タニス、そして、賢い(?)ロボット、クラップトラップと同盟を結成。寄せ集めのチームは娘を捜索すべく、危険な冒険へと旅立つのだが…。
ヨンウンは水泳インストラクターとして静かな生活を送っていたが、その日常は7歳の娘ソヒョンの奇妙な行動によって次第に崩れ始める。彼女の小さな手が巻き起こす恐怖は日に日に増してゆき、母娘の関係は闇に包まれていく。そして、20年後――。特殊清掃の仕事に携わるミンと、新たな同僚となったヘヨン。それぞれ生い立ちに暗い過去を抱える2人は共に暮らし始める。しかし、周囲で次々と起こる不可解な出来事をきっかけに、2人の生活に不気味な影が忍び寄る…。過去と現在、2つの物語が交錯したとき、逃れられない狂気が姿を現す。
1970年代のオーストラリア。グレースは双子の弟ギルバートと父親の3人で慎ましくも幸せに暮らしていた。母親は出産と同時に亡くなり、病気がちで学校ではいじめっ子の標的にされるグレースだったが、いつも守ってくれる頼もしいギルバートと、愛情深くひょうきんな父が側にいてくれた。しかし突然、父が睡眠時無呼吸症候群で亡くなり、グレースとギルバートは別々の里親の元で暮らすことに。離れ離れになった2人は手紙で励まし合い「いつか必ずまた会おう」と約束するが、グレースは寂しさのあまりカタツムリを集めることだけが心の拠り所となった孤独な日々を送るようになる。そんなある時、ピンキーという陽気で変なことばかり言うお婆さんと出会い、2人はいつしかかけがえのない友だちになっていく…
北アイルランド、ベルファストで生まれ育ったドラッグディーラーのニーシャ(MC ネーム:モウグリ・バップ)と幼馴染のリーアム(MC ネーム:モ・カラ)。麻薬取引で警察に捕まったリーアムは、英語を話すことを頑なに拒み、反抗的な態度を貫いていた。そこに通訳者として派遣された音楽教師のJJ(MCネーム:DJプロヴィ)が、リーアムの手帳に綴られていたアイルランド語の歌詞を発見。その才能に目をつけ、3人はアイルランド語の権利を取り戻すべく、アイルランド語のヒップホップを始めることに。
ハネムーンでパリを訪れたシェーンとその妻ジューン。幸せに満ちた新婚旅行にはある秘密が隠されていた……。それはかつて彼が巻き込まれた研究の副作用で、《欲望》と《暴力》が結びつく危険な衝動を抱えていることだった。同じ研究に関わり、同じ病を抱え欲望のままに暴走するコレ。街の片隅で彼女は人を襲い続け、夫のレオは彼女を守りながら孤独な日々を送っている。やがてシェーンは症状の真相を求めてコレの元を訪れるが、二人の“止められない本能”はすでに取り返しがつかない悲劇の始まりだった――。
文化祭前日に突如バンドを組んだ女子高生たち。コピーするのはブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学生!本番まであと3日。4人の寄り道だらけの猛練習が始まった!
偉大なストップモーション・アニメーターであるスザンヌ・ブレイクの愛娘エラは、母の病により中断された作品を完成させようと奮闘する。しかし、独力では作業が進まず、偶然出会った謎の少女の力を借りながら制作を進めるが、次第に現実と虚構の壁が崩壊し精神的に追い詰められていく...。
私立探偵のフェルーとそのいとこが休暇のためバラナシの街に到着すると、ある男に事件の解決を依頼される。ネパールの王子から譲り受けた家宝だという貴重なガネーシャの金像が盗難に遭ったらしい。フェルーは、事件解決のための重要な手がかりを知る少年ルクと親しくなる。レイ監督自身による小説「探偵フェルダーシリーズ」を元に映画化された第2作目。ショウミットロ・チャタルジ演じる探偵がその高い分析力と洞察力で事件を解決に導く、エンターテイメント性に富んだテンポのよい冒険コメディ。【日本劇場初公開作品】
有名なベンガル映画俳優であるアリンダムは、デリーで行われる授賞式へ列車で向かうことになる。列車内では乗客全員が彼のことを知っている。その中で彼の関心を引いたのは、お堅い女性誌の記者アディティだった。スターの役割に明快で批判的な視点を持つ彼女がアリンダムにインタビューを行うことで、彼は自身の半生を見つめ直すことになる。アリンダムの危機や内省を通して、映画業界の問題(軽薄な娯楽作品の量産、商業主義、そして腐敗したビジネス慣行)を巧みに批判している。【ベルリン国際映画祭 審査員特別表彰、日本劇場初公開作品】
弁護士であるグルパダ・ミトラは、妻の死以来、深刻な精神不安に陥っている。娘のブチキとバラナシからの帰路、グルパダは不老を自称するビリンチ・ババと出会う。グルパダは彼に感銘を受け、彼を支援し入信することを決意する。コメディ映画の体裁を取りつつ、宗教的偽善や盲目的な信仰を鋭く風刺し、狂信的信仰を戒めている。伝統と近代化が交錯するインド社会に対するレイ監督の鋭い観察が投影された作品。【日本劇場初公開作品】
監督作品の常連であるショウミットロ・チャタルジが、コルコタの脚本家で主人公のアミを演じている。アミは不運にも乗車したタクシーの故障に見舞われるが、茶園を経営する裕福なビマールの親切で彼の家に泊まることになる。驚いたことに、ビマールの家にいた彼の妻コルナは、何年も前、アミが自身の優柔不断ゆえに失った元恋人であった。家族、結婚、男尊女卑、階層といった旧来の価値観と、個人の自由や愛、自己決定といった新しい価値観のぶつかり合いが描かれる。【日本劇場初公開作品】
1880年頃のカルカッタ(現コルカタ)。美しいチャルラータは、外界から隔絶されたヴィクトリア朝時代の華美な邸宅で当てもなく毎日を過ごしている。理想主義的な知識人の夫ブポティはそんな妻を愛し支えているものの、新しい政治新聞の発行に追われ妻との時間が思うようにとれない。そんな折、ブポティのいとこのアマルが訪ねて来ると、ブポティはチャルラータに眠る文才を開花させてほしいとアマルに頼む。愛、理想主義、失望、そして悲哀への賛歌である本作は、レイ監督が手掛けた中で最も優美な作品であり、監督の創造期と言われる1960年代に撮られた最高傑作。【ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)受賞作品】
平凡な銀行員シュブロトは家族で唯一の働き手。ある時シュブロトの妻アロティは、(主婦は家にいるべきという)慣習と義父の反対を振り切って訪問販売員としての職を得る。アロティは仕事で順調に評価され自信と経済的自立を手にするが、その状況を受け入れることができない夫は妻に離職を迫る。レイ監督が初めてネオリアリズモへの挑戦を試みた作品であり、物語は1955年当時のコルコタの日常を描く。貧しい下層・中流階級を襲う社会経済的な苦悩に焦点を当て、それを主人公女性の自立を通じて表現している。【ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)受賞作品】
20世紀初頭のベンガル地方。地主ビッションボル・ラエは、経済的に困窮しながらも、かつての栄光と誇りにしがみつくように、音楽と舞踊に耽る日々を送っている。隣人である新興の実業家ガングリに対して対抗心を燃やしたロイは、最後の誇りをかけて、自らの音楽サロンで盛大な演奏会を開く。世界中の映画製作者に影響を与えた、レイ監督の芸術性と映像美が際立つ傑作。音楽監督はシタール奏者の巨匠ヴィラーヤト・カーンが務め、演奏会以外の場面でも有名演奏家が多数出演している。【日本劇場初公開作品】
新たな世紀を迎え、漠然とした未来への期待に溢れていた2001年。三峡ダム建設により建物が解体され、長江で100万を超える住民たちが移住した2006年。目覚ましい経済発展を遂げ、地方都市も都会化したコロナ禍の2022年......。チャオは山西省・大同(ダートン)を出て戻らぬ恋人ビンを探して奉節(フォンジエ)を訪ね、ビンは仕事を求めて奉節からマカオに隣接する経済特区・珠海(チューハイ)を訪れる。時は流れ、ふたりはまた大同へ――。恋人たちの関係と比例するように、街は変化していく。21世紀を22年かけて旅するチャオはどこにたどり着くのか――。仕事もなく、道路は舗装されておらず、北京との格差にあえいでいた街が、22年の時を経て、ビルが立ち並び、グローバル化され、若者たちは世界の都市と変わらぬ娯楽を享受するようになる。二つ折りの携帯電話はスマートフォンに、SF世界だったAIロボットはスーパーマーケットで接客をし、孤独な女性の話し相手に......。壊れゆくもの、消えゆくもの、再び構築されるもの。変貌し続ける街に飲み込まれながら、出会いと別れを繰り返す。時間は戻らない。だから、前へと進む。
中学校教師のチェンが勤める学校で自殺をほのめかす遺書が見つかる。彼は書いた生徒を捜索するうちに、自身の幼少期の辛い記憶を蘇らせていく。それは、弁護士で厳格な父のもとで育った兄弟の記憶だ。勉強もピアノも何ひとつできない兄と優秀な弟。親の期待に応える弟とは違い、出来の悪い兄は家ではいつも叱られていた。しつけという体罰を受ける兄は、家族から疎外感を感じ…。
AIが国家の社会システム全般を管理し、人間の感情が不要と見なされている2044年のパリ。孤独な女性ガブリエル(レア・セドゥ)は有意義な職に就きたいと望んでいるが、それを叶えるにはDNAの浄化によって〈感情の消去〉をするセッションを受けなくてはならない。人間らしい感情を失うことに恐れを感じながらも、AIの指導に従って1910年と2014年の前世へとさかのぼったガブリエルは、それぞれの時代でルイ(ジョージ・マッケイ)という青年と出会い、激しく惹かれ合っていく。しかしこの時空を超越したセッションは、ガブリエルの潜在意識に植えつけられたトラウマの恐怖と向き合う旅でもあった。はたして、3つの時代で転生を繰り返すガブリエルとルイの愛は成就するのか。そして過酷な宿命を背負ったガブリエルが、最後に突きあたる衝撃的な真実とは……。
多彩な国籍の人間が割拠する90年代半ばの台北。レッドフィッシュをリーダー格とする4人組はお金も自由も愛も、思うがままに手に入ると信じている。ホンコンは女性をもてあそび、トゥースペイストはニセ占い師として稼ぐ日々。ある日、フランスからマルトという女性が台北にやってくる。新入りのルンルンはひそかにマルトに心を寄せ、彼らの関係が変化し始める。決して後戻りのできないところまで―。
ナイトクラブのステージで観客を魅了するドラァグクイーン、ジュールズ。ある夜、ステージを終えた彼は、タトゥーだらけの男プレストンと出会う。だが、その出会いは突然、憎悪に満ちた暴力へと変わり、ジュールズの心と体には深い傷が刻まれる。舞台を降り、孤独な日々を送りながら、彼は痛みと向き合い続けていた。数ヶ月後、偶然立ち寄ったゲイサウナでジュールズはプレストンと再会するのだが…。
スペインのマドリード、ナイトクラブで働くダンサーのルシアは雇い主の犯罪組織から大量のドラッグを盗み逃亡する。逃げる際に組織の用心棒から痛手を負わされた彼女は、疎遠になっていた姉ロシオと幼い姪が暮らす、“ヴィーナス”と名付けられた郊外の老朽化したアパートへ身を隠す。ところが、ロシオが置き手紙を残して姿を消した。犯罪組織が彼女のもとへ迫る中、アパートでは未曾有の怪異が目を覚ましつつあった。
双子の姉妹クレール(カミーユ)とジャンヌ(メラニー)は、幼い頃からともにピアノに情熱を注いできた。父親からアスリートのような指導を受け、名門カールスルーエ音楽院に入学する。ピアノのソリストを目指し、2人のキャリアを左右するコンサートのオーディションに向けて練習に励む日々。しかし、彼女たちは自分たちの両手が徐々に不自由になる難病にかかっていることを知る。最悪の事態に直面しながらも、改めてピアノが人生のすべてであり、かけがえのない大切な存在だということに気づく。そして、絶対に叶えたい夢を2人で掴み取るため、家族に支えられながら、自らの運命を変えていくー。
1999年、地球終末論があちこちで聞かれた不安の時代。友達ミヌの代理でファストフード店のアルバイト、イェジに告白のメモを渡したジュヨン。ある日、家へ帰る途中にテコンドー部の先輩から暴行を受ける。そこへイェジが、店の景品だったおもちゃのパトカーのサイレンを鳴らして助けに来る。偶然か必然か、ジュヨンとイェジは、ジュヨンの母親が担当する少年院の家庭体験プロジェクトをきっかけに一緒に暮らすことになり…。
80年代、香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑む――。
創造神S.S.ラージャマウリが自ら描く、『RRR』誕生の秘密と衝撃の舞台裏。誰も観たことのない奇跡の映画を作るために命をかけた人々の愛と勇気と感動の記録。『RRR』で体験した興奮と感動をより深め、『RRR』をさらに何度も観ずにはいられなくするもう一つの『RRR』。
監督アルノー・デプレシャンと俳優マチュー・アマルリックのナレーションで物語は始まる。本作は11章立ての構成。リュミエールによる映画の発明に始まり、現在に至るまで、映画界の先駆者たちに触れながら100年を超える映画史が語られていく。そして、映画少年ポール・デダリュスの登場。ポール・デダリュスはデプレシャンの『そして僕は恋をする』(96)と『あの頃エッフェル塔の下で』(15)でマチュー・アマルリックが演じた主人公ポールと同じだ。デプレシャン監督が生涯をかけて歩んできた映画人生をポールの成長に投影して、幾多の名画とともに辿っていく。
カナダの田舎町で暮らすローレンスは映画が生きがいの高校生。社交性がなく周囲の人々とうまく付き合えない彼の願いは、ニューヨーク大学でトッド・ソロンズから映画を学ぶこと。唯一の友達マットと毎日つるみながらも、大学で生活を一新することを夢見ている。ローレンスは高額な学費を貯めるため、地元のビデオ店「Sequels」でアルバイトを始め、そこで、かつて女優を目指していた店長アラナなどさまざまな人と出会い、不思議な友情を育む。しかし、ローレンスは自分の将来に対する不安から、大事な人を決定的に傷つけてしまい……。
すべてにおいて屈折し、狭量で、尊大な美術教師が取るに足らぬと思っていた土地に、何を見つけ出すのか――トルコ東部、雪深いインジェス村の学校で美術を教えるサメット。教師というだけで、村人たちから尊敬され、お気に入りの女生徒セヴィムにも慕われている。しかし、ある日、、同居している同僚のケナンと共に、セヴィムらに“不適切な接触”を告発される。同じ頃、美しい義足の英語教師ヌライと知り合う。夏、念願叶って転任が決まり、この田舎村から去ろうとするとき、雪で覆われ続け、春の陽を浴びることなく突然に強い陽を浴び、黄色く枯れた草を踏みしめるサメットは、その枯草になにを見つけ出すのだろうか......。プライド高く、ひとりよがりで、屁理屈を並べ、すぐにキレて、周囲を見下す、“まったく愛せない”のに“他人事と思えない”主人公サメット。人と自分を比べ、他者をやりこめようとするサメットの姿は、現代社会のどこにでも見つけることができる。主人公サメットとディズダル演じるヌライが繰り広げる人生論のやり取りは、12分を超える圧巻のシーン。「世界のために何ができる?」の問いに、「正義は絵空事」とうそぶくサメット。しかし、そのあとの展開に誰もが驚くだろう。予測不可能さ、アンビバレントさ......人の心の不可思議がそのまま提示されるとき、映画と現実の境界は失われ、新たな映画体験を味わうのだ。
サンタモニカ・パリ・東京に家を持ち、愛する猫や犬たちに囲まれ、ピアノを弾く毎日が、彼女の愛すべき世界だった。戦時中を過ごした岡山に残されているピアノとの再会、父や弟との思い出、コロナ禍での暮らしと祈りを捧げる演奏、思い出の地・横浜でのドラマティックなステージ、そして秘めた恋の話――。フジコはどんな時も、自分らしく生きてきた。そんなフジコの想いとともに様々な場所で毎回色を塗り直し、紡ぎ出される代表曲「ラ・カンパネラ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」といった名曲の数々。2023年3月、フランス・パリ、コンセルヴァトワール劇場でのコンサートでは、「月の光」「幻想即興曲」「黒鍵のエチュード」などが披露された。「最後の演奏会はどんなものにしたい?」の問いに、パリでの演奏会のようにしたいと話していたフジコ。大切な場所で、過去と記憶が交差し、フジコの人生とともにあった“魂の演奏”と“心にささる名言”に思わず涙があふれる――。
1996年、クリケットのワールドカップを控えたインドに衝撃が走る。巨大犯罪組織による破壊工作の情報を得た警察本部は、それを阻止すべく作戦を開始。犯罪組織のリーダーを追って、特別捜査班が凶悪な密輸団の巣窟として恐れられていた“赤い海”と呼ばれる村へと向かった。困難を極めた捜索の末、捜査班は十数年にわたって凄惨な抗争が続くその土地で、愛と正義を貫いたデーヴァラという英雄とその息子の血塗られた伝説を知ることになる…。
7歳のノラが小学校に入学した。しかし友だちがひとりもいないノラには校内に居場所がない。やがてノラは同じクラスのふたりの女の子と仲良しになるが、3つ年上の兄アベルがイジメられている現場を目の当たりにし、ショックを受けてしまう。優しい兄が大好きなノラは助けたいと願うが、なぜかアベルは「誰にも言うな」と命じてくる。その後も繰り返されるイジメに、やり場のない寂しさと苦しみを募らせていく。そして唯一の理解者だった担任の先生が学校を去り、友だちにのけ者にされて再びひとりぼっちになったノラは、ある日、校庭で衝撃的な光景を目撃するのだった……。
東京・下町の中華料理店で働く男性はパートの中年女性から、息子がいじめられているので相談に乗ってほしいと頼まれる。男性は仕方なく引き受けるが、女性の息子はいじめを認めようとしない。一方、漫画家の青年は合コンで出会った劇団員の女性と成り行きで同棲することに。一緒に暮らすうちに彼女に愛情を抱きはじめる漫画家だったが、そんな彼のもとにかつての恋人から電話がかかってくる。2つの物語はやがて交錯し、悲劇が起こる。
巫堂ファリム(キム・ゴウン)と弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から、桁違いの報酬で依頼を受ける。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)も合流する。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行うが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていた…。
パキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。保守的な中流家庭ラナ家の次男ハイダルは、現在失業中だ。家父長制の伝統を重んじる厳格な父からの「早く仕事を見つけて男児をもうけなさい」というプレッシャーを受けている。妻のムムターズはメイクアップアーティストの仕事にやりがいを感じ、家計を支えていた。ところが、ハイダルとトランスジェンダー女性のビバとの出会いと恋が、夫婦とラナ家の穏やかに見えた日常に波紋を広げていく――。