ホルヘは、弟ペラオの元妻ハナとともに、チリ北部アリカ近郊にある故郷カケナへ向かう道中、弟との過去を思い返していた。かつて兄弟は民間軍事会社の傭兵としてイラク戦争に従軍していたが、帰国後、ホルヘは港湾警備員として働きながら、戦争で負傷し車椅子生活となったペラオを支えていた。ペラオには9歳の息子フアンがいるものの、かつて妊娠中だったハナに暴力を振るって戦地へ逃れた過去があり、2人の関係はすでに破綻しており、父子も離れて暮らしていた。それでもホルヘは父子の再会を願い奔走するが、PTSDと後遺症に苦しむペラオは、やがて最悪の事態を招いてしまう。
1963年、パリ。6人兄弟の末っ子として誕生したロランは、生まれつき内反足だと診断される。医師からは一人で歩くことができないと宣告されるも、母エステルだけは決して希望を捨てなかった。「みんなと同じように歩き、素晴らしい人生を送らせてあげる」――。そう誓った母は、家族を巻き込み、神に祈りを捧げ、息子が歩けるようになる日を信じて奔走するが…。
ウエディングプランナーのトウサン(ダヨ・ウォン)は、コロナ禍で多額の負債を抱え、葬儀業者への転身を余儀なくされる。しかし結婚式と葬式は大きく違い、様々な困難に直面する。最大の難関は、共に葬儀を取り仕切る「葬儀道士」であるマン師匠(マイケル・ホイ)に認められること。利益の追求が第一のトウサンと、伝統を重んじるマン師匠は、考え方の違いから絶えず衝突し、二人の関係は最悪に。だがマン師匠一家と関わるうちにトウサンのわだかまりは徐々に消え、葬儀で行う儀式「破地獄」の真の意味に気づいていくのだった。
宮田陽彩(みやた・ひいろ)(19)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。大学に通い、それ以外の時間のほとんどを浪費家の母に代わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、その中から学費と母と2人暮らしの家計8万を収める日々。遊ぶ時間も、金もない。何かに期待して生きてきたことがない。親にも、友人にも・・・。いつものように早朝にバイトを終えた宮田は、母のために朝ご飯を作り、家事をした後に大学に登校していた。そこで大学の同級生であり、バイト先の同僚でもある 江永雅(えなが・みやび)(24)のひょんな噂を耳にする。威圧的な金髪、メイク、ピアス──バイト先ではイヤホンをつけながら接客する、地味な宮田とは正反対の彼女の噂。「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたり。ふたりの出会いが人生を変えていく―。
“私の人生には娘が必要なの”思いもよらない妻の、母の決断に、家族は大きく揺さぶられる―ジャスミンは、夫と3人の息子たちに囲まれ、オーナーを務めるヘアサロンは大繁盛と、満ち足りた日々を送っていた。しかし40歳を迎えた頃、父の死をきっかけに異変が起きる。金髪の少女を父から託される夢を繰り返し見るようになり、自分の人生には「娘」が必要だという想いに囚われるようになる。ジャスミンは養子縁組で娘を迎え入れることを決意するが、それは幸せだった家族に大きな波乱を巻き起こすのだった。イタリア国内での養子縁組はハードルが高く、それをクリアしたとしても性別を選ぶことは許されていない。家庭内が疲弊していく中、夫から「あきらめるんだ。家族のために」と諭されたジャスミンは一度は断念したものの、どうしてもあきらめきれず国際養子縁組という手段を選ぶ。そうして一家が下した、大きな決断とは――。
30歳を目前にして仕事も目標もなく、恋人にも浮気されて裏切られたロドニー。住む家さえ失いかけた彼は、あてもなく車を走らせた末にエンストし、身動きが取れなくなってしまう。気づけば携帯の電源も切れていた。仕方なく目の前の家から電気を盗もうとするが、家主の老女ジューンに見つかってしまう。ロドニーは荒れ放題の芝生の手入れや家の雑用を引き受けることを条件に、なんとか許しを得ることに。そんなジューンは夫を亡くして以来、一人暮らしを続けているが、酒に溺れた荒れた生活を送っていた。一方、週60時間も病院で働くジューンの娘オリーは、病を抱える母に薬を飲ませようとするもののうまくいかず、その役目をロドニーに頼むのだが…。
17歳のヨンジェは家を出て、教会の保護施設でほとんどの時間を過ごしてきた。年齢制限が近づき退所を迫られる中、無責任な父のもとへ戻ることだけは避けたいヨンジェは、信仰心がないにもかかわらず「神父になりたい」と嘘をつき、居場所を守ろうとする。しかしその嘘が、唯一の友人ボムテとの関係を悪化させていく。さらに突然現れた父が、弟ミンジェまで施設に預けようとしたことで、ヨンジェの心は強い怒りと絶望に満たされていく。逃げ場のない現実の中で、彼は自分の人生を選び取るため、過去と向き合う決断を迫られる――。
仁川で暮らす荒っぽい闇金業者ドゥソクとジョンベは、踏み倒された借金の回収に向かった家で、9歳の少女スンイを“担保”として預かることになる。母親の事情から養子縁組まで引き受けることになった二人は、スンイが危険な環境に置かれていると知り、彼女を連れ戻し面倒を見るようになる。やがて三人は血のつながりを超えた絆を育み、スンイは二人にとって欠かせない存在へと成長していく。時が流れ、大人になったスンイは長年探し続けてきた人物の消息を知り、過去と向き合うため再び歩き出す。
路上シンガーのルキフェル、そして彼女を密かに応援する男・川崎らが新宿駅前で織りなす悲喜劇。夢こがれる者、それを冷笑する者、それぞれの思惑や暗さを抱えた者たちが路上で交錯し、嘘と現実が入り混じる人間模様。
中国・上海在住のコピー・ライター、デヴィッドは作家を目指しながらも現在はアルコール依存症に陥り、自堕落な負け犬人生を送り続けている。そんな日常に焦燥感を覚えて久しい彼が、ある時、見知らぬブロンド女性にタバコを1本おごったことから会話が始まり、気がつくと一晩のガイド役を引き受けることになっていた。ネオンに照らされた美しい夜の上海。2人は道に迷いながらも、自転車に乗って目的地の廃墟にたどり着く。中に入り、かつて住んでいた人たちのことを想像しては思いにふけったあと、さらに地図を頼りに夜の上海を散策し続けては、“想像”という名の創作の翼を広げていく。だが、些細なことから仲違いが生じてしまい…。
東京でシェフとして働くフランス人のジェイ(ロマン・デュリス)は、日本人女性と結婚するも離婚。共同親権をめぐる制度の違いにより、最愛の娘リリーと引き離される。望みを捨てきれないままタクシー運転手に転身した彼は、孤独に街を彷徨いながら、いつも娘の面影を追いかけている。やがて帰国を決意しかけた矢先、思いがけない再会が訪れる。成長した少女が、偶然ジェイのタクシーに乗り込んでくるのだ。しかし、リリーは目の前の男性が実の父親とは気づかない。ジェイもまた名乗ることができないまま、束の間の時間を共にする。それは偶然か、あるいは運命か。再び父として娘と向き合うことができるのか。名乗れない父と、父を知らない娘。交差した時間が、止まっていた父の人生を再び動かしはじめる。
ある病院の小児科センターに、左腕を骨折したアダムという4歳の男の子が入院した。栄養失調で痩せこけたアダムは発育が遅れ、骨が脆くなっている。裁判所は移民のシングルマザー、レベッカに問題があるとし、彼女の面会を制限する命令を下した。自らもシングルマザーである看護師長のルシーは、息子と引き離され、親権を失うことを恐れるレベッカに寄り添おうとする。しかしレベッカの思いもよらない行動と病院システムの歪みによって、ルシーは次第に追いつめられていく……。
北京の片隅で、窓清掃員の夫アン・クンと貧しくも幸せに暮らすマッサージ師のピングォ。ある夜、泥酔したピングォは店のオーナー、リン・ドンに関係を迫られ、その現場を窓の外から夫に目撃されてしまう。この事件をきっかけにピングォは解雇されるが、ほどなくして彼女の妊娠が発覚。事態はリン・ドンの妻をも巻き込み、金と欲が絡み合う思わぬ騒動へと発展していく。
もともと役者を夢見ていたマックスは、今やハリウッドで敏腕タレント・エージェントとして多忙な日々を送っていた。そんなある日、亡き叔母から、カナダ・ブリティッシュコロンビア州オカナガンバレーにある、桃の果樹園を相続したという知らせが届く。両親からも好きにすればいいと言われた彼は、売却する気満々で現地へ向かう。しかし到着早々、近所に暮らす自由奔放な娘オリーヴが、果樹園の木に全裸で自らを縛りつける騒動に遭遇。早々に片づけてロサンゼルスへ戻りたかったマックスだったが、叔母が地元の人々に深く愛されていたことを知り、オリーヴやその兄と交流を重ねるうち、仕事に追われ続けてきた自分の人生を見つめ直し始める。
1956年、ブダペシュトで民衆が蜂起する。モスクワからハンガリーへ帰国したユリはカメラを手に、荒廃した街並みや犠牲者を見つめていく。その年の大晦日、ユリたちは久々に一堂に会する。政治的立場が異なる者たちも、束の間、仮装や音楽、ダンスに耽る。しかし反動分子の弾圧はとどまるところを知らず……。
1947年、ソ連からハンガリーへ帰国したユリは、共産党員の養母マグダの保護下で育つ。父は秘密警察に捕らわれ、母はこの世を去っていた。恐怖政治が布かれるこの国で、ユリは不安定な生活を強いられる。ある日、ユリはヤーノシュと名乗る男と出会う。彼は父と瓜二つの人物だった。
マグダの元を離れ映画監督を志すユリは、モスクワの大学で映画制作を学ぶ。スターリンの死後、ユリは労働者の実情を捉えたドキュメンタリー映画を完成させる。そしてユリは父がすでに死去したことを知らされる。
アメリカからハンガリーへ帰国したアンドラーシュ。根無し草状態の彼は、放し飼いにされていた犬に惚れ込み、飼い主の少女から強引に買い取る。やがてふたりは、親子とも言い切れぬ親密な関係を育んでいく。彼のかつての恋人アンナも、そんなふたりを気に掛け、彼に愛を告白するが……。
工場勤務のユトゥカは、大学生のアンドラーシュと恋に落ちるが、拒絶されることを恐れ、学生のふりをして名前も偽る。やがてアンドラーシュは真実を知るも、両親には告げられない。両家の食事会でアンドラーシュ家の階級意識が剥き出しになっていく。
政治家の夫に先立たれたエディトは、保険金や邸宅の相続を頑なに拒む。父の名声が汚されることを恐れた息子は、母エディトを別荘に軟禁した。息子の婚約者も「看守」として手を貸すが、壊れていくエディトを見るうち、結婚という結び付きに違和感を募らせていく。
児童養護施設で育ったエルジは、24年ぶりに小村で暮らす実の母を訪ねる。再婚していた母は、娘の来訪に戸惑い、彼女を姪と偽って新しい家族に引き合わせた。家族関係の修復も曖昧なまま街へ戻ったエルジは、行きずりの男と交際しながら、鬱々と日々を過ごす。ある日、素性の知れぬ中年男性がエルジの前に現れ、「君の両親は死んだ」と告げる。
広島にある寂れた居酒屋『まめすけ』でバイトしているフリーターの杉山末子(37)は、夢もなければ恋人もいない冴えない日々。他人や世の中に一人毒づくのが唯一のストレス発散だが、このまま自分の人生、大して良いことなんかないんだろうと、退屈な日々を過ごしていた。そんな末子の前に、新人バイトとして現れた山根朔人(24)は、広島大学に通いながら、コミュ力抜群のインフルエンサー。容姿も淡麗、末子と違い明るく、一見、充実しているように見えるが、惰性の恋愛ごっこ、虚勢を張った毎日に、どこか虚しさも覚えていた。『まめすけ』で出会った末子と朔人は、性格や考え方も全く異なるタイプ。出会った初日から対立関係となるが、そんな二人はひょんなことから、車椅子の老人集団による若い男へのリンチ現場を目撃する。どうして良いか分からず逃げるだけの二人の前に現れたのは、アコ(18)という謎の少女。
東テキサス州の小さな町で暮らすドンナ・マーティンは、親を必要とする子どもたちの存在を知り、夫のマーティン牧師と共に里親制度の現状に向き合う。深刻な虐待やトラウマを抱え、誰にも引き取られない子どもたちが多くいることを知った二人は、教会の家族たちに養子縁組を呼びかける。やがて22の家庭が立ち上がり、合計77人の子どもたちを迎え入れるという前例のない取り組みへと発展。小さなコミュニティが示した揺るぎない愛と行動が、弱い立場の子どもたちに希望をもたらしていく。
文化大革命の混乱の中で青春時代を過ごしたミン・ワンは、アメリカへ移住し、あらゆる困難を乗り越えて世界的に知られる眼科医となる。そんなある日、継母によって視力を奪われた盲目の孤児が彼の前に現れる。少女を救うため奮闘する彼は、封じ込めてきた祖国での辛い記憶と向き合い、若き日に培った不屈の精神を再び呼び起こしていく。過去の傷と現在の使命が交差する中、彼は少女の“光”を取り戻すための挑戦へと踏み出す。
妻に去られ、カウンセラーの職も失ったデイブ。故郷へ戻った彼は、叔母パティの家で暮らしながら、保守的なキリスト教系大学の非常勤講師として再出発する。ある日デイブは、地元のLGBTQサポートグループが、ホームレスの若者向けシェルター開設のため資金集めを行っていることを学長から聞かされ、その実態を探るためグループへの潜入を命じられる。大学ではキリスト教の教義に基づき、同性愛を否定する教えを説く一方、グループ内ではゲイを装って潜り込むデイブ。しかし、そこで出会った人々、とりわけ亡き兄の遺志を継いで活動するリーダーのアリッサと交流を重ねるうちに、彼の中で長年抱いてきた偏見や価値観が、少しずつ揺らぎ始めていく。
とある小さな田舎町の父子家庭で育った女子高生の優子。彼女は、何か決断をする事が大の苦手。派手な出来事が起こる事も大の苦手。何も起こらない時間、つまり「普通」が彼女にとって一番心地良いのだった。父親は男手ひとつで、一般家庭と同じように優子の事を大事に育ててきた。しかし、父親は「普通」の親とは違う顔があった。それは、ヤクザを生業にしているという事。そして父親の取り巻きの組員たち。娘を溺愛していたり、いい歳して大学受験に挑んだり、親の介護に苦しんでいたりと、どこか憎めないヤクザばかり。彼らも優子に対して常に優しかった。やがてヤクザ稼業は、時代と需要が遠のいてしまった事で、シノギが大幅に減少してしまい、組は存続の危機に陥っていた。クラスメイトや世間に対して、若干後ろめたい気持ちがありつつも、それなりに楽しく毎日を過ごしていた優子だったが、ほんの些細な出来事の連鎖によって、少しずつ彼女の「普通」が崩れはじめる。
台湾パビリオンのコンパニオンに抜擢された少女(ジュディ・オング)は、かつて母と自分を助けてくれた“名も知らぬ台湾の恩人”を探すため、広大な万博会場を駆け巡る。未来への熱気ときらめきに満ちた会場では、華麗な歌とダンスのミュージカル要素が物語を彩り、追跡劇は次第にサスペンスとアクションへ加速。少女は人波をかき分け、次々とパビリオンを巡りながら、記憶の糸をたどって“あの人”の正体に迫っていく。
医師ロメオ(アドリアン・ティティエニ)には、イギリス留学を控える娘エリザ(マリア・ドラグシ)がいる。彼には愛人サンドラ(マリナ・マノヴィッチ)がおり、家庭は決してうまくいっているとは言えない。ある朝、ロメオは車で娘を学校へ送っていくが、校内に入る手前で降し、彼女は徒歩で登校することに。しかし白昼人通りもあるなかで、エリザは暴漢に襲われてしまう。大事には至らなかったが、娘の動揺は大きく、留学を決める翌日の卒業試験に影響を及ぼしそうだ。これまで優秀な成績を収めてきたエリザは、何もなければ合格点を取り、大学で奨学生になれるはずだった。ロメオは娘の留学をかなえるべく、警察署長(ヴラド・イヴァノフ)、副市長、試験官とツテとコネを駆使し、ある条件と交換に試験に合格させてくれるよう奔走する。しかしそれは決して正しいとは言えない行動で、ついに検察官が彼の元へやってくる…。
【《沖縄ことば対応字幕付き》版:うちなーぐち(沖縄の方言)などの一部のセリフに字幕対応しています】 1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。 やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。 消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。
1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。 やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。 消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。
美大生の青年アドナンは夏のあいだ、叔父の洒脱な自宅で留守番をするためにニューヨーク・ブルックリンにやって来る。同時にギャラリーでインターンを始めるが、そこで展示されているのは、去年の夏、彼が出会った奇抜な刺繍アーティストの作品だった。過去と現在が交錯し始めるなか、官能と創造の出会いの連なりが、アドナンの日常の輪郭を曖昧にしていく。
苦しい過去に囚われ、自己破壊へと傾いていく少年ネイト・ウィリアムズ。高校教師スタン・ディーンは、彼が車中生活を送り投獄されていることを知り、保釈金を払い引き取る決断をする。善意から始まった行動は、ネイトの心を蝕んできた暗い秘密と向き合う闘いへと変わり、二人は互いの限界に迫られていく。ネイトが絶望の淵に沈む中、ディーン先生は彼を救うためにどこまで踏み込む覚悟があるのか、自らの信念を試されることになる。やがて二人の絆は、過去の闇を越えようとする希望の光となり、壊れかけた少年の未来を取り戻すための最後の支えとなっていく。
舞台は1985年、アイルランドの小さな町。炭鉱商人として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が、ついに下す決断とは――。
30歳間際の自称・映画監督の太郎。大分県で行われる映画祭に入選を果たし意気揚々と現地に向かうも、作品を厳しく批判されてしまい意気消沈。映画祭のパーティーをすっぽかしてフラフラと隣町の豊後大野へ向かうと、そこで太郎の映画を観ていた未希という不思議な女性と出会い、一泊二日だけの小さな旅をすることに。正体不明ではあるが、明け透けな性格の未希に映画づくりに自信を持てない自分をさらけだし、ほのかな恋心も抱き始める太郎だったが…ふたりがたどり着く、旅の結末は?
ソウルを旅する謎めいたフランス人女性イリス。フランス語の個人レッスンをしている彼女は、生徒たちの家を渡り歩くが、あまりに風変わりな教え方に、人々はみな戸惑うばかり。レッスンが終わると、彼女は年下のボーイフレンドの家へと帰っていく。イリスは何をしに韓国へやってきたのか。なぜフランス語を教えているのか。韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)の詩に触れるなかで、徐々に彼女の謎に満ちた日常が浮かび上がっていく。
演劇祭が間近に迫るソウルの女子大学。校内の恋愛スキャンダルの穴埋めをするため、テキスタイルアーティストであり、講師として働くジョニムは、有名な俳優で舞台の演出も手がける叔父のシオンを臨時の演出家として招聘する。演劇祭に向け寸劇作りがスタートするが、学生たちの恋愛事件の余波や、先輩の大学教授とシオンとの新たな恋の予感など、10日の間にさまざまな出来事が巻き起こる。
ある二人の人物が、二つの家でそれぞれに過ごす一日。ひとりは、友人の家に居候する休業中の女優サンウォン。もうひとりは、小さなアパートで一人暮らしをする詩人のホン・ウィジュ。彼らのもとには将来への不安を抱く若者たちが訪れ、さまざまな質問を投げかける。そんな折、サンウォンの友人の飼い猫がふと姿を消して──。交わりそうで交わらない、二人の一日が静かに並走していく。
詩人のドンファは、恋人ジュニを家まで送り届けた際、玄関先で彼女の父と鉢合わせ、思いがけずジュニの家族と一日を過ごすことになる。初めはぎくしゃくしていたが、ジュニの家族に家や近所を案内され会話を重ねるうちに少しずつ距離を縮めていく。やがて一家が揃う夕食の席で、勧められるまま酒を口にするうち、緊張から酔いが回り、次第に気まずい雰囲気が漂いはじめる。
未来から来たタイムトラベラーのノーマンは、予期せぬ事故により過去の世界へ取り残されてしまう。正体を隠しながら生き延びる術を模索するものの、技術の乏しい時代でのタイムマシン開発は難航し、絶望が徐々に彼の心を蝕んでいく。些細な行動が歴史を変えてしまう恐怖から、人々との接触を避けていたノーマン。だがある日、食料の配達に訪れた新人配達員ジェニファーと出会ってしまう。その瞬間、激しい眩暈に襲われた彼は意識を失い、幻覚を見る。時間移動が未来と過去の双方に深刻な歪みを生じさせていることを悟ったノーマンは、自力での開発を断念。2年半にわたり封印していたAIアシスタント、アニーを起動させるが…。
若くして妊娠した女性を支援する施設で共に暮らす5人の少女。彼女たちは頼る人を持たず、家族との関係、貧困など、さまざまな問題を抱えている。「ひとりじゃ育てられない」「嬉しいと思いたいのに」――戸惑い、悩み、なるべき家族像を見いだせないまま、母になる少女たち。押し寄せる孤独感に飲み込まれそうになっても、時に誰かに寄り添われながら、それぞれが歩むべき道を選び取っていく……。自分たちなりの「愛」を選択していく少女たちの真っすぐな瞳から目が離せない、希望に満ち溢れた傑作がついに日本上陸。
バルセロナの舞台女優クラウディア(80)は末期がんの罹患者。癌は脳に転移し、錯乱や半身麻痺と自我の喪失が近づくなか、彼女は安楽死を選択する。クラウディアは子育てよりも舞台優先で生きてきた。お茶目な女優妻を支え、今なお愛してやまない夫フラビオ。永縁なる夫婦は、共に旅立つことを決め、デュオ安楽死 を決意する。ところがスペインで安楽死はできるがデュオ安楽死はできない。ふたりはデュオ安楽死ができるスイスへ行く決意をする。一方、母の病を機に同居を始める末娘のヴィオレッタ。長男長女は家庭を持ち実家に寄り付かない。ヴィオレッタは母に兄姉を合わせる目的で、両親の結婚記念パーティーを企画。しかしパーティー前夜に両親が決めたデュオ安楽死に気付き、ヴィオレッタはパーティーで思わず打ち明けてしまい、久しぶりの家族再会は修羅場と化す。「最期に聞きたい死のプレイリストのご準備を」 子供たちは父の考えに賛成しない。長女は母の操作と決めつけ喧嘩する始末。しかし父の意志は 固く、両親はデュオ安楽死に必要な手順を進め、最後の旅の出発がにわかに訪れるのだが―。本作は両親の終幕を題材にしているが、不思議と暗さを感じない。むしろ家族のユーモアあふれるセリフ回しに、それを忘れてストーリーに没頭してしまう。本編の一部は、家族の心情を母の職業だったミュージカル調で表現し、本筋と見事に融合。最後まで自分らしく生きた母の終末期。欧州で急激に増えるデュオ安楽死。なぜ増加傾向にあるのか。その一つの答えを本作で垣間見る。
とある州立病院の外科病棟に出勤したフロリアは、プロ意識が強い看護師だ。人手不足が常態化している職場はただでさえ手一杯だが、この日の遅番のシフトは普段以上に過酷だった。チームのひとりが病気で休んだため、フロリアはもうひとりの同僚と手分けして26人の入院患者を看て、インターンの看護学生の指導もしなくてはならない。それでも不安や孤独を抱えた患者たちに誠実に接しようとするフロリアだったが、患者の要望やクレーム、他の病棟からひっきりなしにかかってくる電話、緊急のナースコールへの対処を迫られ、とてもひとりの手には負えない苦境に陥っていく。やがて極限の混乱の中、投薬ミスを犯して打ちひしがれたフロリアは、さらなる重大な試練に直面することに……。本作の企画はスイスの女性監督ペトラ・フォルペが、ドイツ人看護師マデリン・カルベラージュの著作に目を留めたことから始まった。そこに記された看護師の日常業務の激しさに引き込まれ、心を奪われたフォルペ監督は、実際の病院での入念なリサーチを実施。病院が直面している現実をリアルに描くことはもちろん、ひとりの看護師の視点を採用することで、このうえなく濃密なスリルと臨場感がみなぎる映画を完成させた。私たち観客は鑑賞中、同時多発的に複数の作業を強いられ、絶え間なくトラブルに見舞われる主人公フロリアの立場と同化し、看護師という職務の苛烈さを体感することになる。またフォルペ監督は“可哀想な患者”や“迷惑な患者”といった一面的な描写を避け、さまざまなルーツを持つ入院患者それぞれの人間性や複雑な事情をきめ細やかにあぶり出す。たった一日の遅番シフト8時間に焦点を当てた物語でありながら、驚くほど豊かな奥行きを獲得した本作には、生と死の狭間に置かれた人々の切実な感情が息づいている。
アメリカの片田舎で病気の祖父を介護しながら暮らす青年キリアン・マドックス。低収入で友人も恋人もおらず孤独な毎日を送っているが、彼には揺るぎない<夢>があった。一流ボディビルダーになり、その鍛え上げた肉体で雑誌の表紙を飾ることだ。すべてを捧げ過酷なトレーニングと食事制限に打ち込むが、身体は悲鳴をあげ、社会の不条理と孤立が彼の精神を蝕んでいく。そしてある事件を機に、純粋な夢は狂気へと変貌する…。
独り暮らしのカウボーイ、ローガンはクロスロード・マーケットでヒッチハイクをしていた女性を車に乗せ、高熱で咳込んでいた彼女を気遣い、自宅に招いた。落ち着いた環境の下で徐々に回復していく彼女は、やがて自分のことを語り出す。もともとはシンガー・ソング・ライターだったが、ルームメイトの死を殺人と疑ったことを機に旅に出たという彼女は、スマホも持たないシンプル生活ながら、夜になるとうなされるローガンに興味を抱く。やがて彼がアフガニスタンに二度出征し、PTSDを患った帰還兵であることを知る。彼女もまた自分の名前がジェーン、通称スターであることをローガンに告げた。ローガンも亡き母の思い出を語り出す。その後も2人は対話を重ね…。
小説家とセックスワークの狭間で漂流する25歳マックス、青春の体温。ロンドンに住み、将来を嘱望されている若い作家志望のマックス。彼はデビュー作となる長編小説をリアルなものとするために、“セバスチャン” という名前で男性相手のセックスワークの世界に足を踏み入れる。職業を通して体験する未知の世界。様々なクライアントと接していく内に、マックスとセバスチャンの境界線を次第に見失っていく…。
ある日、空が裂け、世界は崩壊した―。裂け目からは異世界の“侵入者(ブレイカー)”が人類に襲いかかり、文明は滅び、わずかな生存者は荒廃した地で恐怖の日々を過ごしていた。かつて男達はブレイカーとの戦いに敗れ、人類の運命は女性に託されていた…その女性戦士の隊長役として本作で剣を握るのは、『バイオハザード』シリーズでアクション女優のトップスターとなったミラ・ジョヴォヴィッチ。本作では、異世界からの脅威に立ち向かう強き母を演じ、圧倒的存在感と卓越した剣さばきで“戦う女戦士”の完全復活を魅せつける!さらに、生き残りをかけた夫役のルーク・エヴァンスと娘との感動の家族愛を描いたヒューマンドラマも融合、壮大なSFサバイバル・アクションがここに誕生した!
役者のジェイクは、映画の撮影のためオハイオ州・シンシナティを訪れる。子役時代から活躍してきた彼はちょっとした有名人だが、私生活は薬物依存ですっかり破綻していた。撮影現場でも酒とドラッグに溺れ、監督が監視役をつけるほど。それでも夜になると目を盗み、地元の若者たちのドラッグパーティーに参加するなど、行動は一向に改まらない。薬物に依存してしまうのは、本当の自分を誰にも理解されない寂しさからだとジェイクは語るが、その言葉は周囲には届かない。そんなある日、モーテルで出会ったプランドンとともにハイになった彼は、停泊中のボートを盗むという騒動を起こし、逮捕される。度重なる問題行動に、監督やスタッフたちはついに呆れ果ててしまう。
2020年4月。売れない俳優の北島タツロウ(34)は、コロナ禍で唯一決まっていた出演作が白紙になる。暇を持て余した彼は、中古で2万4千円の珍本を購入する。伝説の地下演出家アン・W・トッテヤゴ著の演技指南書で、「役者を狂わせる禁書」と噂される一冊である。北島は半信半疑でその風変わりなメソッドを実践していくが・・・萱野孝幸監督長編映画『津田寛治に撮休はない』のスピンオフ作品ともとれる萱野ワールド新作映画!
スキャンダルで女優の仕事を失い、10年ぶりに故郷の熊本に帰ってきた梨枝(蓮佛美沙子)。彼女は、ドラマ部志望の若手ディレクター・咲(伊藤万理華)と共に“女優が生まれ故郷の熊本で素顔を見せる”密着ドキュメンタリー撮影に渋々挑むことに。女優復帰と希望部署への異動をかけて、それぞれ再起を図ろうとする2人だが、全くソリの合わない2人はたびたび衝突し、撮影は前途多難。 そして、なるべくこっそりと撮影をしたい梨枝の気持ちとは裏腹に、次々と現れる知人たち。やがて小さな町で噂が広まり、撮影のことを内緒で帰郷した梨枝の存在が家族の耳に入ってしまう。かつて、父・康夫(升毅)と大喧嘩の末、町を飛び出した梨枝。その父は今、がんに冒されていた。父の病状を知りながら、父を避けていた梨枝に怒り心頭の家族。果たして、ドキュメンタリー撮影の行方は?そして、梨枝と康夫の確執は……。
亡き母を偲ぶため、クリスと息子のジョンは山へ向かっていた。しかしジョンは、父とは別に一人で頂上を目指すことを決める。川に花束を手向けた後、山道を歩いていたクリスは、危うく車とぶつかりそうになる。運転していた中年女性のジュリーが動揺している様子を見て、クリスは彼女を安心させようとお茶に誘い、次第に親しくなっていく。定年退職後、鬱々とした日々を送っていたジュリーは、クリスとジョンの言葉に背中を押され、山歩きを始めるようになる。一方、食堂で働くウェイトレスのケイトはあと1週間で街を離れることに。忙しさから山歩きができなかったことを悔やみ、仕事を休んで急きょ山に登り始める。そんな彼女に親友のアシュリーが付き添う。5人はそれぞれの思いを抱いて山登りを始めるが…。
売れない役者でゲイのレオナルドは、仕事も恋も思うようにいかず、人生の波動を整えようと悪戦苦闘中。誕生日を明日に控えた彼は、しばらく音信不通だった元カレのクリストから突然のメッセージが届き、期待と不安が入り混じる中、何とか自分を変えようと奮闘する。クリストから復縁を求められたらきっぱり断るつもりでいたが、実際にできるか怖くなり心を落ち着かせるため10分間の瞑想をしようとしていた。しかし、姉オルラがクリスマスツリーを持ってやってきて、なかなかそれも果たせない。そこでヨガ・トレーナーのサヴァンナの家に赴き、ようやく目的達成。さらには重要な役のオファーも舞い込んできた。その勢いに乗せ、いよいよクリストに会おうとするが…。
パリ郊外の小さなアパートに暮らすシングルマザーのモナは、発達に遅れのある30歳過ぎの息子ジョエルを女手ひとつで育ててきた。モナはショッピングモールのビューティ・サロンで、ジョエルは障がい者のための職業作業所で働いている。互いを支え合い、いたわりながら暮らしてきた二人。ところがある日、モナは、ジョエルと同じ施設で働くオセアンが彼の子を妊娠したと聞かされる。二人の関係を何も知らなかったモナは動揺し、母子の絆も揺らぎはじめる――
1999年。あなたの本当の想いに触れて、僕は僕を知った。ざらついた記憶に宿る故郷の景色と、母の無償の愛――若くして恋人を亡くし未婚の母となったソヨンは、赤ん坊の息子ドンヒョンを連れてカナダのバンクーバー郊外へと移住する。ソヨンは工場で働きながら、言葉や文化の壁、人種差別に直面する日々の中、懸命に息子を育てていく。やがて16歳となったドンヒョンは英語名“デービッド”を名乗り、すっかりカナダでの生活になじんでいた。しかし、彼の心の奥底では自身のルーツ、特に一度も会ったことのない父親の存在への思いが次第に募っていく。そんなある日、二人に届いた衝撃的な知らせをきっかけに母と息子は初めて韓国へ帰郷し、悲しみの過去と対峙することになる――。
夏の終わり、父のルイジと母のマリアと三人で休暇を過ごしたダフネ。しかし、楽しいバカンスが一転、帰り支度の最中に突然マリアが倒れてしまう。すぐに病院に運ばれるが治療の甲斐なく、帰らぬ人に……。あまりに唐突すぎる母の死に、ダフネは泣き叫び、感情を露にする。ルイジはそんな彼女を心配し、必死に落ち着かせようとするが、ダフネは辛く当たってしまう。マリアの葬儀が終わり、普段の生活へと戻る二人。ダフネは、元来の明るさと、勤務先のスーパーマーケットの同僚や友人の支えによって、少しずつ日常を取り戻していく。一方、気丈にふるまっているようにみえたルイジは、喪失感と不安で押し潰されそうになっていた。一家の精神的支柱であったマリアがいなくなってしまった今、ダフネと二人だけで、どう生活していけばいいのか。そんな父の異変に気付いたダフネはある提案をする。それは、母の故郷コルニオーロへ歩いて向かう、ことだった……。
2008年の夏。7人は高校の同級生。未来に向かって夢を抱きながら卒業を迎える。歌手になる夢を抱き上京するカナ。家族とそりが合わないキリも地元を離れて東京へ。一人粋がっている硬派なリョウは、「いつかでかいことをやってやる!」と夢を抱きながら、地元の建設現場で働く日々。音楽を通しカナと心を通わしてきたタツオは大学受験に失敗し、地元に残り浪人。まさかのできちゃった結婚をしたコウタとマリコも地元組。そして現役で大学に合格したユウキは上京組。それぞれが別々の道へと進んでいく。しかし数年後、夢と現実の狭間で葛藤する7人。悩み、葛藤し、時に挫折してしまいそうになりながら、それでも彼らは大人への階段を上っていく。そして、少しだけ成長した7人が帰ってきたのは、あの懐かしい“帰り道”だった――。
真面目な性格で、献身的に患者のサポートに取り組む理学療法士の高野雅哉。 幼い頃に母親を亡くし、現在は父親の稔、妹の遥と離れて暮らしている。そんなある日、雅哉が働く病院にしばらく会っていなかった父・稔が入院してくる。日に日に弱っていく稔の姿、担当患者の病状が悪化するなど理学療法士として何が出来るのか自問自答の毎日で無力感に苛まれる。しかし、そんな時ラグビーの試合中にケガをした新たな入院患者を担当することになった雅哉。その入院患者の懸命に生きようとする姿に感化され、徐々に仕事への熱意を取り戻していく雅哉だった。病院という身近な人の死を経験する場所で理学療法士として、雅哉の選択していく生き方とは・・・。
郊外で小さな金属加工工場を営みながら平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、夫の旧い知人である前科者の男が現われる。奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせにより、男の消息がつかめそうになる。しかし、そのことによって夫婦は再び己の心の闇と対峙し、互いの奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。
郊外から都心へ向かう電車に一人揺られている、ひかり(蓮佛美沙子)。秋葉原で起きた事件で恋人の健治を失った日を境にして、現実世界は遠のき、ひかりは健治と過ごした時間だけを糧にして生きていた。家に引きこもり、一人で食事をし、庭にパンジーを植え育てる日々。優しく見守ってくれる母や友人とのたわいのないお喋りをするなかで少しずつ落ち着きを取り戻し、歩き出そうとしていた。緊張した面もちで秋葉原の駅に降り立つひかり。健治が好きだった街を、その面影を探し求めて歩き始める。ひかりは、健治を知っている人間を探して街を歩き続け、人々と出会う。そこで、佑二と出会う。そしてひかりの話に耳を傾けていた佑二が突然「これが現実なんだ」と言って指差したテレビには被災地の無惨な光景が映し出されている。目の前のものすべてが現実であり、本物であり、それを受け入れること、そして、「まだ、間に合うよ」と。二人は再会を約し、佑二は故郷へと向かい、ひかりは健治と一緒に乗る約束をした船に乗る。
群馬県高崎市でラーメン店を営む真人は、突然亡くなってしまった父の遺品から1冊の古いノートを見つける。そのノートには真人が10歳の時に亡くなったシンガポール人の母が書いた料理のレシピや写真などとともに、さまざまな思い出が込められていた。真人は忘れかけていた過去を埋めるためシンガポールへと旅立つ。